生物系分野

■ 生物系分野

微生物 Microorganism 【最終更新日 2016年4月】

 直接肉眼では見ることができず、顕微鏡等で観察される微小な生物の総称である。通常、細菌、菌類(酵母、かび等)、原生動物(原虫類等)、ウイルス等を指し、一部の藻類を含めることもある。一部のものは、ヒトを含む動植物に対して病原性を持っている。
 食品の安全性で問題になる微生物としては、サルモネラ属菌黄色ブドウ球菌等の細菌、トキソプラズマ等の原虫類、かび等の真菌、ノロウイルス等のウイルス等が挙げられる。

 

細菌(バクテリア) Bacterium(複数形:Bacteria) 【最終更新日 2016年4月】

 核膜のない原核生物に属する単細胞の微生物の一種である。大きさは0.1〜数μm(1μm=100万分の1m)で、球状・桿状・らせん状等の形態である。二分裂を繰り返して増殖する。広く生態系の中で物質循環に重要な役割を果たしている。

 

芽胞(がほう) Spore 【最終更新日 2016年4月】

 ウエルシュ菌ボツリヌス菌セレウス菌、枯草菌等の特定の細菌が作る細胞構造の一種。生育環境が増殖に適さなくなると、菌体内に形成する。芽胞は加熱や乾燥等の過酷な条件に対して強い抵抗性を持ち、発育に適した環境になると、本来の形である栄養細胞となって再び増殖する。

 

ウイルス Virus 【最終更新日 2016年4月】

 遺伝情報である核酸とそれを保護するタンパク質からなる最も構造の簡単な微生物の一種。核酸の種類により、RNAウイルスとDNAウイルスに分かれる。ウイルスの大きさは数十〜数百nm(1nm=10億分の1m)で、最小の生物といわれている。ウイルスは、それ自身では増殖することができず、他の生物(ヒトを含む動物・植物・細菌)に感染し、その細胞中のタンパク質合成やエネルギーを利用してはじめて増殖できる。

 

自然毒 Natural Toxin 【最終更新日 2016年4月】

 植物又は動物の体内で自然に産生又は蓄積される毒のことであり、それぞれ植物性自然毒、動物性自然毒と呼ばれる。自然毒の例として、毒キノコのアマニチンやイボテン酸等、ジャガイモのソラニン、フグのテトロドトキシン等がある。

 

ソラニン Solanine 【最終更新日 2016年4月】

 自然毒の一つで、ジャガイモの芽や表皮が緑色になっている部分に多く含まれる。摂取2〜24時間後におう吐、下痢、食欲減退等の中毒症状が起こり、大量に摂取すると死に至る場合もある。ジャガイモの食中毒を防ぐには、芽や緑の部分を十分取り除くことが大切である。

 

かび毒 Mycotoxin 【最終更新日 2016年4月】

 一部のかびが穀類等の農産物や食品等に付着・増殖して産生する毒素の総称。一般に、かび毒は耐熱性であり、加工・調理の段階で毒素の量や強さを低減させることが難しいため、農作物の生産、乾燥、貯蔵等の段階で、かびの増殖やかび毒の産生を防止することが重要である。湿潤かつ温暖な我が国は、かびの生育に適していることから、気象条件や農作物の防除・取扱いの方法によってはかび毒を産生する可能性がある。かび毒の例としては、アフラトキシンオクラトキシンパツリンデオキシニバレノールフモニシン等がある。

 

アフラトキシン Aflatoxin 【最終更新日 2016年4月】

 土壌や食品等自然界に広く分布する真菌類のうち、不完全菌類に属するかびであるAspergillus flavus 及びAspergillus parasiticus によって産生されるかび毒。落花生や木の実、穀物等の汚染の例がある。
 食品安全委員会では、平成21年3月に、アフラトキシンのうち、B1、B2、G1及びG2の4種をまとめて総アフラトキシンとして食品健康影響評価書を取りまとめた。総アフラトキシンは遺伝毒性が関与する発がん物質であると判断され、発がんリスクによる評価が実施された。食品からの総アフラトキシンの摂取は、合理的に達成可能な範囲で出来る限り低いレベルに抑えるべきとされた。
 また、平成25年7月には、乳中のアフラトキシンM1及び飼料中のアフラトキシンB1について食品健康影響評価書を取りまとめた。アフラトキシンB1を摂取した動物の乳に含まれるアフラトキシンM1も肝臓に対する発がん性があり、遺伝毒性が関与する発がん物質であると判断され、発がんリスクによる評価が実施された。飼料中のアフラトキシンB1の乳等を介したヒトへの影響は極めて低いものと考えられるものの、汚染はできる限り低いレベルに抑えるべきとされた。

 

オクラトキシン Ochratoxin 【最終更新日 2016年4月】

 Aspergillus ochraceus等のかび類が産生するかび毒。穀類及びその加工品、コーヒー、ココア、ビール、ワイン等の様々な食品で汚染の例が報告されている。
 食品安全委員会では、オクラトキシンAについて、平成26年1月に食品健康影響評価書を取りまとめ、非発がん毒性に関する耐容一日摂取量(TDI)を16ng/kg体重/日、発がん性に関する耐容一日摂取量を15ng/kg体重/日と設定した。
 亜急性毒性試験では、腎毒性が認められた。慢性毒性・発がん性試験では雄の腎臓に腫瘍が認められた。

 

パツリン Patulin 【最終更新日 2016年4月】

 ペニシリウム属(Penicillium,アオカビ)又はアスペルギルス属(Aspergillus, コウジカビ)の一部のかびが産生するかび毒。りんごジュースの汚染が問題となっている。
 食品安全委員会では、平成15年7月に、厚生労働省からの諮問に対し、薬事・食品衛生審議会において行われたパツリンの暫定耐容一日摂取量(PTDI)を0.4μg/kg体重/日と設定するとの評価結果を妥当と考える、との結果を公表した。パツリンは消化管の充血、出血及び潰瘍を起こす。

 

デオキシニバレノール DON:Deoxynivalenol 【最終更新日 2016年4月】

 穀類等で赤かび病の原因となるGibberella zeae及びその無性胞子を形成する不完全世代のFusarium graminearumF. culmorum等により産生されるB型トリコテセンに属するかび毒。小麦、大麦及びトウモロコシの汚染の例がある。
 食品安全委員会では、食品健康影響評価書を平成22年11月に取りまとめ、無毒性量(NOAEL)を0.1mg/kg体重/日とし、耐容一日摂取量(TDI)を1μg/kg体重/日と設定した。
 実験動物を用いた毒性試験では、主におう吐、摂餌量の減少、体重増加抑制及び免疫系に及ぼす影響が認められた。

 

