「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問等Q&A(リスク評価全般)
「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問等Q&A
【化学物質系(添加物、残留農薬、汚染物質等)】 |
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I 委員会関係 / II リスク評価全般 / III 化学物質系(添加物、残留農薬、汚染物質等) / IV 生物系物質 /
V 新開発食品(遺伝子組換え食品、健康食品) / Q&A掲載内容のキーワード一覧
掲載内容のキーワード一覧
III 化学物質系(添加物、残留農薬、汚染物質等)
III-1 保存料や着色料などの食品添加物の安全性
III-2 食品添加物の複合影響
III-3 食用タール系色素
III-4 人工甘味料
III-5 pH調整剤
III-6 亜硝酸ナトリウム
III-7 アルミニウム
III-8 農薬
III-9 メチル水銀
III-10 硝酸塩
III-11 ヒ素
III-12 トランス脂肪酸
III-13 アクリルアミド
III-14 大豆イソフラボン
III-15 カフェイン
III-16 ビタミンA
III-17 ビスフェノールA
III-18 「塩」(塩化ナトリウム(NaCl))
III-19 加工肉、赤肉(red meat)
III-20 食品中の放射性物質の安全性評価
III-21 食品中の放射性物質の基準値
III-22 食品中の放射性物質の検査の結果
III-23 芽止めのために放射線を照射されたばれいしょ(ジャガイモ)
Q&A
Q III-1 保存料や着色料などの食品添加物が多くの食品に使用されていますが、本当に安全なのでしょうか。
A III-1 食品添加物は、食品の製造過程において、着色、保存等の目的で食品に加えられるものであり、原則、「人の健康を損なうおそれのない場合」として厚生労働大臣が指定するもの以外は使用が認められていません。
食品添加物を新たに指定する場合は、食品安全委員会が許容一日摂取量(ADI) を設定するなどのリスク評価を行い、その結果に基づいて厚生労働大臣が食品添加物を指定し、食品添加物の成分規格、製造基準、保存基準及び表示基準を設定しています。
また、現在使われている食品添加物には、このような食品安全委員会の審議を経て指定されたもののほかに、長年の食経験などから判断して認められているもの(既存添加物)もありますが、これらについては、厚生労働省において規格基準の設定や安全性試験が継続して行われています。
なお、食品添加物に対しては否定的な印象があるかもしれませんが、例えば、食品添加物の中には食品中の微生物の繁殖を抑え、食中毒のリスクを減らすことに役立っているものもあり、食品添加物を使っていない方が安全ともいえません。
Q III-2 食品添加物の一つ一つの安全性が確保されているとしても、様々な添加物を摂取することによる複合影響があるのではないでしょうか。
A III-2 食品添加物を複数摂取した場合の有害な影響については、現段階では国際的にも、評価手法として確立したものはなく、検討段階にあります。現時点では、個々の添加物の評価を十分に行うことで、添加物の複合摂取による影響についても実質的な安全性を十分確保することが可能と考えられます。ただし、評価対象の添加物を含む添加物の複数摂取による健康影響に関する知見がある場合には、そうした知見も含めて、その時点の最新の科学的知見に基づいて評価を行います。
(参考)
・食品安全委員会 食品添加物の複合影響に関する情報収集調査
Q III-3 食用タール系色素の着色料「赤色2号」がお菓子の原材料として書いてありました。ネットでは、タール色素には発がん性があると書かれていて心配になったのですが、食べても大丈夫でしょうか。
A III-3 食用赤色2号はタール系色素の一種です。指定添加物として、食品衛生法で使用基準が定められており、菓子、漬物、魚介加工品、畜産加工品などを使用対象食品としています。
指定添加物は食品安全委員会の食品健康影響評価に基づき厚生労働大臣が指定したもので、使用できる食品や使用量の最大限度などの使用基準が決められています。また、食用タール色素については、登録検査機関による製品検査が義務付けられています。
米国では、1976年に食用赤色2号の発がん性について安全性を確認できないとして使用禁止とされましたが、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)で1978年、1984年に再評価を行いました。この結果、発がん性は認められず、許容一日摂取量(ADI)は0.5 mg/kg体重/日に設定されました。現在米国など一部の国を除き、コーデックス委員会※1・日本・カナダ・EUなどで使用が認められています。
日本では、厚生労働省が毎年マーケットバスケット方式※2による添加物の一日摂取量調査を実施しています。食用赤色2号については平成28年度と令和2年度に20歳以上を対象とした摂取量調査を、平成26年度と平成30年度に1〜6歳までの乳幼児の摂取量調査を行っており、いずれの結果でも許容一日摂取量(ADI)に対し、摂取量は非常に少ないことがわかりました。
食品添加物は通常の食事から摂る量では健康影響の出ない量でリスク管理されており、実際に摂取している量は極めてわずかなので、安全上特段の問題はないと考えられます。
Q III-4 人工甘味料の添加物が使われていますが、安全性は大丈夫なのでしょうか。
A III-4 食品添加物は、食品の製造過程において、味をつけたり、着色、保存等の目的で食品に加えられたりするものであり、原則として「人の健康を損なうおそれのない場合」として厚生労働大臣が指定するもの以外は使用が認められていません。
