リスク分析(リスクアナリシス)の考え方
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■ リスクアナリシス(リスク分析)の考え方
食品安全分野においては、ヒトの健康に有害影響を及ぼすおそれがある食品中の物質又は食品の状態のこと。食中毒の原因となる微生物やプリオン等の生物的要因、自然毒や残留農薬等の化学的要因、放射線や異物等の物理的要因がある。
食品中にハザードが存在する結果として生じるヒトの健康への悪影響が起きる可能性と影響の程度(健康への悪影響が発生する確率と影響の程度)。 (疫学におけるリスクについてはこちら)
食品中に含まれるハザードを摂取することによってヒトの健康に悪影響を及ぼす可能性がある場合に、その発生を防止し、又はそのリスクを低減するための考え方。
食品にゼロリスクはない。食品が安全かどうかは摂取する量(ばく露量)による。リスクを科学的に評価し、低減を図るというリスクアナリシス(リスク分析)の考え方に基づく食品安全行政が国際的に進められている。
リスク管理、リスク評価及びリスクコミュニケーションの3つの要素からなっており、これらが相互に作用し合うことによって、より良い成果が得られる。
(※ 参照用語)ステークホルダー
食品安全分野におけるリスク評価とは、食品に含まれるハザードの摂取(ばく露)によるヒトの健康に対するリスクを、ハザードの特性等を考慮しつつ、付随する不確実性を踏まえて、科学的に評価することを指す。
我が国の食品安全基本法では「食品健康影響評価」として規定されており、食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、施策ごとに、食品健康影響評価を行わなければならないとされている。
政府が適用する食品安全に関するリスクアナリシスの作業原則(※)によれば、リスク評価は、
1)ハザードの特定(Hazard identification)、
2)ハザードの特性評価(Hazard characterization)、
3)ばく露評価(Exposure assessment)、
4)リスクの判定(Risk characterization)
の4つの段階を含むべきであるとされている。食品の摂取等の状況は国によって異なるため、自国の現状を考慮し、現実的なばく露状況に基づきリスク評価を行う。
※ 政府が適用する食品安全に関するリスクアナリシスの作業原則(Working Principles for Risk Analysis for Food Safety for Application by Governments)
・CXG 62-2007(農林水産省ウェブサイト)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/standard_list/pdf/cac_gl62.pdf[PDF:189KB]
(参照用語) リスクアナリシス
リスク評価の基本ステップ |
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印刷用[PDF形式:577KB] |
(参考)リスク評価の実例 |
特定の食品又は食品群中に存在する可能性があり、ヒトの健康に有害影響を及ぼすおそれがある生物的、化学的及び物理的な要因・物質を特定し、それらについての既知の科学的情報を整理すること。
摂取(ばく露)されたハザードに起因して生じる健康への有害影響の性質と程度を、定性的及び/又は定量的に評価すること。食品添加物や残留農薬等の化学的な要因については、用量反応評価を実施し、これに基づき、健康影響に基づく指標値(HBGV)を設定する。生物的又は物理的な要因については、データが入手できる場合には、用量反応評価を実施する。
ヒトが食品を通じてハザードをどの程度摂取し(ばく露され)ているのか、定性的及び/又は定量的なデータから推定すること。食品中のハザードの含有量や食品の摂取量等から現実に近い摂取量を算出する。必要に応じ、食品以外に起因するばく露についても考慮する。
ハザードの特定、ハザードの特性評価及びばく露評価に基づき、ある集団における既知の又は今後起こり得る健康への有害影響が生じる可能性と影響の程度について、付随する不確実性を含めて判定すること。
(参照)リスク
食品安全委員会が、食品の安全性に関する情報の収集・分析や、国民からの意見等をもとに、ハザードを自ら選定して行うリスク評価のこと。
食品安全に関するリスクアナリシスの構成要素の一つである。全ての関係者と協議しながら、技術的な実行可能性、費用対効果、リスク評価結果等の様々な事項を考慮した上で、リスクを低減するために適切な政策・措置(規格や基準の設定、低減対策の策定・普及啓発等)について、科学的な妥当性をもって検討・実施することをいう。
政府が適用する食品安全に関するリスクアナリシスの作業原則(※)によれば、リスク管理は、
1) リスク管理の初期作業(preliminary risk management activities)
2) リスク管理の選択肢の評価(evaluation of risk management options)
3) 決定された政策や措置の実施 (implementation)
4) モニタリングと見直し(monitoring and review of the decision taken)
を含む系統立った手法に即して行うべきであるとされている。
また、この「リスク管理の初期作業」の一環として、リスク評価が系統的で、欠けたところがなく、公正であって透明性を保ったものとするため、リスク管理者は、リスク評価に先立って、リスク評価者やその他の全ての関係者と協議した上で、リスク評価方針(Risk assessment policy)を制定するべきとされている。
※ 政府が適用する食品安全に関するリスクアナリシスの作業原則(Working Principles for Risk Analysis for Food Safety for Application by Governments)
・CXG 62-2007(農林水産省ウェブサイト)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/standard_list/pdf/cac_gl62.pdf[PDF:189KB]
(参照用語)リスクアナリシス
リスクアナリシスの全過程において、リスクやリスクに関連する要因などについて、一般市民(消費者、消費者団体)、行政(リスク管理機関、リスク評価機関)、メディア、事業者(一次生産者、製造業者、流通業者、業界団体など)、専門家(研究者、研究・教育機関、医療機関など)といった関係者(ステークホルダー)がそれぞれの立場から相互に情報や意見を交換すること。
リスクコミュニケーションを行うことで、検討すべきリスクの特性やその影響に関する知識を深め、その過程で関係者間の相互理解を深め、信頼を構築し、リスク管理やリスク評価を有効に機能させることができる。
リスクコミュニケーションの目的は、「対話・共考・協働」(engagement)の活動であり、説得ではない。これは、国民が、ものごとの決定に関係者として関わるべきという考えによるものである。