ニバレノール NIV:Nivalenol 【最終更新日 2016年4月】

 穀類等で赤かび病の原因となるGibberella zeae及びその無性胞子を形成する不完全世代のFusarium graminearumF. culmorum等により産生されるB型トリコテセンに属するかび毒。世界的にはデオキシニバレノール(DON)ほどは問題になっていないが、日本では麦類で汚染の例がある。
 食品安全委員会では、食品健康影響評価書を平成22年11月に取りまとめ、最小毒性量(LOAEL)を0.4mg/kg体重/日とし、耐容一日摂取量(TDI)を0.4μg/kg体重/日と設定した。
 実験動物を用いた毒性試験では、主に摂餌量の減少、体重増加抑制及び免疫系に及ぼす影響が認められた。

 

フモニシン Fumonisin 【最終更新日 2016年4月】

 フモニシンは、フザリウム属(Fusarium)の一部のかびが産生するかび毒。トウモロコシから高頻度、高濃度の汚染の報告があり、フモニシンB1が最も多く、B2、B3と続く。ウマの白質脳症やブタの肺水腫等の家畜への影響のほか、トウモロコシ加工品を主食としている地域において、新生児の神経管への催奇形性を示唆する報告がある。また、ラットやマウスを使った動物試験では、肝臓や腎臓に発がん性が認められている。

 

食中毒  Foodborne Illness, Food Poisoning 【最終更新日 2016年4月】

 食品に起因する胃腸炎、神経障害等の中毒症の総称で、その原因物質によって微生物性食中毒、自然毒食中毒(毒キノコ、フグ毒、かび毒等が原因)、化学物質による食中毒、その他のもの(寄生虫等)、原因不明なものに分類される。
 微生物性食中毒は細菌性食中毒とウイルス性食中毒に分けられ、このうち細菌性食中毒は、感染型と毒素型に分類される。

 感染型食中毒:食品中に増殖した原因菌(サルモネラ属菌リステリア・モノサイトゲネス腸炎ビブリオエルシニア菌等)を食品とともに摂取した後、原因菌が腸管内でさらに増殖して臨床症状が引き起こされる食中毒。
 毒素型食中毒:生菌を摂取するのではなく、食品中で原因菌が増殖し産生された毒素の摂取によって引き起こされる食中毒のこと。黄色ブドウ球菌ボツリヌス菌セレウス菌ウエルシュ菌等が原因菌となる。

(参考)
静菌…微生物を積極的に死滅させないが、増殖が抑制される状態におくことをいう。低温貯蔵、塩蔵等の貯蔵中では、微生物が死滅せず、静菌の状態で存在することがある。
除菌…微生物の死滅を伴わずに、微生物を、何らかの方法(洗浄、ろ過等)によって取り除くことをいう。微生物を積極的に死滅させることはできないが、除菌により存在する微生物数が減少することになり、その程度に応じて食品等の保存性が延長される。
殺菌…一般には、標的とする微生物を死滅させる操作(加熱、薬剤処理、紫外線やγ線処理、加圧等)をいう。殺菌しても標的としていない一部の微生物は生存している場合がある。食品製造の際は、食中毒菌や腐敗の原因となる有害微生物を加熱殺菌する商業的殺菌(商品価値が維持できる程度の殺菌)が行われる。
滅菌…あらゆる微生物を死滅させ、又は除去することをいう。高温による滅菌のほか、薬剤、紫外線やγ線等が用いられる。

 

水分活性 Aw:Water Activity 【最終更新日 2018年12月】

 食品の保存性の指標値のひとつ。微生物が生育するために利用できる食品中の水分(※1)の割合。
 食品の水蒸気圧(P)(※2)/純水の水蒸気圧(P0)で求められる。

※1 食品に含まれる水分は、食品中のたんぱく質、炭水化物等の成分と結合した水と蒸散や吸水が自由にできる水に分けられ、微生物が利用できるのは後者の水である。

※2 食品を入れた密閉容器内の蒸気圧。

(参考)
 水分活性(Aw)は、純水では1、完全に乾燥した食品では0となるので、0〜1の範囲となる。細菌は水分活性の高い環境(0.9以上)でよく生育し、カビは比較的低い水分活性の環境(約0.7)でも生育する。また、食塩を高濃度添加した塩蔵品は水分活性が低下し、保存性が増加する。

 

非加熱喫食用食品 Ready-to-Eat Food 【最終更新日 2018年12月】

 喫食前に加熱調理やその他の加工を必要としない食品。RTE食品、非加熱喫食調理済み食品ともいう。

 

サルモネラ属菌  Salmonella 【最終更新日 2016年4月】

 ヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌で、その一部は病原性を示す。よく知られているものとしてはサルモネラ・エンテリティディス(S. Enteritidis)やネズミチフス菌(サルモネラ・ティフィムリウム(S. Typhimurium))等がある。このエンテリティディスやティフィムリウムという呼称は、抗原性の違いに基づいた血清型の名前である。チフスとパラチフスの原因菌もサルモネラ属菌であるが、食中毒起因菌とは異なる。
 サルモネラ属菌による食中毒は、我が国での発生件数が多いものの一つである。卵又はその加工品を原因としたサルモネラ・エンテリティディスによる食中毒は、近年、生産〜販売における本菌低減対策の効果により発生が少なくなっている。

  <特徴> 動物の腸管、自然界(川、下水、湖等)に広く分布。生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。乾燥に強い。
  <食中毒症状> 潜伏期は6〜72時間。主症状は激しい腹痛、下痢、発熱、おう吐。長期にわたり保菌者となることもある。
  <過去の食中毒原因食品> 卵又はその加工品、食肉(牛レバー刺し、鶏肉)、うなぎ、すっぽん、乾燥イカ菓子等。食中毒菌で汚染されている食品、調理器具等と接触することによって新たに汚染された(二次汚染による)各種食品。
  <対策> 肉・卵は十分に加熱(75℃以上、1分以上)する。卵の生食は新鮮なものに限る。低温保存は有効だが、過信は禁物。と畜場、食肉店における対策とともに、調理段階での交差汚染の防止等二次汚染にも注意が必要。

 

黄色ブドウ球菌  Staphylococcus aureus 【最終更新日 2016年4月】

 ヒトや動物の表皮や粘膜等に常在する細菌で、毒素を産生し食中毒の原因菌となる。顕微鏡で観察するとブドウの房のように複数の細菌が集団を形成し、培地上で黄色のコロニーを形成することからこの名前が付いている。

  <特徴> ヒトを含めた各種のほ乳動物、鳥類等に広く分布。特に、健康者の鼻、咽頭、腸管等に常在し、人間の手指からも検出。菌の増殖に伴い、毒素(エンテロトキシン)を生成し、食中毒を引き起こす。菌は、75℃、1分以上の加熱で殺菌されるが、毒素(エンテロトキシン)は耐熱性(100℃、30分の加熱でも無毒化されない)。
  <食中毒症状> 潜伏期は1〜5(平均3)時間。主症状は、吐き気、おう吐、腹痛、下痢。
  <過去の食中毒原因食品> 乳・乳製品(牛乳、クリーム等)、卵製品、畜産製品(肉、ハム等)、穀類とその加工品(握り飯、弁当)、魚肉ねり製品(ちくわ、かまぼこ等)、和洋生菓子等。
  <対策> 手指の洗浄、調理器具の洗浄殺菌。手荒れや化膿巣のある人は、食品に直接触れない。防虫、防鼠対策は効果的。低温保存は有効。生成された毒素は、加熱調理により分解されにくいので、注意が必要。