食品添加物を新たに指定する場合には、食品安全委員会が許容一日摂取量(ADI) を設定するなどのリスク評価を行い、その結果に基づいて厚生労働省が食品添加物を指定し、食品添加物の成分規格、製造基準、保存基準及び表示基準を設定しています。これを踏まえ厚生労働大臣が食品添加物として使用できる食品や使用量の最大限度の使用基準を定めています。
食品添加物は通常の食事から摂る量では健康影響の出ないように管理されています。厚生労働省の甘味料の一日摂取量の調査※によると、許容一日摂取量(ADI)が設定されている甘味料の推定摂取量はどの年齢層においてもADIを大きく下回っており、安全上特段の問題はないと考えられます。
※厚生労働省:令和元年度 マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について[PDF:208KB]
Q III-5 pH調整剤とは何ですか。保存性を高めるためにも用いられるのですか。
A III-5 pH調整剤は、食品を適切なpH領域に保つことにより、その品質や色を安定させるために使用される食品添加物です。微生物の増殖は、pH(酸性、アルカリ性をあらわす尺度)により影響を受けることから、微生物が増殖できない範囲に食品のpHを調整することにより、結果的に食品の保存性を高めることがあります。
ただし、一般的にpHが低いものは酸性で酸味が強くなる、pHが高いものはアルカリ性で苦くなるなど、味に影響することがあることなどから、pH調整剤の使用量には、限度があります。また、pH調整剤等の食品添加物は、食品衛生法に基づき、人の健康を損なうおそれがないものとして厚生労働大臣が定めたもの以外は、原則として使用することができません。
さらに、使える食品や使用量の限度についての基準(使用基準)等を必要に応じて定め、食品添加物による健康影響がないように管理されています。pH調整剤の多くは使用基準を定めていませんが、一部設定のある品目もあります。
Q III-6 ハムやソーセージ等に発色剤として使用されている食品添加物の亜硝酸ナトリウムは、発がん物質と聞きました。ハムやソーセージを食べて大丈夫でしょうか。
A III-6 食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品を加工する際、保存性を高める、色・味・香りをよくする、とろみをつける等の目的で使用されるものです。亜硝酸ナトリウムは、安定した食肉の色を保持する効果があるだけでなく、ボツリヌス菌の繁殖を抑えることにより、食中毒の発生を防止する効果のある食品添加物として知られています。
亜硝酸ナトリウムに関してはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)において評価が行われており、発がん性については1995年及び2002年の評価において、人の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠はないとされております。
また、使用が認められた食品添加物についても、国民一人当たりの摂取量を調査するなど、安全の確保に努めています。
Q III-7 アルミニウムはベーキングパウダーなど食品添加物に使用されているほか、鍋やお玉など調理器具にも使われています。健康に悪いという話を聞いたが大丈夫なのでしょうか。
A III-7 アルミニウムは、土壌、水及び空気中に存在し、包装材料などに幅広く使用されています。国内での規制では、水道法に基づく水道水質基準として、アルミニウム及びその化合物の量を0.2 mg/L(アルミニウムとして)以下としています。また、膨らし粉(ベーキングパウダー)やミョウバンなどに含まれており、食品添加物として食品衛生法に基づく規格基準が設定されています。
食品安全委員会は、平成29年3月28日に厚生労働省から食品添加物「硫酸アルミニウムアンモニウム」及び「硫酸アルミニウムカリウム」について評価依頼を受け、同年12月19日耐容週間摂取量を 2.1 mg/kg 体重/週(アルミニウムとして)と設定するとの評価結果を通知しました。
これを受けて、厚生労働省は平成30年11月30日に食品、添加物等の規格基準の一部を改正し(平成 30年厚生労働省告示第407号)、当該物質の使用基準を「(当該物質の)使用量はアルミニウムとして、菓子、生菓子又はパンにあってはその1 kgにつき、0.1 g以下でなければならない。」と設定しました。
国際的には、2011年にFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)において安全性評価が行われ、耐容週間摂取量(暫定)※は2 mg/kg体重/週とされました。
また、厚生労働省が行っているアルミニウムの摂取量の調査でも、耐容週間摂取量を下回っていることが明らかになっており、通常の食事においては、摂りすぎを心配する必要はありません。
しかしながら、ベーキングパウダーを使った食品など、アルミニウムを多く含む食品を 多く食べる一部の小児で許容量を超える可能性があり、また、国際的にもアルミニウムを含む食品添加物の基準の設定や見直しが進められていることもあり、関係業界においては、従来からアルミニウムを含む食品添加物の使用の低減化に向けた取組みを行っています。
なお、アルミニウムがアルツハイマー病の原因ではないかという説もありましたが、現在のところ、アルミニウムの摂取とアルツハイマー病の関連性についての明確な科学的な根拠はないとされています。
※ 耐容週間摂取量:人が一生涯食べ続けても健康への悪影響がないと推定される一週間当たりの摂取量
(参考)
・食品安全委員会 食品健康影響評価 硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム[PDF:1,868KB]
