【読み物版】生活の中の食品安全 - 食品安全委員会について - その1 平成30年7月13日配信

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −食品安全委員会について− その1]
平成30年7月13日 配信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今月(2018年7月)、食品安全委員会は設立15周年を迎えました。そこで今月のe-マガジン【読み物版】では、委員長からのご挨拶とともに、食品安全委員会について組織の概要や役割等をご紹介します。
今号では全般的な内容をお伝えし、次号では、そのうち重要な役割の一つである「リスク評価」を取り上げます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1.委員長からのご挨拶
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
食品安全委員会は、食品の健康リスクを評価しています。
誰もが食品は安全なものであって欲しいと願っていることですが、必ずしもそうではありません。食物となっている動・植物でも有害物質(自然毒、例えばフグ毒やジャガイモのソラニンなど)が含まれており、適切な食べ方をしなかったり、多量に食べると食中毒をおこします。病原微生物による食中毒に対し、わたしたちの祖先は加熱をしたり酢を使ったり、さまざまな経験と工夫によって対処してきましたが、今でも多くの健康被害をもたらしています。ヒジキに含まれるヒ素は、水戻しをしてその水は使わないことで大幅に減ります。人は生きていくために、有害物質を含有している食物であっても工夫をしながら食べてきました。このような経験や工夫に加えて、20世紀末までの食品安全は、食品が食べる時点で有害でないように規制当局が監視・監督することで、人の健康障害が起こらないようにしてきました。しかし、これだけでは充分ではないことが明らかになりました。
現代(21世紀)の食品安全は、”リスクアナリシス”という枠組みで、予防的に、科学に基づいて行われるようになりました。食品安全委員会は、リスク管理機関である厚生労働省や農林水産省などからの諮問に応じて、食品の健康リスクを科学的に評価しているのです。
食料の量と質を確保するために、農薬、添加物、動物用医薬品などが使われますが、それらの使用に一定のルールを設けて安全に使っていくためにリスク評価が必要とされます。人は生きるために食べるのですが、楽しみのためにも食べます。これまで食べてこなかった食品を食べたり、新たな食べ方をします。食品安全委員会は、そのような食品の健康リスクも評価します。食肉の生食のリスク評価が行われ、必要な規制が導入されました。これまで全国的には生では食べなかった種類の魚を生で食べることにより、アニサキスを原因とする食中毒が発生するケースもみられるようになりました。より安全な食べ方についての啓発も進めています。
食品の健康リスクの評価に加えてもう一つ重要な役割は、リスクコミュニケーションです。リスク評価の結果を、正しく、わかりやすく消費者・事業者に伝えることです。さらには、食品安全に関する知識と知恵を伝え、消費者からの疑問に答えたり意見に耳を傾け、消費者の皆様が自らの選択で安全で豊かな食生活を送ることができるようになることも目指しています。それらに加えて、国際的な情報の発信も行っています。特に、食品の輸出入で大きな割合を占めるアジア各国にむけた食品安全委員会からの情報提供は、21世紀初頭から長年にわたる科学的なリスク評価の経験をもつものとして重要な役割です。
さらにリスク評価機関間の国際的な協力や情報交換などのコミュニケーションも不可欠です。幸いにも、欧州食品安全機関(EFSA)はじめ、世界各国の食品安全に関する機関と協力覚書をかわし、体制を整えて協力が行われています。また、食品安全委員会創設10年を記念して創刊したオンラインジャーナル"Food Safety"が順調に刊行されています。このジャーナルを基盤として食品安全委員会のリスク評価結果や食品安全に関する論文などを国際社会へ広く情報発信しています。
最近の食品安全委員会は、従来の動物実験を中心とした生物検定に基づいた評価に代わりうるような、高度にコンピューターを利用した新たな評価方法導入のための研究・調査を行っています。これは、より迅速に多くの評価を実施し、動物愛護にも配慮することを目指しているからです。
食品安全委員会は、これからも食品やそれに関連するものに由来する健康被害から国民の皆様を守ることを理念として活動していきます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2.食品安全委員会の発足と組織の概要
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
食生活が豊かになる一方で、食生活を取り巻く環境は大きく変化し、食品の安全に対する関心も多様化しています。こうした変化に的確に対応するため、2003年5月に「食品安全基本法」が制定されました。この法律では、国民の健康保護を最優先とし、科学に基づく食品安全行政の推進を基本的な考え方としています。また、食品の安全を守るために「リスクアナリシス」の仕組みが導入されることも決まりました。(詳しくは後述します。)
これに伴い内閣府に設置されたのが、食品安全委員会(2003年7月1日発足)です。