 

ボツリヌス菌 Clostridium botulinum 【最終更新日 2016年4月】

 酸素のある条件では生育できない偏性嫌気性細菌(酸素が極めて少ない状態でのみ発育する菌をいう。)で、食品の中で増殖した菌により産生されたボツリヌス毒素が食中毒の原因となる。また、乳児では大腸内細菌叢が発達していないため、大腸内で増殖した本菌が産生する毒素によって乳児ボツリヌス症を起こすことがある。産生する毒素の種類によって、A型菌からG型菌に区分される。食中毒は主にA型菌、B型菌、E型菌によるものが多い。

  <特徴> 土壌、河川、動物の腸管等の自然界に芽胞の状態で広く生息する。酸素の極めて少ないところで増殖し、熱に極めて強い芽胞(型により耐熱性に差がある)を作る。強い神経障害をもたらす毒素を産生する。毒素の失活には80℃で30分以上(100℃で数分以上)の加熱を要する。
  <食中毒症状> 潜伏期は8〜36時間。主症状は、吐き気、おう吐、筋力低下、脱力感、便秘、神経症状(複視等の視力障害や発声困難、呼吸困難等)。発生は少ないが、いったん発生すると重篤となる。我が国では、抗毒素療法の導入後、致死率が約30%から約4%まで低下している。
  <過去の食中毒原因食品> 日本:かつては「いずし」を原因食品とするE型菌による食中毒が多発していたが、現在では珍しい。A型菌、B型菌による食中毒も発生したことがある。
諸外国:食肉製品や野菜缶詰、瓶詰を原因食品とするA型菌、B型菌が多い。乳児ボツリヌス症の場合、蜂蜜、コーンシロップ等からの感染がある。
  <対策> 容器が膨張している缶詰や真空パック食品は食べない。ボツリヌス食中毒が疑われる場合、抗血清による治療を早期に開始する。

 

腸炎ビブリオ Vibrio parahaemolyticus 【最終更新日 2016年4月】

 夏期に海水温が上昇する沿岸海域及び汽水域の海水及び水底の汚泥等に広く分布し、海水、魚介類から分離される、通性嫌気性の好塩性の細菌で、主に生の魚介類を介して食中毒を引き起こすが、近年の食中毒の発生は減少傾向にある。魚介類を生食する習慣のない国ではあまり見られない食中毒である。

  <特徴> 海(河口部、沿岸部等)に生息する。真水や酸に弱い。3%前後の食塩を含む食品(浅漬け等)中でよく増殖し、室温でも速やかに増殖する。菌は、60℃、10分間の加熱で殺菌される。60℃、10分で失活する易熱性の耐熱性溶血毒類似毒素、100℃、15分の加熱でも無毒化されない耐熱性溶血毒素等を産生する。
  <食中毒症状> 潜伏期は8〜24時間。主症状は、腹痛、水様性下痢、発熱、おう吐。
  <過去の食中毒原因食品> 魚介類(刺身、寿司、魚介加工品)。二次汚染による各種食品(漬物、生野菜等)。
  <対策> 魚介類の低温流通が重要。短時間でも冷蔵庫に保存し、増殖を抑える。まな板や包丁を介した食品の二次汚染にも注意。

 

腸管出血性大腸菌 EHEC:Enterohemorrhagic Escherichia coli(VTEC:Verotoxin producing E.coli又はSTEC:Shiga toxin-producing E.coliともいう。) 【最終更新日 2016年4月】

 ヒトの腸管や腎臓等に対する細胞毒性を有するベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす病原性大腸菌。

  <特徴> 動物の腸管内に生息し、糞尿を介して食品、飲料水を汚染する。家畜では症状を出さないことが多く、外から見ただけでは、菌を保有する家畜かどうかの判別は困難。赤痢菌が生産する志賀毒素類似のベロ毒素を生産し、激しい腹痛、水様性の下痢、血便を特徴とする食中毒を起こす。僅かな菌数でも発病することがある。加熱や消毒処理には弱く75℃、1分程度の通常の加熱で殺菌される。食中毒の原因となっている血清型にはO157の他にO26、O111、O128、O145等がある。
  <食中毒症状> 感染後1〜10日間の潜伏期間。初期の感冒様症状のあと、激しい腹痛と大量の新鮮血を伴う血便がみられる。発熱は少ない。患者数は多くないが、乳幼児や高齢者を中心に溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発し、意識障害に至る等、重症になりやすい。
  <過去の食中毒原因食品> 日本:井戸水、焼肉、牛レバー、野菜の浅漬け等
欧米:ハンバーガー、ローストビーフ、アップルジュース等
  <対策> 食肉は中心部までよく加熱する(75℃、1分以上)。野菜類は流水でよく洗う。と畜場の衛生管理、食肉店での二次汚染対策を十分に行う。低温保存の徹底。

 

ウエルシュ菌  Clostridium perfringens 【最終更新日 2016年4月】

 ヒトや動物の腸管に生息する偏性嫌気性の芽胞形成菌で、腸管内で芽胞を形成するときに産生されるエンテロトキシン(腸管毒)によって食中毒が起こる。エンテロトキシンは易熱性(60℃、10分で失活)である。

  <特徴> 人や動物の腸管や土壌、下水に広く生息する。酸素のないところで増殖する菌で芽胞を作る。芽胞は、易熱性芽胞(100℃、数分で死滅)と耐熱性芽胞(100℃、1〜6時間の加熱に耐える)があり、人の食中毒は主に耐熱性芽胞により引き起こされる。食品を加熱調理し、他の細菌が死滅しても耐熱性芽胞は生き残り、食品の温度が発育に適した温度まで下がると発芽して急速に増殖する。増殖型の細菌が芽胞に変わるときに毒素を産生し食中毒を起こす。
  <食中毒症状> 潜伏期は6〜12時間。主症状は下痢と腹痛で、おう吐や発熱はまれである。
  <過去の食中毒原因食品> 多種多様の煮込み料理(カレー、煮魚)、麺のつけ汁、いなりずし、野菜煮付け等。
  <対策> 清潔な調理を心がけ、調理後速やかに食べる。食品中での菌の増殖を阻止するため、加熱調理食品の冷却は速やかに行う。食品を保存する場合は10℃以下か55℃以上を保つ。また、食品を再加熱する場合は、十分に加熱して増殖型の細菌を殺菌し早めに喫食する。ただし、加熱しても芽胞は死滅しないこともあるので注意を要する。