・厚生労働省 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について(β—ガラクトシダーゼ等の規格基準の一部改正)
・食品安全委員会 アルミニウムに関する情報[PDF:81KB]
・食品安全委員会 ハザード概要シート[PDF:713KB]
・国立健康・栄養研究所 アルミニウム
・厚生労働省 食品中のアルミニウムに関する情報
Q III-8 農作物を作るときに農薬が使用されています。食品中に残留する農薬は本当に安全なのでしょうか。
A III-8 農薬とは、農作物を害する細菌やカビ、雑草、害虫、ネズミなどから農作物を守ったり、農作物の生育を調整したりして、収量や品質を維持するための薬剤のことをいいます。食品中に残留する農薬は、さまざまな毒性試験の結果から、食品安全委員会がADI※1やARfD※2の設定などのリスク評価を行い、厚生労働省がその評価結果を踏まえて食品ごとの農薬の残留基準※3を決めます。また、農林水産省は農薬としての効果、人や作物、環境への影響等を検討して認められたものだけに使用を許可し、農薬ごと作物ごとに使い方を決めています。残留農薬の濃度が基準値を超えている食品の販売は食品衛生法により禁止されています。厚生労働省は全国の保健所等を通じて、基準値を超えた食品が流通しないように監視・指導を行っています。
なお、農薬に対しては否定的な印象があるかもしれませんが、例えば、麦類には、人や動物に対して多様な健康被害を及ぼす毒素を生産するカビが発生することがあります。農薬を使用することによってこれを抑えることができることなどから、必ずしも農薬を使っていない作物の方が安全とも言えません。
(参考)
・食品安全委員会 食品に関するリスクコミュニケーション「こんなこと聞いてみたかった、農薬のこと」(平成20年11月)
Q III-9 メチル水銀が魚に多く含まれていると聞きましたが、食べても大丈夫でしょうか。
A III-9 魚介類は良質なタンパク質や健康に良いと考えられるEPAやDHA等の高度不飽和脂肪酸を他の食品に比べて多く含むとともに、カルシウムなどのミネラル、微量栄養素の摂取源でもあり、健康な食生活にとって不可欠な栄養上の特性を持っていますので、積極的に食べてほしい食材です。
しかしながら、一部の大型の魚については、食物連鎖を通じた濃縮を経てメチル水銀濃度が比較的高いものも見受けられます。
大量のメチル水銀が妊婦の体内に入った場合、一部が胎盤を通過して胎児に移り、その胎児の機能的発育に影響を及ぼす可能性があります。
食品安全委員会では、平成17年8月に「魚介類等に含まれるメチル水銀についての食品健康影響評価」をとりまとめました。その中で、胎児をハイリスクグループとし、妊婦が1週間に摂取しても胎児に影響を及ぼさない量(耐容週間摂取量)を、妊婦の体重1 kg当たり水銀として2.0 μgとしました。
この評価を受けて、厚生労働省から妊婦に向けて魚介類の摂食量についての注意喚起が出されています。一般的に、魚介類に含まれるメチル水銀濃度は、0.4 ppm(mg/kg)以下ですが、食物連鎖の高い位置にある魚類の一部では、5 ppmを超えることもあり、高齢、大型の肉食性の魚は、比較的高濃度のメチル水銀を含んでいることから、例えば、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロなどは一回に食べる量を80 gとして、妊婦の方は1週間に1回までを目安とすることを勧めています。
なお、メチル水銀は、体内に入った後、消化管から血中へと吸収され、肝臓や腎臓を経由して糞尿として排泄されるほか、毛髪にも含まれて体外に出されます。
妊婦のみなさんは、一部の大型の魚ばかりを食べるのではなく、魚の種類などに気を付けて、バランスの良い食生活を送ってください。なお、男性や妊娠していない女性におかれては、一部の大型の魚であっても通常の食べ方をして差支えありません。
(参考)
・食品安全委員会 お母さんになるあなたと周りの人たちへ ー 妊娠の前から気をつけたい食べ物のこと ー
・厚生労働省 魚介類に含まれる水銀について
・厚生労働省 「これからママになるあなたへ お魚についてしっておいてほしいこと」[PDF:1,435KB]
・食品安全委員会 食品健康影響評価「魚介類等に含まれるメチル水銀について」[PDF:31KB]
Q III-10 硝酸塩は野菜にも含まれていると聞いたのですが、食べても大丈夫なのでしょうか。
A III-10 硝酸塩は、植物がタンパク質を合成するために必要とする物質のひとつで、土壌中に天然に存在し、肥料としても使用される窒素化合物です。そのため、硝酸塩は野菜の中にも含まれていて、ホウレンソウや春菊、サラダ菜等の葉菜に多く含まれることが分かっています。 野菜に含まれる硝酸塩は、ヒトの体内で消化管内に常在している微生物によって還元されて亜硝酸塩に変化する可能性があり、メトヘモグロビン血症※1や発がん物質のニトロソ化合物(ニトロソ基-NOをもつ有機化合物)生成に関与するおそれがあると一部で指摘されています。国際がん研究機関(IARC)※2では、人の体内でニトロソ基(- NO)が物質に付加される条件下で、硝酸塩、亜硝酸塩ともに「人に対しておそらく発がん性がある」と評価しています。
一方、国際連合食糧農業機関(FAO) /世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA) は、「硝酸塩の主要な摂取源が野菜であることはわかっているが、野菜が人にとって有用だということもよく知られており、野菜中の硝酸塩がどの程度血液に取り込まれているのかというデータが得られていないことから、野菜中の硝酸塩について基準値を設けるのは適当でない」との見解を示しています。
