放射性物質
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■ 放射性物質
高いエネルギーをもって流れる物質粒子と高エネルギーの電磁波すなわち極めて波長の短い電磁波の総称。普通は、直接又は間接にその物質の原子を電離(イオン化)する能力を持つ放射線(電離放射線)を指す。主なものは、α線、β線、γ線、中性子線。
宇宙線及びウラン、ラジウム、トリチウム、カリウムのような自然界にある放射性元素から出る放射線をいう。その量は地質により放射性元素の量や種類が異なるため、地域によっても差がある。日本人が一年間に受ける放射線量の平均は1.5 mSv/年である。
放射線を出す能力(放射能)を持つ物質のこと。カリウム40、セシウム134と137、ストロンチウム89と90、プルトニウム239と240等。
安定でない核種が放射線を放出したり、自発的に核分裂して、別の核種(原子の種類)に変わること。原子がα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ) 線を放出すれば別の核種に変わる。放出する放射線によってα崩壊(壊変)、β崩壊(壊変)、γ崩壊(壊変)等という。
ヘリウムの原子核と同じ中性子2個と陽子2個からなるα粒子の流れ。物質を通り抜ける力(透過力)は弱く、薄い紙一枚程度で遮ることができる。粒子線。エネルギーは強い、透過力は低い。
β崩壊の際に放出されるβ粒子ともいわれる電子の流れ。連続的なエネルギー分布を有している。物質への透過力はα線より大きいが、薄いアルミニウム板で遮へいすることができる。粒子線。エネルギーは中程度(α線より弱くγ線より強い)、透過力はやや低い(α線より高く、γ線より弱い)。
核分裂、放射性崩壊の過程で不安定な原子核が放出する非常に波長の短い電磁波又は、電子と陽電子の衝突・消滅によって発生する電磁波をいう。γ線は物質を透過する力がα線やβ線に比べて強い。X線はγ線と同様の電磁波だが、より波長が短い(エネルギーが高い)ものがγ線。電磁放射線。エネルギーは弱い、透過力はやや高い(β線より高く、中性子線より低い)。
中性子の流れ。電荷を持たず、透過力がα線やβ線、γ線に比べて強い。水やパラフィン、厚いコンクリートで止めることができる。吸収された線量が同じであれば、γ線よりも中性子線の方が人体に与える影響は大きい。粒子線。エネルギーは強い、透過力は高い。
元素記号I、原子番号53。ヨウ素131は、核分裂によって生成し、環境汚染及びヒトに対する影響という観点から、最も重要な放射性物質の一つと考えられている。β線、γ線を放出。物理学的半減期は短く、口から摂取されたヨウ素は容易に消化管から吸収され、血中に入った後、10〜30 %は甲状腺に蓄積し、残りは体内から排泄される。
元素記号Cs、原子番号55。放射性物質としてのセシウムは主に11種類あることが知られている。セシウム134、セシウム137は人工放射性物質で、核分裂によって生成し、物理学的半減期はそれぞれ2年と30年である。β線、γ線を放出。特定の臓器に蓄積する性質(親和性)はない。
元素記号Sr、原子番号38。26種類の放射性同位体があるが、特に重要なのはストロンチウム89と90。物理学的半減期はそれぞれ51日と29年。β線を放出。カルシウムと同様に人体組織の骨に沈着する性質がある。
元素記号K、原子番号19。放射性同位体はカリウム40。カリウムは全ての動植物に必須な元素で、カリウム39、40、41の3つの同位体がある。ほとんどは放射線を放出しないカリウム39、41であるが、僅かに(0.01%程度)含まれるカリウム40は、β線、γ線を放出。食品中のカリウム40からの一人当たりの年間線量(日本人平均)は0.18ミリシーベルト。
元素記号Po、原子番号84。天然に存在するポロニウムの放射性同位体はポロニウム210。α線、γ線を放出。食品群ごとの放射能濃度は、他の食品群と比較して魚介類が高い値となっている。
食品中の鉛210とポロニウム210からの一人当たりの年間線量(日本人平均)は0.8ミリシーベルト。
元素記号U、原子番号92。ウランはアクチノイド元素の一つ。自然界にはウラン238、ウラン235、ウラン234が存在する。α線、β線、γ線を放出。物理学的半減期は約25万年〜約45億年と非常に長い。口から摂取されたウランは、ほとんどが数日以内に排泄される。吸収されたウランのうち少量(0.2〜5 %)が血中に入り、主に骨(血中に入った量の約22 %)、腎臓(同約12 %)に蓄積し、残りは体全体に分布(同約12 %)して、その後排泄される。腎臓に達したウランのほとんどは数日以内に尿中に排泄されるが、骨に沈着した場合は長期間にわたって残る。放射性物質としての影響より、化学物質としての腎毒性が高い。
超ウラン元素の一つ。原子炉の中で、ウランから生成される。プルトニウムには数種類の放射性物質があり、物理学的半減期は5時間〜8300万年と種類によって大きく異なる。α線、γ線を放出。皮膚、消化管からはほとんど吸収されないが、一部吸収され血中に入ったプルトニウムは、主に肝臓と骨に蓄積し、長期間残留する。放射性物質としての影響より、化学物質としての腎毒性が高い。