 

セレウス菌  Bacillus cereus 【最終更新日 2016年4月】

 通性嫌気性の芽胞形成菌であり、土壌やヒトの腸管にもみられる常在菌で、食中毒を引き起こす。菌の産生するセレウリド(おう吐毒)によるおう吐型とエンテロトキシンによる下痢型がある。

  <特徴> 土壌等の自然界に広く生息する。毒素を生成する。芽胞は100℃、30分の加熱でも死滅せず、アルコール等の消毒薬も無効。おう吐毒であるセレウリドは126℃、90分の加熱でも失活しない。下痢毒であるエンテロトキシンは易熱性で56℃、5分で失活する。
  <食中毒症状> おう吐型と下痢型がある。
おう吐型:食品中で産生された毒素(セレウリド)が原因で発症する毒素型であり、潜伏期は30分〜6時間。主症状は吐き気、おう吐。
下痢型:食品内で増えた菌が喫食され、腸管内での細菌の増殖とともに産生された毒素(エンテロトキシン)によって起こる感染型であり、潜伏期は8〜16時間。主症状は下痢、腹痛。
  <過去の食中毒原因食品> おう吐型:ピラフ等の米飯類、スパゲティ等の麺類。
下痢型:食肉、野菜、スープ、弁当等。
  <対策> 衛生的な調理を心がけ、調理後速やかに食べる。米飯やめん類を作り置きしない。穀類の食品は室内に放置せずに、加熱調理食品の冷却は速やかに行い、10℃以下で保存する。

 

エルシニア・エンテロコリチカ Yersinia enterocolitica 【最終更新日 2016年4月】

 豚等の家畜や犬、猫等のペットやネズミにみられる通性嫌気性の細菌で、動物には症状を起こさない不顕性感染である。保菌している動物の糞便を介して汚染された食肉や飲料水の摂取により食中毒が起こる。保育所や小学校で集団食中毒が起こることがある。

  <特徴> 家畜(特に豚)、ネズミ等の野生小動物が保菌する。低温域(0〜5℃)でも増殖することができる。通常の加熱で死滅する。耐熱性のエンテロトキシンを産生するが、この毒素を含む食品による食中毒は報告されていない。
  <食中毒症状> 潜伏期は0.5〜6日。主症状は、発熱、腹痛、下痢。
  <過去の食中毒原因食品> 主に食肉。サンドイッチ、野菜ジュース、井戸水も報告されている。
  <対策> 食肉は十分に加熱(75℃以上、数分)する。低温でも増殖しうるので冷蔵庫を過信しない。

 

カンピロバクター・ジェジュニ/コリ Campylobacter jejuni / Campylobacter coli 【最終更新日 2016年4月】

 温血動物の腸内に広く分布する微好気性の細菌で、鶏、牛、豚をはじめ、犬、猫、小鳥等からも検出される。我が国で発生している細菌性食中毒の中で、発生件数が最も多い。

  <特徴> 家畜、家禽類の腸管内に生息し、食肉(特に鶏肉)、臓器や飲料水を汚染する。鶏肉等の食材中ではほとんど菌が増殖することがない。乾燥にきわめて弱く、また、通常の加熱調理で死滅する。
  <食中毒症状> 潜伏期は1〜7日と長い。主症状は、発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢、血便等。少ない菌量でも発症。潜伏期間が長いので、原因食材が判明しないことも多い。腸炎等の症状は重くなく、一般に予後は良好であるが、感染後に神経疾患であるギラン・バレー症候群を発症することもある。
  <過去の食中毒原因食品> 食肉(特に鶏肉)、飲料水、生野菜、牛乳等。主に食肉(特に鶏肉の生食)を介した食中毒が多い。
  <対策> 調理器具を熱湯消毒し、よく乾燥させる。肉と他の食品との接触を防ぐ。食肉・食鳥処理場での衛生管理、二次汚染防止を徹底する。食肉・食鳥肉は十分な加熱(65℃以上、数分)を行う。

 

ギラン・バレー症候群 Guillain Barre Syndrome 【最終更新日 2016年4月】

 急激に手足の筋力が低下し、症状が進行する末梢性の多発性神経炎で、数週間持続する。ポリオの減少した現在、最も多く見られる急性弛緩性麻痺疾患。カンピロバクター感染も同症候群を誘発する要因の一つとして考えられているが、その機序等は未解明。

 

リステリア・モノサイトゲネス Listeria monocytogenes 【最終更新日 2016年4月】

 動物の体内では、腸内に常在する細菌で、哺乳類、鳥類、魚類等広範囲の動物に存在する。また、自然界に広く分布する。乳、食肉等、様々な食品が汚染され、低温長期保存中に増殖すること等で食中毒を起こす。その汚染源、経路は良く分かっていないが、諸外国ではRTE食品を媒介したリステリア症が多数報告されている。

  <特徴> 家畜、野生動物、魚類、河川、下水、飼料等、自然界に広く分布。4℃以下の低温でも増殖可能。65℃、数分の加熱で死滅。
  <食中毒症状> 潜伏期間は24時間から数週間と幅が広い。主症状は倦怠感、弱い発熱を伴うインフルエンザ様症状。妊婦、乳幼児、高齢者では、感染すると髄膜炎や敗血症、流産等を起こし、死に至る場合もある。
  <過去の食中毒原因食品> 我が国では、食中毒統計上、本菌が食中毒の原因として報告された事例はないが、欧米では多数報告されている。未殺菌牛乳、ナチュラルチーズ、野菜、食肉、ホットドック、スモークサーモン等。
  <対策> 加熱不足の食品の摂取をできるだけ避け、冷蔵庫を過信しない。

 

ノロウイルス Norovirus 【最終更新日 2016年4月】

 ノロウイルスはヒトの腸で増殖し、ヒト−ヒト感染のほか、糞便(ウイルス)で汚染された食品による食中毒も多発。我が国で発生している食中毒の中で、発生件数・患者数が最も多い。冬季を中心に、年間を通して胃腸炎を起こす。

  <特徴> 手指や食品等を介して感染し、おう吐、下痢、腹痛等を起こす。ノロウイルスによる食中毒事例では、原因食品の判明していないものが多く、その中には食品取扱者を介して二次的に食品が汚染されることが多いのも特徴。その他の原因としては、貝類(二枚貝)がある。少量のウイルスでも発症し、感染者は多量のウイルスを糞便中に排泄する。通常の殺菌・消毒に使用されるアルコール等はあまり効果がない。
  <食中毒症状> 潜伏期は24〜48時間。主症状は、下痢、おう吐、吐き気、腹痛、38℃以下の発熱。
  <過去の食中毒原因食品> 糞便(ウイルス)に汚染した食品全般。感染事例は近年増加傾向にあり、食品を原因とするものに加え、食品を介さない感染(ヒト—ヒト感染)も報告されている。
  <対策> 手指をよく洗浄する。食品を取り扱う際は十分に注意し、手洗いを徹底する。調理器具等は洗剤等を使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くか、あるいは熱湯で1分以上の加熱が有効。二枚貝は中心部まで充分に加熱する(85℃〜90℃、90秒間以上)。野菜等の生鮮食品は充分に洗浄する。