天然由来の食品に含まれる硝酸塩については基準値の設定はありませんが、野菜は有用な食品であり、野菜中の硝酸塩について国内における健康被害の報告もないことから、通常の食生活において問題になることはありません。なお、野菜中の硝酸塩は茹でるなどの調理により、3〜4割減少すると期待できます。
(参考)
・食品安全委員会 ファクトシート 「本来的に食品に含まれる硝酸塩(概要)」(平成25年9月3日更新)[PDF:534KB]
・食品安全委員会 季刊誌食品安全 vol.31 p4「野菜などに含まれる硝酸塩のファクトシートご紹介」[PDF:379KB]
・農林水産省 野菜等の硝酸塩に関する情報
Q III-11 ヒ素について、日本人は、ヒジキなどの海藻等の食品から摂る量が多いと聞きました。ヒジキを食べても大丈夫なのでしょうか。
A III-11 ヒ素は、火山活動や鉱物の風化などの自然現象や、金属精錬、廃棄物処理などの産業活動から環境中に放出されます。ヒ素には、炭素を含む有機ヒ素化合物と含まない無機ヒ素化合物があり、両者とも土壌、地下水に自然に存在します。ヒ素は魚介類では主として有機ヒ素として存在しています。米や海藻には有機ヒ素のほか、無機ヒ素も含まれています。無機ヒ素は神経毒性、皮膚病変、がん等を引き起こす可能性が報告されています。一方、有機ヒ素については、人への影響に係る知見がほとんどありません。
食品安全委員会では、平成25年に「食品中のヒ素」について評価を実施しました。その結果、最新の科学的知見によっても解明できない要因がまだ多く、有害性評価に必要な知見が不足していることから、どのくらいの量の無機ヒ素が食品を通じて体内に入った場合に健康への影響が生じるか、見積もることは現時点では困難であると判断されました。
現在のところ海産物を食べることも含めて、特定の食品に偏らずさまざまな食品をバランスよく食べていれば、食生活におけるヒ素の摂取に問題はないと考えられています。
また、我が国では伝統的に海藻をいったん乾燥させ水戻しして食べますが、干しヒジキを60分間水戻しすると、芽ヒジキで75〜95%、長ヒジキで55〜90%のヒ素が除去され、特に水温が高いほどより多く除去されることが報告されています。この調理法も戻し水にヒ素を溶出させてその水を捨てることで、ヒ素の摂取量低減に効果的であると考えられ、通常の調理方法に基づき料理されたヒジキを適度に食べる場合においては、ヒジキに含まれるヒ素について心配することはないと考えられます。
(参考)
・食品安全委員会 化学物質・汚染物質評価書 「食品中のヒ素」[PDF:1,322KB]
・食品安全委員会 食品中のヒ素 Q&A[PDF:129KB]
・食品安全委員会 e-マガジン【読み物版】 食品中のヒ素その1
・食品安全委員会 e-マガジン【読み物版】 食品中のヒ素その2
Q III-12 トランス脂肪酸が含まれているので、マーガリンは食べないほうが良いと言われました。毎日パンに付けて食べると健康に影響がありますか。
A III-12 諸外国における研究結果で、トランス脂肪酸の過剰摂取は、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)を増加させる可能性が高いとの報告もあり、WHO(世界保健機関)では、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とすべきと勧告(目標)基準を定めています。
食品安全委員会が行ったトランス脂肪酸の健康影響評価の結果、日本人のトランス脂肪酸の摂取量の平均値は一日当たりの総エネルギー摂取量の0.3%程度で、大多数は、WHOの目標を下回っており、通常の食生活では、健康への影響は小さいと考えられます。一方、日本人でも、脂質に偏った食事をしている場合には、トランス脂肪酸をとる量も多くなることが報告されています。食塩や脂質を控えめにし、いろいろな食品をバランスよく食べるという食習慣を実践することにより、トランス脂肪酸による心臓病のリスクを低減することに留意する必要があります。
天然にあるトランス脂肪酸を減らすのは難しいと考えられていますが、最近では、油脂の加工工程でできるトランス脂肪酸は、新たな技術を利用することで減らすことができます。食品としての好ましい品質を維持するとともに、飽和脂肪酸を増やさないようにしながら、食品事業者は油脂の加工工程でできるトランス脂肪酸をできるだけ減らすための対策を進めています。
(参考)
・食品安全委員会 食品健康影響評価書 「食品に含まれるトランス脂肪酸」[PDF:1,330KB]
・食品安全委員会 季刊誌vol.30 「トランス脂肪酸のリスク評価」[PDF:608KB]
・食品安全委員会 季刊誌vol.44 「食品に含まれるトランス脂肪酸」[PDF:756KB]
・厚生労働省 トランス脂肪酸に関するQ&A
・農林水産省 すぐにわかるトランス脂肪酸
Q III-13 アクリルアミドという物質に発がん性があるのですか。どのような食品に含まれているのですか。
A III-13 アクリルアミドは、揚げる、焼く、炒めるなど120℃以上の高温調理時に、食品中に元々含まれるアミノ酸の一種であるアスパラギンとブドウ糖や果糖などの還元糖が反応して生成します。
食品安全委員会では、「加熱時に生じるアクリルアミド」の食品健康影響評価を行い、日本人における食事由来のアクリルアミド摂取による神経に対する影響など発がん性以外の健康への影響については、「極めてリスクは低い」と判断しました。発がん性については、ヒトを対象とした研究でアクリルアミド摂取量とがんの発生率との関連に一貫した傾向はみられていないことから、ヒトにおける健康影響は明確ではないが、動物実験の結果及び日本人の推定摂取量に基づき、「公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えない」と判断しました。