●組織の概要●
◇食品安全委員会
食品の安全性の確保に関して優れた識見を有する7名の委員から構成されています。

◇専門調査会、ワーキンググループ
委員会の下には、食品のリスクに関する専門の事項を調査審議するための専門調査会が設置されています。また、特定の事項を集中的に審議するために、専門調査会とは別にワーキンググループが置かれることもあります。2018年4月時点で、専門調査会数は12、ワーキンググループ数は6あり、専門委員は総勢約250名います。

<12 専門調査会>
 ・企画等  ・添加物  ・農薬  ・動物用医薬品
 ・汚染物質等  ・器具・容器包装  ・微生物・ウイルス  ・プリオン
 ・かび毒・自然毒等  ・遺伝子組換え食品等  ・新開発食品  ・肥料・飼料等
<6 ワーキンググループ>
 ・栄養成分関連添加物  ・薬剤耐性菌  ・評価技術企画
 ・六価クロム  ・アレルゲンを含む食品  ・香料

◇事務局
このほかに、委員会の活動を支える組織として事務局があります。事務局長以下、約120名がいます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3.食品安全委員会の主な役割
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
委員会の主な役割は、食品の安全を守る仕組みである「リスクアナリシス」の一部を担うことです。
リスクアナリシスには、3つの柱があります。3つ全てが同じように大切です。
◇リスク評価・・・食べても安全かどうかを科学的に調べて評価する
◇リスク管理 ・・・リスク評価に基づき、食品の安全を守るルールを決めて監視する
◇リスクコミュニケーション・・・リスク評価やリスク管理について、意見や情報を交換する

委員会は、このうちの2つ、「リスク評価」と「リスクコミュニケーション」を担当しています。
「リスク評価」は、委員会が他の行政機関から独立して行っています。
「リスク管理」を行うのは、消費者庁、厚生労働省、農林水産省等です。
例えば、消費者庁は特定保健用食品を、厚生労働省は食品添加物を、農林水産省は生産資材をそれぞれ担当しています。
「リスクコミュニケーション」は、委員会やリスク管理を行う行政機関だけでなく、消費者や事業者など、いわゆるステークホルダーが参加して、意見や情報を交換します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4.具体的にどんなことをやっているの?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
食品安全委員会の役割である「リスク評価」と「リスクコミュニケーション」について、詳しく説明します。

◇リスク評価
食品安全委員会の最も重要な役割です。
人の健康に悪影響を及ぼす可能性のある「食品中の物質」や「食品の状態」(=ハザードと言います。例えば、食品添加物や農薬があります。)について、実際にそれを摂取したとき、どのくらいの確率でどのような悪影響があるのかを科学的に評価しています。これは、さまざまな科学的知見に基づいて、客観的かつ中立公正に行っています。また、上述したリスク管理を行う行政機関から独立して行っています。
なお、リスク評価のことを食品安全基本法の中では「食品健康影響評価」と呼んでいます。

リスク評価は、リスク管理機関から依頼を受けるもののほか、委員会自身が必要と判断した場合も行います。委員会がこの15年間で実施したリスク評価は、2,500件を超えます。最近評価を終了したものとしては、例えば、豆腐の規格基準の改正(平成30年1月23日)や、英国から輸入される牛、めん羊及び山羊の肉及び内臓(平成30年2月6日)があります。