 

A型肝炎、E型肝炎 HAV:Hepatitis A Virus / HEV:Hepatitis E Virus 【最終更新日 2016年4月】

 A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスによって起こる肝炎のこと。ウイルスを原因とする肝炎は、現在のところA型からG型までとそれ以外に分類されるが、そのうちA型とE型肝炎は食品や井戸水を介して、経口的に感染する。海外では大規模な感染の例が報告されている。

  <症状> 潜伏期間は2〜9週間で、発熱、下痢、腹痛、倦怠感等の症状がみられる。
  <過去の食中毒原因食品> A型肝炎は、上下水道施設が不十分な環境下で汚染された魚介類や水を介した感染がみられる。また、ベリー類等の果実を介し感染した例もある。
E型肝炎は、近年、日本で、生又は加熱不十分の鹿肉や猪肉を食べたことにより感染した例、あるいは加熱不十分な豚のレバー等を食べて感染したと推測される例がある。
  <対策> HAVは加熱により感染性を失うことから、魚介類や水は十分に加熱調理を行う。
HEVは加熱により感染性を失うことから、猪、鹿、豚等の獣肉及び内臓については中心部まで十分に加熱調理を行う。

 

トキソプラズマ Toxoplasma gondii 【最終更新日 2016年4月】

 ネコを固有宿主(終宿主)とする原虫であるコクシジウムの一種。Toxoplasma gondii の感染によって起こる人獣共通感染症をトキソプラズマ症という。

  <特徴> ヒトを含めた哺乳類や鳥類は中間宿主である。ヒトの感染経路は、終宿主から糞便とともに排泄された原虫の経口摂取若しくは原虫に感染した獣肉の生又は加熱不十分な状態での経口摂取による感染、経胎盤感染及び臓器移植による感染が知られている。食肉中の原虫は、強固な膜の中に多数の原虫が含まれる形で存在し、生残性が高く、4℃では長期間感染力を失わないが、加熱処理では、55℃、5分で感染性が消失する。
  <症状> 感染をしても無症状から頭痛や発熱等の軽度の症状を示す場合が多いが、重篤な場合は、リンパ節炎、肺炎等を起こし、時に死亡することもある。妊娠中に初めて感染した場合は、胎盤感染を起こし、早期流産のほか、胎児に神経症状(水頭症、脈絡網膜炎、脳内石灰化)等の症状が出現する。
  <リスクの高い食品> 加熱不十分な肉(豚、羊、山羊)、山羊乳。
  <対策> 食肉の加熱処理を徹底し、調理使用器具には熱湯散布の処理をする。

 

旋毛虫(トリヒナ) Trichinella spp. 【最終更新日 2016年4月】

 旋毛虫(トリヒナ、Trichinella spp.)は、宿主域及び分布域が極めて広く、人獣共通感染症の原因となる。小腸粘膜に寄生したものを腸トリヒナ、筋肉に寄生したものを筋肉トリヒナという。

  <特徴> ヒトがトリヒナの幼虫が寄生している動物の肉を生あるいは加熱不十分な状態で食べることにより感染する。
  <食中毒症状> 腸トリヒナ:吐き気、下痢、腹痛等、筋肉トリヒナ:筋肉痛、発熱、悪寒、浮腫等。少数感染の場合は無症状で経過することも多いが、多数感染で最悪の場合には、感染4〜6週後、呼吸麻痺を引き起こすことにより死に至る。
  <過去の食中毒原因食品> 国内の飼育豚からの感染事例は皆無だが、熊肉の刺身による集団感染例がある。
  <対策> 野生動物の肉に関しては、必ず加熱調理を行う。特に、熊肉に寄生するトリヒナの幼虫は凍結に耐性を持つ種類があるため、凍結保存後であっても十分な加熱調理が必要。

 

有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう) Taenia solium 【最終更新日 2016年4月】

 条虫類(サナダムシ)の一種である条虫属(Taenia属)の寄生虫で、人獣共通感染症の原因となる。有鉤条虫(Taenia solium)による有鉤条虫症(成虫による感染症)と有鉤嚢虫症(幼虫による感染症、cysticercosis)がある。

  <特徴> 成虫は、ヒトを固有宿主とし、中間宿主はブタ、イノシシであり、ヒトが幼虫を保有する豚肉、猪肉等を加熱不十分な状態で摂取すると有鉤条虫症を起こす。虫卵を摂取した場合は、ヒトも中間宿主となり、有鉤嚢虫症になる。有鉤嚢虫症は、ヒトが糞便とともに排泄した虫卵により汚染された水、食品等を経口摂取することにより起こる。
  <症状> 有鉤条虫症:成虫が腸に寄生した場合は、腹部膨満感等の症状を示し、一般に症状は軽微。
有鉤嚢虫症:ヒトの皮膚の下や筋肉に寄生した場合は、大豆やクルミの大きさの無痛性の瘤が形成され、軽い炎症性反応を生じる。その後、3〜6年で虫体が死滅した後、組織の石灰化が起こる。脳や脊髄、眼球、心筋に寄生した場合、症状は重篤で、神経症状や心機能障害を起こす。
  <リスクの高い食品> 加熱不十分なブタ、イノシシの肉類。
  <対策> 獣肉及び内臓を喫食する際は、十分な加熱調理を行う。

 

無鉤条虫(むこうじょうちゅう) Taenia saginata 【最終更新日 2016年4月】

 条虫類(サナダムシ)の一種である条虫属(Taenia属)の寄生虫で、人獣共通感染症の原因となる。無鉤条虫(Taenia saginata)により無鉤条虫症(成虫による感染症)を引き起こす。有鉤条虫と異なり、ヒトが虫卵を経口摂取しても感染は成立しない。

  <特徴> ヒトを固有宿主とし、中間宿主は主にウシであるが、水牛、キリン、ラバ、カモシカ、ヒツジ、ヤギ等の偶蹄目も中間宿主となり得る。
  <症状> 無症状に経過して片節を排出して気づくものから、腹痛、悪心、倦怠感、頭痛、めまい、肛門掻痒感等の症状を訴えるものもある。
  <リスクの高い食品> 加熱不十分な肉類。
  <対策> 牛肉及び内臓を喫食する際は十分な加熱調理を行う。その他、と畜場での牛肉の検査の徹底、中間宿主への感染の防止。

 