このことを踏まえ、ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則※にのっとり、「できる限りアクリルアミドの低減に努める必要がある」としました。
家庭でいも類や野菜類を揚げるときは、焦がしすぎず、軽く色が付く程度に仕上げ、炒めるときも焦がしすぎないように注意しましょう。また、食パンをトーストするときは、普段よりも薄めの焼き色に仕上げるようにしましょう。また、食品中のアクリルアミド低減に積極的に取り組んでいる食品事業者もあります。
アクリルアミドの摂取を控えるために、特定の食品を避けた偏った食生活や食品の加熱が不十分となった場合は、人体に必要な栄養成分を十分に摂取できなくなるおそれや、食中毒のリスクが高まる可能性があります。大切なのは、十分な果実、野菜を含む様々な食品をバランスよく取り、揚げ物や脂肪分が多い食品の過度な摂取を控えることです。バランスの良い食生活を送ることで、アクリルアミドを多く含む食品の摂取量も大きくならないので、食品全体から摂取されるアクリルアミドの量も抑えることになります。
※ ALARAの原則:食品中の汚染物質を合理的に達成可能な範囲でできる限り低くするとの考え方。
(参考)
・食品安全委員会 加熱時に生じるアクリルアミドに関連する情報 (平成28年4月5日)
・食品安全委員会 季刊誌vol.47 p2〜3「加熱時に生じるアクリルアミド」の食品健康影響評価について[PDF:316KB]
・食品安全委員会 セミナー「加熱時に生じるアクリルアミドの食品健康影響評価及び低減対策について」
・農林水産省 食品中のアクリルアミドに関する情報
・厚生労働省 加工食品中のアクリルアミドに関するQ&A
Q III-14 毎日、子どもに豆乳を牛乳の代わりに200 ml飲ませていますが、大豆イソフラボン※1の過剰摂取も健康を害する可能性があると聞き、大人の1日の上限摂取量が75 mgと知りました。大人で75 mgだったら子どもにはどのくらいまでならとっても大丈夫でしょうか。
A III-14 食品安全委員会は平成18年に大豆イソフラボンを含む特定保健用食品について評価を行いました。その結果、閉経前女性(15〜59歳)、閉経後女性(50歳以上)及び男性(15歳以上)については、大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値は、大豆イソフラボンアグリコン※2として70〜75 mg/日としました。また、このうち、日常の食生活に加えて、特定保健用食品からの同成分の摂取量が30 mg/日の範囲に収まるように適切にコントロールできるのであれば、安全性上の問題はないとしています。
一方、乳幼児及び小児(15歳未満)における大豆イソフラボンの摂取による生体への影響については、安全性上の量的な目安を科学的に判断することはできなかったため、これらについては、特定保健用食品として大豆イソフラボンを日常的な食生活に上乗せして摂取することは、安全性が明確でないかぎり、推奨できないとしています。
なお、食品安全委員会では特定保健用食品以外の個別の食品(豆乳を含む)について評価していないため、ご質問の豆乳を子供にどのくらいまでならとっても大丈夫かを示すことはできません。
(参考)
・食品安全委員会 大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的考え方[PDF:272KB]
・食品安全委員会 特定保健用食品評価書 「イソフラボンみそ」「オーラルヘルスタブレット カルシウム&イソフラボン」[PDF:334KB]
・食品安全委員会 特定保健用食品評価書「大豆イソフラボン40」[PDF:308KB]
・食品安全委員会 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(平成18年5月16日更新)
・厚生労働省 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(平成18年8月23日更新)
・農林水産省 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(平成24年2月3日更新)
Q III-15 カフェインが多く含まれている飲料が最近販売されていますが、子どもが飲んでも大丈夫でしょうか。そのほかカフェインに関する情報があれば教えてください。
A III-15 カフェインはコーヒーやココアの豆、茶葉等に天然に含まれている食品成分の一つであり、長い食経験があります。カフェイン(抽出物)は、厚生労働省の既存添加物名簿に掲載され、コーラなどの清涼飲料水などに苦味料として使用することが認められています。エナジードリンク中にも、一缶あたり約90〜200 mgのカフェインが含まれている製品があります。
カフェインを過剰に摂取した場合の一般的な急性作用は 、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気などです。また、米国食品医薬品庁(FDA)は、「過剰摂取の症状は、異常な心拍数増加、発作、死亡などを含む。嘔吐、下痢、昏迷、見当識障害なども生じる」としています。
妊婦ついてはカフェインの摂取により、胎児の発育を阻害する可能性があります。WHO(世界保健機関)、カナダ保健省では妊婦は300 mg/日、EFSA(欧州食品安全機関)は200 mg/日が悪影響のない最大摂取量として制限するよう勧めています。
カフェインは経口摂取された後、速やかに体内に吸収されますが、健康な成人では4〜6時間で半分が尿中に排出されます。しかし、子どもはカフェインを分解する酵素の活性が大人ほどないので、小学生のころまではコーヒーやエナジードリンクをあまり飲ませない方がよさそうです。