消化管等から吸収され、体内にとり込まれた放射性物質が、代謝や排泄等の生物学的な過程により体外に排出され、半減するのに要する時間。放射性物質が生物体に摂取された場合、放射性物質の崩壊による減少だけでなく、生理的に体外に排出されることでも減少する。
電離放射線が物質中を通過する際、飛程の単位長さ当たりに平均して失うエネルギーをいう。各種の放射線のうち、X 線、γ線及びβ線はLET が小さいので低LETといい、α線、中性子線、その他重荷電粒子及び核分裂破片はLET が大きいので高LETという。
質量1 kg の物質に放射線によって与えられる平均エネルギーの量。単位はグレイ(Gy)。
1 Gy=1 J/kg。
(J(ジュール)はエネルギーの単位:約0.2389 cal(カロリー)に相当)
放射線の種類やエネルギーを問わず、人体組織への影響を表す量。吸収線量に放射線加重係数を乗じた値。単位は、シーベルト(Sv)。
HT(臓器Tの等価線量[Sv])=DT(臓器Tの平均吸収線量[Gy])×WR(放射線Rの放射線荷重係数)
放射線の種類によって異なる確率的影響を同じ尺度で評価するために決められた係数。放射線が人体に与える影響は同じ吸収線量でも放射線の種類によって異なる。
実効線量を計算するときに各組織・臓器の等価線量に掛ける係数。同じ等価線量でも、身体の組織や臓器により影響(感受性)は異なる。
放射線被ばくによる全身の健康影響を評価するための量。実効線量は、人体の全ての特定された組織における等価線量に組織加重係数を乗じたものを、各組織で加算して算出される。単位はシーベルト(Sv)。
E(実効線量[Sv])=ΣHT(臓器Tの等価線量[Sv])×WT(臓器Tの組織加重係数)
摂取した放射性物質の量と被ばく線量の関係を表す係数。核種ごと、摂取経路(経口、吸入等)ごとに、年齢区分(成人、幼児、乳児)ごとに1 Bqを経口あるいは吸入により摂取した人の預託実効線量として表される。年齢区分によって異なるのは、成人は50年間、子どもでは70歳までに受ける線量を織り込んでいるほか、生物学的半減期や感受性が異なるためである。
放射能(Bq)×実効線量係数(mSv/Bq)=実効線量(mSv)
放射能の強さを表す単位。1ベクレルは1秒間に1個の原子核が崩壊して放射線を出す放射能の強さのこと。なお、従来単位であるCi(キュリー)については、2.7× 10-11Ci が1Bq となる。
等価線量、実効線量等のSI(国際単位系)単位の名称。単位は1 kg当たりのJ(J/kg)。
なお、従来単位であるrem(レム)については、100 rem(レム)が1 Svとなる。
等価線量(Sv)=吸収線量(Gy)×放射線加重係数
例えば、β線の場合の放射線加重係数は1なのでSv=Gy となる。
人体等が受けた放射線の量を表す名称。放射線の身体への影響は、その人が浴びた放射線の積算量(線量、単位はSv)で決まる。
「○○μSv/時」のように時間当たりの量で表される量は線量率といい、その瞬間の放射線の強さを表している。
例.(空間) 線量率が1 μSv/時の場所に1年間いた場合の線量(被ばく線量)は8.76 mSvとなる。
1 μSv/時×24時間×365日=8760 μSv=8.76 mSv
放射性物質の体内摂取後50年間に受ける累積の線量(幼児、小児は70歳まで)の積算。内部被ばくの線量評価に用いられる。
放射線防護上の放射線影響を分類する概念の一つで、ある線量値(しきい値、しきい線量)を超えて初めて症状が起こり、線量が高いほど症状が重くなるような影響。臓器・組織を構成する細胞の傷害に基づく影響。
放射線防護の目的で分類された放射線の人体影響の分類概念の一つ。発がん(白血病を含む。)と遺伝的障害のように、放射線防護上はしきい値がなく、発症の確率が線量に依存するとされる影響。
放射線の被ばく線量とその影響について、低線量域であっても、放射線量の増加に比例してがんの発生率が上昇すると仮定する仮説。また、1個の細胞からでも影響(がん)が生じるとの仮説に基づく。
吸入、経口あるいは経皮によって放射性物質が体内に取り込まれ、放射性物質が分布した組織(甲状腺、肺、骨髄、胃腸等)や器官から、それ自身あるいは周囲の組織や器官が被ばくすること。
内分泌腺の一つ。身体の発育及び新陳代謝に関係ある甲状腺ホルモンを分泌する。甲状腺や甲状腺ホルモンの生成にはヨウ素が必要なため、放射性ヨウ素が体内に取り込まれたとき、他の臓器に比べ選択的に甲状腺に集まる。
個人がそれを超えて被ばくしてはならない放射線の量。「有害な確定的影響を防止し、また確率的影響を容認できると思われるレベルにまで制限する」ことを放射線防護の目的としている。
介入の形態、規模及び継続期間は、線量低減化の正味便益、すなわち介入に伴う損害を差し引いた放射線損害の低減による便益が最大となるように最適化すべきであるという原則。