アニサキス Anisakis 【最終更新日 2016年4月】

 成虫がイルカ、クジラ等の海洋に生息する哺乳類の胃に寄生する線虫であるアニサキス亜科(Anisakidae)の幼虫の総称。

  <特徴> 待機宿主の海産魚やイカ等を生で喫食することにより幼虫に感染する。虫体1隻の感染であっても発症することがある。
  <食中毒症状> 胃アニサキス症と腸アニサキス症に分類され、症状によって劇症型(急性)、緩和型(慢性)に分類される。
急性胃アニキサス症:食後、数時間後から十数時間後に心窩部に激しい痛み、悪心、おう吐を生じる。
急性腸アニサキス症:食後、十数時間後から激しい下腹部痛、腹膜炎症状等を示す。
通常、感染から3週間で自然に消化管内から消失する。
慢性症状:自覚症状を欠く場合が多い。
  <過去の食中毒原因食品> サバ、アジ、イカ、イワシ等魚介類の寿司や刺身。
  <対策> 加熱調理(60℃、1分若しくは70℃以上)をするか、十分に冷凍(-20℃、24時間以上)してから調理を行う。その他、漁獲後は、速やかに内臓を除去する。調理の際に、目視で確認することが有効。また、酸には抵抗性があるため、シメサバのように食酢で処理しても死なない。

 

クドア・セプテンプンクタータ Kudoa septempunctata 【最終更新日 2016年4月】

 ヒラメの筋肉に寄生する粘液胞子虫。

  <特徴> 生態はよく判っていないが、多毛類(ゴカイ等)と魚類との間をいったりきたりして各々に寄生しているといわれている。しかし、ヒト等のほ乳類には寄生しないと推測されている。中心部を75℃、5分以上の加熱で筋肉内のクドアは死滅する。
  <食中毒症状> 食後数時間程度で下痢、おう吐、胃部の不快感等が認められる。症状は比較的軽く、翌日には後遺症もないとされている。
  <過去の食中毒原因食品> 生食用生鮮食品、特にヒラメの刺身。
  <対策> 75℃、5分以上の加熱をする。刺身としての利用を考える場合は、-16〜-20℃で4時間の凍結処理を行う。また、生食用生鮮ヒラメで筋肉1g当たりのクドアの胞子数が1.0×106個を超えることが確認された場合は、販売が禁止されている。

 

下痢性貝毒 DSP:Diarrhetic Shellfish Poison 【最終更新日 2016年4月】

 下痢性貝中毒を引き起こす原因となる貝毒。

  <特徴> 毒化したプランクトンを捕食した二枚貝に下痢性貝毒が蓄積し、これらの二枚貝を喫食することによって下痢性貝中毒を引き起こす。オカダ酸とその同属体のジノフィシストキシン類(ジノフィシストキシン1及びジノフィシストキシン3等)があげられる。
  <食中毒症状> 消化器系の障害で、下痢、吐き気、おう吐、腹痛が顕著である。症状は食後30分から4時間以内の短時間で起こる。回復は早く、通常は3日以内に回復する。現在までに後遺症や死亡例の報告はない。
  <過去の食中毒原因食品> 我が国では、ムラサキイガイ、ホタテガイ、イガイ、アサリ、コタマガイ等で報告がある。
  <対策> 毒化した貝類の見極めは外見からはできず、通常の加熱処理では無毒化することはできない。毒素は貝類の中腸腺に蓄積するため、この部分の除去も有効である。また、我が国では貝類による食中毒防止のため、定期的に有毒プランクトンの出現を監視し二枚貝の毒性値を測定し、規制値(可食部1g当たり0.05MU)を超えたものは出荷規制されている。このため近年、市販の貝類による食中毒は発生していない。

 

シガテラ毒素 CTX:Ciguatoxin 【最終更新日 2016年4月】

 藻類である渦鞭毛藻(うずべんもうそう)が産生するシガトキシン及びその類縁化合物をいう。シガテラ毒素が蓄積された魚類を喫食することによって発生する食中毒をシガテラという。

  <特徴> 食物連鎖(海藻に付着した渦鞭毛藻→藻食動物→肉食魚)によって魚類にシガテラ毒素が蓄積し、これらの魚類を喫食することによってシガテラが発生する。シガテラ毒素は非常に熱に強く、加熱調理によって無毒化することはできない。
  <食中毒症状> 食後、2〜30時間で、消化器系(下痢・吐き気・おう吐・腹痛等)、循環器系(徐脈(脈が遅くなること)・血圧低下等)、神経系(温度感覚異常(冷たいものに触れたときに電気的刺激のような痛みを感じたり、冷水を口に含んだときのピリピリ感(ドライアイスセンセーション))・関節痛・筋肉痛・かゆみ・しびれ等)の症状を示す。これらの症状のうち、神経系の症状は、重症になると、数か月から1年以上にわたって継続することもあるが、致死率は低い。
  <過去の食中毒原因食品> オニカマス、バラハタ、イッテンフエダイ、バラフエダイ等、熱帯・亜熱帯に生息する魚が多い。
  <対策> シガテラ毒素を蓄積した魚は、外見や味に異常は認められないため、シガテラを引き起こすと考えられる海域魚種の魚を摂取しないことが重要。

 

テトロドトキシン TTX:Tetrodotoxin 【最終更新日 2016年4月】

 フグ中毒の主な原因物質である。両生類のイモリ類、Atelopus属のカエル(ヤドクガエル類)、巻貝であるボウシュウボラ、バイ等、多様な生物に存在が確認されている。

  <特徴> 海洋の細菌によって産生されることが明らかにされており、食物連鎖によりフグの毒化が起こるとの説があるが、毒化のメカニズムは完全には解明されていない。
  <食中毒症状> 一般的には食後30分から5時間で始まり、頭痛、吐き気、唇の周りの痺れ等の症状が見られる。重症の場合、呼吸困難で死亡することもある。中毒症状は、臨床的に4段階に分けられている。
(1) 口唇部及び舌端が軽く痺れ、指先に痺れ、歩行が困難。頭痛や腹痛を伴うことがある。
(2) 不完全運動麻痺、おう吐後、運動不能になり、知覚麻痺、言語障害が顕著になる。呼吸困難を感じ、血圧降下が起こる。
(3) 全身の麻痺、骨格筋が弛緩し、発声困難となる。血圧の著しい低下、呼吸困難となる。
(4) 意識消失が見られ、呼吸が停止し、さらに心拍停止に至り、死亡する。
  <過去の食中毒原因食品> フグのほか、ボウシュウボラ、バイの喫食による中毒症例がある。
  <対策> フグの調理時の有毒部位(卵巣・肝臓等)の確実な除去。素人判断による調理を行わない。

 

敗血症 Sepsis 【最終更新日 2016年4月】

 体内に入った病原菌の感染による影響が全身に及んだ重い症状を引き起こした状態のこと。必ずしも細菌が血液中に無くても、細菌から出る毒素によって起こることもある。他の疾病と合併して起こることもある。敗血症の発生は、病原菌やその毒素の種類、感染する側の感受性免疫等の全身状態等の条件によって影響される。