また、子どもはアルコールを飲みませんが、アルコールとカフェイン入りのエナジードリンクを一緒に飲むと、アルコールの酔いをカフェインによる興奮作用が覆い隠してしまうので注意が必要です。
(参考)
・食品安全委員会 ファクトシート 食品中のカフェイン[PDF:400KB](平成30年3月31日)
・食品安全委員会 セミナー「カフェインは危ない? 〜コーヒーを科学する〜」
・厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A
・農林水産省 カフェインの過剰摂取について
・消費者庁 食品に含まれるカフェインの過剰摂取について
Q III-16 現在妊娠3か月です。葉酸摂取の目的で、マルチビタミンを飲んでいるのですが、ビタミンAの過剰摂取による胎児への影響の話を聞き、心配になりました。また、レバーは葉酸や鉄分が多く含まれているのですが、ビタミンAも多いと聞いています。食べるのを控えたほうがいいのですか。
A III-16 ビタミンAは胎児の発達に必須の栄養素ですが、妊娠3か月までにビタミンAを非常に多く摂ると、胎児の奇形を発症する懸念があります。妊娠を計画している女性は、胎児の神経管閉鎖障害※1の予防のために葉酸を摂取することが推奨されていますが、葉酸を摂る目的のサプリメントやマルチビタミンにビタミンAが含まれているかどうかを確認し、ビタミンAが含まれていないものを摂るようにしてください。
また、貧血の解消のために、鶏や豚のレバーを食べたい方もいるかもしれません。しかし、鶏や豚のレバーにはビタミンAが非常に多く含まれるので、食べるのはなるべく控えましょう※2。
緑黄色野菜に多く含まれているカロテノイド(β—カロテン、クリプトサンチンなど)は体内でビタミンAになりますが、カロテノイドによるビタミンAの過剰症の心配はありません。食べ物から葉酸を摂る時は、緑黄色野菜から摂るようにしましょう。サプリメントを摂取せず、通常の食生活を送っていれば、ビタミンAの過剰摂取を心配する必要はありません。バランスのよい食事を心掛けてください。
詳細は、食品安全委員会のホームページ『お母さんになるあなたと周りの人たちへ』を参考にしてください。
妊娠中の栄養面についてさらにご心配であれば、かかりつけの医療機関の医師や栄養士にご相談ください。
※1神経管閉鎖障害とは、妊娠初期に胎児の脳や脊髄のもととなる神経管と呼ばれる部分がうまく形成されないことによって起こる先天異常です。葉酸不足に加えて、遺伝などを含めた多くの要因が複合して起こります。
※2厚生労働省は、妊娠期を含めて、成人女性のビタミンAの耐容上限量を 2,700 μg RAE/日としています。鶏レバーや豚レバーには 100 g 当たりおよそ14,000 μg RAE のビタミンAは含まれているので、レバーの焼き鳥 2/3 本(約20グラム)を食べるとビタミンAを 2,800 μg RAE 摂ることとなり、1日当たりの耐容上限量を超えることになります。気づかず食べてしまっても心配せず、当面はなるべく控えましょう。
(参考)
・食品安全委員会 お母さんになるあなたと周りの人たちへ ー 妊娠の前から気をつけたい食べ物のこと ー
・食品安全委員会 ファクトシート ビタミンAの過剰摂取による影響(平成24年9月26日更新)[PDF:396KB]
・国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報(カロテン)
Q III-17 現在妊娠中なのですが、週に数回は缶詰を使った料理を食べています。缶詰に含まれるビスフェノールAという化学物質が胎児に悪影響があるのではないかと心配しています。
A III-17 ビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原料として使用されている物質です。ポリカーボネート製の食器や缶詰の内面塗装剤にエポキシ樹脂が使われている場合、食事を通じて体内に取りこまれる可能性があります。
食品衛生法に基づきポリカーボネート製器具及び容器包装からのBPAの溶出試験規格2.5 μg/mL以下が設定されています。一方、缶詰からの溶出試験規格は定められていませんが、製缶事業者は自主的にBPAの溶出量を減らすための対策に取り組んでいます。
なお、動物の胎児や産仔に対し従来の毒性試験によって影響が認められなかった量に比べて極めて低い用量のBPAばく露による影響が報告されたことから、厚生労働省から食品安全委員会に対し、低用量摂取での胎児や乳幼児への影響の可能性についての評価依頼がありました。器具・容器包装専門調査会で中間的な取りまとめが行われましたが、「現時点での知見からは耐容一日摂取量(TDI)を設定することは困難であるが、今後新たな知見が得られた時点で再度検討を行う」とされ、現在、必要な科学的知見を収集しています。
妊娠中は、おなかの赤ちゃんとお母さん自身の栄養を考えて、様々な食品をバランスよく食べることが大切です。身体に良さそうだからと同じものばかり食べたり、あれがダメ、これが危ないと心配しすぎたりせず、バランスよくいろいろなものを食べることは栄養のためだけではなく、安全な食生活を送る上でも大切なことです。
(参考)
・食品安全委員会 ビスフェノールAに関する健康影響について中間とりまとめ(案)[PDF:136KB]
・厚生労働省 ビスフェノールAのQ&A(平成22年1月15日更新)
Q III-18 「塩」(塩化ナトリウム (NaCl))は生きるために必要だと言われますが、健康にどのように作用しているのですか。