なお、リスク評価に加えて、リスク評価の結果に基づく施策の実施状況を監視したりすることも、委員会の役割となっています。さらに、食品の安全性を確保するための施策を、関係機関に勧告したり、又は意見を述べることもできます。

◇リスクコミュニケーション
もうひとつの大きな役割が「リスクコミュニケーション」です。食品の安全に関係するさまざまな関係者が、各々の立場から意見を出し合ったり情報を交換することで、知識やお互いの理解が深まり、リスクアナリシスの枠組みがより良く機能するようになります。
委員会では、適切で効果的なリスクコミュニケーションを推進するために、そのあり方について検討をすすめ、平成27年5月28日に報告書「食品の安全に関するリスクコミュニケーションのあり方について」を公表しました。現在、この考え方に沿って、以下のようなさまざまな方法により、意見交換や情報共有に取り組んでいます。

〜リスクコミュニケーションの例〜
・各種意見交換会
http://www.fsc.go.jp/koukan/dantai_jisseki.html
・一般消費者向け講座「みんなのための食品安全勉強会」
・食品関係事業者・研究者等向け講座「精講:食品健康影響評価」
http://www.fsc.go.jp/koukan/risk_analysis.html
※講座の様子は動画(YouTube)でもご覧いただけます。
http://www.fsc.go.jp/visual/youtube.html
・食品安全委員会ウェブサイト
http://www.fsc.go.jp/
・おとなと子どもが一緒にお読みいただくための情報「キッズボックス」
http://www.fsc.go.jp/kids-box/
・食品安全委員会公式Facebook
http://www.fsc.go.jp/sonota/sns/facebook.html
・食品安全委員会オフィシャルブログ
http://www.fsc.go.jp/official_blog.html
・食品安全委員会メールマガジン
http://www.fsc.go.jp/mailmagazine_back_number.html

●次号(平成30年7月27日配信予定)に続きます。

≪参考≫
・科学の目で見る食品安全(中学校技術家庭用副読本) 平成29年3月更新
http://www.fsc.go.jp/kids-box/index.data/2017.4.14kagakunome.pdf
・どうやって守るの?食べ物の安全性[改訂版]
http://www.fsc.go.jp/kids-box/foodsafety/
・食品安全委員会:食品の安全性に関する用語集(第5版)
http://www.fsc.go.jp/yougoshu.data/yougoshu_fsc_5.1_201604.pdf


※食品安全委員会では、タイムリーな情報をFacebookやブログで配信しております。ぜひご覧ください。
http://www.fsc.go.jp/sonota/sns/facebook.html
http://www.fsc.go.jp/official_blog.html
====================================================================================
※このメールはシステムが自動発行しておりますので、返信メールは受け付けておりません。
■食品安全委員会e-マガジンバックナンバー
http://www.fsc.go.jp/mailmagazine_back_number.html
■配信登録はこちら
[ウイークリー版+読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao/entry/subscribers/insert?mag_id=35cca0985045a2091e101134e3a26be7別ウインドウで開きます(外部サイト)
[読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao/entry/subscribers/insert?mag_id=e564c936d33a9581ec261adebd17991b別ウインドウで開きます(外部サイト)
[新着メール]
https://www.fsc.go.jp/newsreader/create
■配信中止・配信先変更はこちら
[ウイークリー版+読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao/cancel/subscribers/cancel?mag_id=35cca0985045a2091e101134e3a26be7別ウインドウで開きます(外部サイト)
[読物版]
https://nmg.cao.go.jp/cao/cancel/subscribers/cancel?mag_id=e564c936d33a9581ec261adebd17991b別ウインドウで開きます(外部サイト)
[新着メール]
https://www.fsc.go.jp/newsreader/cancel
===================================================================================
[食品安全委員会e-マガジン]
編集:食品安全委員会e-マガジン編集会議
発行:内閣府食品安全委員会事務局情報・勧告広報課
〒107-6122 東京都港区赤坂5-2-20
赤坂パークビル22階