 

アレルギー反応  Allergic Reaction 【最終更新日 2016年4月】

 生体が自己と外来の異物を認識する免疫学的反応が、生体に対して不利に働くこと。特に、食物の摂取により生体に障害を引き起こす反応のうち、食物に由来する抗原に対する免疫学的反応によるものを食物アレルギーと呼んでいる。免疫学的反応は、私たちの体の中で異物(抗原)が入ってくるとこれに対して防衛するため抗体が作られるというもので、その後の抗原の侵入に対して、この抗体が病気の発症を抑えることができる。アレルギーは、特定の異物(抗原)の侵入に対して過敏な免疫学的反応を起こし、様々なアレルギー症状が引き起こされる。中でも、最も重篤な症状(急激な血圧低下、呼吸困難又は意識障害等)を伴う急性アレルギー反応をアナフィラキシーショックといい、適切な処置が行われないと死に至ることもある。

 

感染経路  Route of Infection 【最終更新日 2016年4月】

 ヒトや動物が微生物等に感染する経路のことで、経口、経気道、経皮等がある。その他、輸血等による血液を介する経路(HIV、B型肝炎、C型肝炎等)もある。集団(群)においては、これらの経路が複合的に関与し、ばく露量や抵抗(免疫)力の違い、具体的には、集団の密度や感受性(年齢ほか)により、感染・流行の形態に大きな差が生じる。

 

交差汚染(二次汚染)  Cross-contamination 【最終更新日 2016年4月】

 調理済み食品が原材料と交わって、微生物等の病原因子によって汚染されること等を意味し、二次汚染ともいう。例えば、調理器具(包丁、まな板等)や人間の手を介して、ある食品(肉、魚等)から別の食品(野菜等)に微生物が移行する場合に用いる。また、食品・飼料製造の際、他の食品・飼料向けの原材料や汚染物質等が混入した場合にも用いられ、BSEでは、飼料工場等における反すう動物由来肉骨粉の交差汚染の防止が極めて重要な対策となっている。

 

D値、Z値、F値 D value:Decimal reduction value、 Z value、 F value 【最終更新日 2018年12月】

 食品を加熱殺菌する際の殺菌効果の指標値。

D値(分) D value:Decimal reduction value

 ある一定条件(温度等)において、特定の微生物の生残菌数を1/10に減少させるために要する加熱時間。微生物の熱抵抗性の指標になる。

Z値(℃) Z value

 加熱時間であるD値を1/10に短縮させるための温度の上昇分。

F値(分) F value

 加熱工程における特定の微生物の殺菌効果(加熱温度・間)について、121℃での殺菌に必要な加熱時間に換算したもの。
 容器包装詰加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)食品におけるボツリヌス菌の殺菌条件を設定する際に利用されている。

 

ID50 (50%感染量)  50% Infecting Dose 【最終更新日 2016年4月】

 細菌やウイルス等の定量法の一つで、多数の動物や培養組織に、感染性の微生物を含む検体を接種した場合に、全体の50%に感染させると推定される微生物等の量のこと。50%感染量ともいう。

 

人獣共通感染症(人畜共通感染症、動物由来感染症) Zoonosis 【最終更新日 2016年4月】

 自然条件下で、ヒトにも動物にも感染する感染症をいう。病原体はウイルス細菌、原虫、菌類、寄生虫と多岐にわたる。動物から人に感染するだけでなく、ヒトから動物に感染することもある。人獣共通感染症の中には、ヒトに対して感染力が強く動物に対しては弱いものやその逆のものがある。人獣共通感染症としては、インフルエンザ、狂犬病、サルモネラ症(ヒトでは食中毒)、リステリア症、ウエストナイル熱等、多数の疾病がある。

 

プリオン  Prion 【最終更新日 2018年12月】

 感染性を有するタンパク質様の病原体を意味する造語(proteinaceous infectious particles)で、牛海綿状脳症(BSE)鹿慢性消耗性疾患(CWD)やヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の原因物質とされている。
 ヒトや動物の体内にはもともと正常プリオンタンパク質が存在し、病原体である異常プリオンタンパク質が体内に侵入すると、正常プリオンタンパク質が異常プリオンタンパク質に変性する。両者のアミノ酸配列は同じであるが、立体構造が正常プリオンタンパク質ではαへリックス構造であるのに対し、異常プリオンタンパク質ではβシート構造になっていることが知られている。

 

牛海綿状脳症 BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy(定型BSE:Classical BSE) 【最終更新日 2016年4月】

 牛の病気の一つである。BSEに感染した牛では、異常プリオンタンパク質と呼ばれる病原体が主に脳に蓄積することによって、神経細胞が壊死し、空胞変性を起こし、脳の組織がスポンジ状になる。その結果、異常行動、運動失調等の中枢神経症状を呈し、死に至ると考えられている。
 牛から牛にBSEがまん延したのは、BSE感染牛を原料とした肉骨粉を牛の飼料として使っていたことが原因と考えられている。英国で異常プリオンタンパク質に高度に汚染された肉骨粉により多数のBSE感染牛が確認されていた時期における平均潜伏期間は、5年から5.5年と推測されている。その後汚染防止対策により発生は激減し、潜伏期間も長くなっている。現在のところ、生体診断法や治療法はない。国際獣疫事務局(OIE)の報告によれば、世界28か国で約19万頭(平成27年1月時点)のBSEが発生し、英国がそのほとんど(約18万5千頭)を占めている。我が国での最終発生は平成21年1月で、これまで36頭(平成27年1月時点)が確認された。
 近年、従来のBSEとは異なるBSE(非定型BSE)が確認されており、これらを明確に区別するため、従来のBSEを定型BSEという。

 

非定型BSE Atypical BSE 【最終更新日 2016年4月】

 定型BSEとは異なるタイプのBSE。
 ウエスタンブロット法の結果が、定型BSEとは異なるバンドパターンを示し、定型BSEに比べ、バンドの位置が高く検出されるH型と、低く検出されるL型とに大別される。
 非定型BSEについては、発生が極めてまれで、そのほとんどが8歳以上の高齢の牛であり、飼料規制等によってほぼ制御された定型BSEとは異なる孤発性の疾病である可能性が示唆されている。
 食品安全委員会では、平成24年10月に取りまとめた食品健康影響評価書において、非定型BSEに関しては、高齢の牛以外の牛におけるリスクは、あったとしても無視できると評価している。

 