A III-18 「塩」は、塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする調味料で、海水あるいは岩塩からの精製によって生産されます。昔から海に囲まれた日本では、海水から塩を作っていました。法律(塩事業法)による定義では、「塩」とは、塩化ナトリウムの含有割合が40%以上の固形物をいいますが、実際に市販されている塩は、塩化ナトリウムの含有割合が90%以上のものが多く、ほかに、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどが微量に含まれています。
私たちが摂取した塩分(塩化ナトリウム(NaCl))は、体内でナトリウムと塩素に分かれて吸収されます。ナトリウムの体内分布は、その約50%が「細胞外液」と呼ばれる細胞の外側にある液体(主に血液中で液状の成分である血漿(けっしょう))に存在し、次いで約40%は骨に含まれています。
ナトリウムが私たちの体内で果たしている主な役割は二つあり、細胞の浸透圧を維持することと、神経伝達や心筋の収縮に作用しています。また、塩素もナトリウムとともに細胞外液にあって浸透圧の調整に作用するほか、胃液として食物の消化を助ける等の働きをしています。
このように、食塩は私たちの体の健康の維持のためにはなくてはならないものです。反面、過剰な摂取は高血圧につながり、高血圧は種々の健康障害をもたらします。私たちは、現在、平均的に1日に男性10.9 g、女性9.3 g程度の食塩を摂っており、「日本人の食事摂取基準」における目標値(男性7.5 g未満、女性6.5 g未満)を上回っています。
「減塩しお」と呼ばれ市販されている減塩タイプとされる塩のなかには、ナトリウムの摂取を減らすために塩化ナトリウムの含有割合を50%以下にとどめ、その分カリウムの含有割合を高くしているものもあります。しかし、カリウムの摂取はナトリウムの代謝にとって拮抗的に働くことから、腎臓の良くない方は、ナトリウム不足による心臓障害を防ぐためにカリウムの摂取を制限しなければならない場合があり、注意が必要です。
カリウムを多く含む野菜や果物の摂取はナトリウムの排泄を増やすことになりますので、バランスの良い食事をとることが大切です。
(参考)
・食品安全委員会 「食品を科学する−リスクアナリシス(分析)連続講座」 平成27年度第4回「塩と健康〜あなたの塩分摂取量は大丈夫?〜」
・厚生労働省 令和元年「国民健康・栄養調査」の結果の概要
・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
Q III-19 IARC(国際がん研究機関)※が、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、赤肉(red meat)を「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類したとのニュースを見ましたが、どのような評価を行っているのですか。また、赤肉や加工肉とはどういう肉のことですか。
A III-19 2015年10月26日に、IARC(国際がん研究機関)は、10か国の22人の専門家たちが800以上の科学文献を評価して、加工肉は毎日50グラム食べると大腸がんになるリスクが18%増えるとして、グループ1(ヒトに対して発がん性がある)に、赤肉は主に大腸がん(膵臓がんと前立腺がんとの関連も指摘)の関連からグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に、それぞれ発がん性の分類を行ったと発表しました。
ただし、この分類は入手可能な証拠の強さを評価し分類するものであり、発がん性の強さや発がんリスクの大きさを示すものではありません。例えば、グループ1にはアルコール飲料が、2Aには非常に熱い飲み物(65℃以上)が含まれています。 ここでいわれている赤肉は、牛肉、豚肉、羊肉、馬肉など哺乳動物の肉のことで、脂肪が少ない部位を指す赤身肉のことではありません。また、加工肉は、肉を塩蔵、発酵、燻製加工したもので、ソーセージ、ハム、コンビーフ、ビーフジャーキーなどを指しています。
食品安全委員会としては、今回の発表に対しては、元となったデータの交絡要因(様々な関連する要因)を考慮することが必要で、容易に結論が出せるものではないと考えています。なお、日本人の赤肉・加工肉の摂取量は世界的に見ても少なく、平均的摂取の範囲であれば大腸がんのリスクへの影響はほとんど考えにくいといえます。
赤肉には、タンパク質やビタミンB,鉄、亜鉛など健康維持に有用な成分もたくさん含まれています。肉だけでなく植物繊維を含む野菜や豆類、魚なども含めて、いろいろなものをバランスよく食べることが大切です。
※ IARC(国際がん研究機関):WHO(世界保健機関)の一機関。世界の発がん状況の監視、発がん原因物質の特定、発がん物質のメカニズムの解明、発がん制御の科学的戦略の確立を目的に、化学物質やウイルス等発がんハザードの評価、公表を行っている。
(参考)
・食品安全委員会 「レッドミートと加工肉に関するIARCの発表についての食品安全委員会の考え方」
・IARC(国際がん研究機関) Red Meat and Processed Meat: IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans Volume 114
Q III-20 食品中の放射性物質の安全性評価について、食品安全委員会が行った食品健康影響評価の内容について教えてください。
A III-20 食品安全委員会では、食品中に含まれる放射性物質について平成23年に食品健康影響評価(リスク評価)を行いました。その結果、放射線による健康への影響があるのは、通常の生活において受ける放射線量(自然放射線や医療被ばくなど)を除いた生涯における追加の累積の実効線量がおおよそ100 mSv(ミリシーベルト)以上と判断しました。そのうち小児の期間については、感受性が成人より高い可能性があるとしました。この値は、食品から追加的な被ばくを受けたことを前提として健康影響を評価したものです。
しかしながら、その根拠となった科学的知見については、内部被ばくのみの知見が極めて少なかったことから、食品健康影響評価に採用できると判断された外部被ばくを含んだ疫学データも用いました。ただし、評価結果は、内部被ばくと外部被ばくを合計したリスクの評価をしたものではありません。
また、追加の累積の実効線量としておおよそ100 mSvという値は実際の被ばく量に適用されるものです。得られた科学的知見からは、100 mSv未満については、放射線以外の要因の様々な影響と明確に区分できない可能性があること等から、健康影響について言及することは困難でした。
なお、今回の食品健康影響評価で示した「おおよそ100 mSv」という値は、安全と危険の境界(閾値)ではなく、この数値を超過した場合に健康影響が必ず生じるという数値でもありません。
(参考)
・食品安全委員会 食品健康影響評価 「食品中に含まれる放射性物質」
・食品安全委員会 食品中の放射性物質に関する情報
Q III-21 食品中の放射性物質の基準値はどのように決められたのですか。
A III-21 食品安全委員会は放射線による健康影響の可能性が見いだされるのは、通常の生活から受ける放射線量を除いた、生涯における追加的な線量を100 mSV以上と判断しました。これを踏まえ、厚生労働省は、食品から追加的に受ける放射線の総量が年間1 mSv(ミリシーベルト)を超えないようにとの考えの下に基準値を設定しました。
年間1 mSVは、国際的な食品の規格・基準を定めているコーデックス委員会(世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の合同機関)が定めた、食品の特段の措置を採る必要がないと考えられるレベルです。
基準値は4つの食品区分で設定されています。
「飲料水」は、全ての人が毎日摂取するもので代替ができず、その摂取量も大きく、WHO(世界保健機関)が飲料水中の放射性物質の指標値を示していること等から、これと同じ値である10 Bq(ベクレル)/kgとしました。
この飲料水の基準値に、標準的なWHOの飲料水摂取率(2リットル/日)を勘案すると、飲料水から追加的に受ける放射線量は年間約0.1 mSv(ミリシーベルト)と計算されます。
飲料水以外のものについては、「一般食品」、「乳児用食品」、「牛乳」に分けています。また、これらの食品から追加的に受ける年間放射線量が年間1 mSvの基準から、飲料水による線量(約0.1 mSv/年)を差し引いた約0.9 mSvを超えないように設定しました。
なお、加工食品も含む一つの区分として「一般食品」としたのは、
(1) 個人の食習慣の違い(ご飯好き、パン好き、肉好き、野菜好き等摂取する食品の偏り)の影響を最小限にすること、
(2) 消費者にとって分かりやすいこと、
(3) 食品の国際規格基準を策定するコーデックス委員会等の国際的な考え方と整合すること
を考慮したためです。
年齢や性別の違いによる食品の摂取量と放射性物質の健康に与える影響を考慮して、食品中の放射性物質の限度値を割り出し、その中で最も厳しい限度値から、一般食品の基準値を100 Bq(ベクレル)/kgと決定しました。
なお、食品中の放射性物質に関する基準値は、基準値上限の放射性物質を含む食品を食べ続けた場合でも、健康に影響を及ぼさない状況を想定して設定しています。流通している食品の放射性物質は基準値上限よりも少なくなっていますので、実際に食品から追加的に受ける放射線量は基準値よりずっと小さい値となっています。
(参考)
・厚生労働省 食べものと放射性物質のはなし
・環境省 放射線による健康影響等に関する統一的基礎資料
Q III-22 食品中の放射性物質の検査の結果はどうなっていますか。
A III-22 食品中の放射性物質の検査については、原子力災害対策本部が定めたガイドラインに基づき、過去の検査結果を踏まえて各都道府県が出荷前にモニタリング検査を行っています。検査結果は厚生労働省や各自治体のウェブサイト等で公表されています。
農畜産物に含まれる放射性物質は、年々減少しています。麦は2012年度、野菜類、果実類、茶、畜産物では2013年度、米、豆類は2015年度以降の検査では基準値を超えたものはありません。一方で人的管理が困難な、野生きのこ・山菜類、水産物では、現在も、僅かですが、基準値を超過したものも見られます。
より詳細な情報は下記の参考をご参照ください。
(参考)
・厚生労働省 食品中の放射性物質への対応
・農林水産省 食品中の放射性物質の検査結果
Q III-23 芽止めのために放射線を照射されたばれいしょ(ジャガイモ)が販売されていますが、大丈夫でしょうか。
A III-23 発芽防止の目的でばれいしょ(ジャガイモ)に放射線を照射することは、食品衛生法に基づく規格基準で認められています。
食品安全委員会では食品の安全性関係の情報を収集していますが、我が国でばれいしょに放射線を照射したことを原因とする健康被害の情報や安全性に懸念があるといった情報は、現時点では入手していません。
なお、我が国の食品衛生法に基づく規格基準で認められている吸収線量は0.15キログレイ(kGy)※であり、WHO(世界保健機関)が食品に照射しても安全性に問題がないとしている吸収線量10キログレイ(kGy)より低いレベルに抑えられています。
※ グレイ(Gy):放射線が物質に当たったときに、その物質にどのくらいのエネルギーを与えたのかを表す単位
(参考)
・食品安全委員会 ファクトシート 放射線照射食品[PDF:424KB]
・原子力委員会 食品照射専門部会
・厚生労働省 食品への放射線照射について