クロイツフェルト・ヤコブ病 CJD:Creutzfeldt-Jakob Disease 【最終更新日 2016年4月】

 神経難病の一つで、抑うつ、不安等の精神症状から始まり、進行性認知症、運動失調等を呈し、発症から1年〜2年で全身衰弱・呼吸不全・肺炎等で死亡する。
 原因は、感染性を有する異常プリオンタンパク質と考えられ、他の病型を含めて「プリオン病」と総称される。
 CJDは世界中に広く分布し、日本では人口100万人に年間1人前後の率で発症するといわれている。原因不明で発症するものを孤発性CJDといい、プリオン病の約8割を占める。孤発性CJDの発症年齢は平均68歳で、男女差はない。
 一方、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant CJD:vCJD)は、ヒトの脳に海綿状(スポンジ状)の変化を起こすという点でCJDと似た病気だが、vCJDの方が若年者に発症が多いこと、経過が長い等、従来のCJDとは異なる特徴を有している。1996年に英国で報告されたのが最初であり、異常プリオンタンパク質に汚染された食品の摂取により感染したと考えられている。牛からヒトへの感染には種間バリアがあると考えられ、約18万5千頭のBSE牛が発生した英国では1996年以来、累計で177人(平成27年1月時点)のvCJD患者が確認されている。我が国においては、1人(平成27年1月時点)のvCJD患者が確認されているが、英国滞在時のばく露が有力な原因と考えられている。

 

鹿慢性消耗性疾患 CWD : Chronic Wasting Disease 【最終更新日 2018年12月】

 シカ科の動物の病気の一つで、牛海綿状脳症(BSE)と同様に、異常プリオンタンパク質が病原体と考えられている。
 CWDに感染した動物は、数年の潜伏期間の後、進行性の削痩(さくそう)、衰弱、流涎(りゅうぜん)等の症状を呈し、3〜4か月で死に至る。
 食品を介した経路も含め、病原体であるCWDプリオンが、人へ感染することを示す証拠はこれまでに確認されていない。
 2018年5月末現在、米国、カナダ、韓国、ノルウェー及びフィンランドにおいて発生が確認されているが、日本における発生は確認されていない。

(詳細)
 ファクトシート「鹿慢性消耗性疾患(CWD)」参照
 http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_cwd.pdf[PDF]別ウインドウで開きます

 

国際獣疫事務局(OIE)によるBSEステータス評価 Assessment on BSE status(OIE) 【最終更新日 2016年4月】

 OIEは、国際的な動物検疫の協調の一環として、BSEについて公衆衛生の視点も含めた各国のBSEリスクについてステータス評価を実施している。具体的には、OIE加盟国から提出されたデータに基づき、OIEの基準により加盟国のリスク等を評価し、各国を「無視できるBSEリスクの国」、「管理されたBSEリスクの国」、いずれも該当しない場合は「不明のリスクの国」として評価・分類し、毎年5月に開催されるOIE総会で決定している。平成25年5月28日、第81回OIE総会において、科学委員会の評価案のとおり、我が国は「無視できるBSEリスク」の国に認定された。

 

特定危険部位 SRM:Specified Risk Material 【最終更新日 2016年4月】

 BSEの原因と考えられている異常プリオンタンパク質が蓄積することから、食品として利用することが法律で禁止されている牛の部位のこと。我が国における特定危険部位(SRM)は、全ての月齢の牛の扁桃及び回腸遠位部(盲腸との接続部分から2メートルまでの部分に限る。)、30か月齢を超える牛の頭部(舌、頬肉及び皮を除く。)、脊髄及び脊柱を指す。
 なお、特定危険部位のうち、30か月齢を超える牛の脊柱を除いた部位は、法律で「特定部位」と定義され、焼却が義務付けられている。

日本における特定危険部位(SRM)

日本、EU域内、米国の特定危険部位(SRM)の範囲
  日本 EU域内 米国 OIE
SRM  【全月齢】
  ・扁桃
  ・回腸遠位部(盲腸と接合部分から2mの部分)
 【30か月齢超】
  ・頭部(舌、頬肉、皮を除く)
  ・脊柱(背根神経節を含む)
  ・脊髄
 【全月齢】
  ・扁桃
  ・腸
  ・腸間膜
 【30か月齢超】
  ・脊柱(背根神経節を含む)
 【12か月齢超】
  ・頭蓋(脳、眼を含み、下顎を除く)
  ・脊髄
 【全月齢】
  ・扁桃
  ・回腸遠位部
 【30か月齢超】
  ・脳
  ・頭蓋
  ・眼
  ・三叉神経節
  ・脊髄
  ・脊柱
  ・背根神経節
 (管理されたリスクの国の場合)
 【全月齢】
  ・扁桃
  ・回腸遠位部
 【30か月齢超】
  ・脳
  ・頭蓋骨
  ・眼
  ・脊髄
  ・脊柱

 

BSE(牛海綿状脳症)の検査法 Detection system of BSE 【最終更新日 2016年4月】

 BSEの原因と考えられている異常プリオンタンパク質がタンパク質分解酵素に耐性を持っている(正常プリオンタンパク質はこの酵素で分解される)ことを利用して、タンパク質分解酵素による処理を行った試料と行わない試料について、まずスクリーニング検査としてエライザ法を用いて検査を行う。陽性と判断された場合は、ウエスタンブロット法、免疫組織化学検査及び病理組織学的検査による確認検査を行い、専門家の確定診断により判定する。

 

肉骨粉(にくこっぷん) MBM:Meat-and-Bone Meal 【最終更新日 2016年4月】

 牛や豚等の家畜をと畜解体するときに出る、食用にならない部分をレンダリング(化製処理)した後、油脂を抽出し、その残渣を乾燥して作った粉末状のもの。タンパク質に富み、主に飼料や肥料として利用される。現在、牛から牛にBSEがまん延したのは、BSE感染牛を原料とした肉骨粉等の飼料を使っていたことが原因と考えられている。このため、OIEでは牛等の反すう動物を原料として作られた肉骨粉は反すう動物の飼料に使用してはならないとされ、我が国では交差汚染対策も考慮して、動物由来肉骨粉は反すう動物の飼料への使用が禁止されている。

 

フィードバン  Feed Ban 【最終更新日 2016年4月】

 特定の飼料の使用を禁止すること。BSE対策では、反すう動物に対し、肉骨粉等の使用を禁止することをいう。

 

高病原性鳥インフルエンザ Highly Pathogenic Avian Influenza 【最終更新日 2016年4月】

 鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスによる鳥類の感染症であり、抗原型からH1〜16、N1〜9の亜種に分類される。家畜伝染病予防法では、そのうち、急性の経過をたどり、罹病率、致死率ともに高いものを高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)とし、HPAIには該当しないがH5若しくはH7亜型のウイルスの感染によるものは、高病原性に変異する可能性が高く、低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)として、強制的な防疫措置の対象となる。
 我が国の現状においては、鳥インフルエンザが、食品を介して人に感染する可能性はないと考えられている。WHO(世界保健機関)によると、鳥インフルエンザウイルスは適切な加熱により死滅するとされており、一般的な方法として、食品の中心温度が70℃に達するよう加熱することが推奨されている。仮に、食品中にウイルスが存在したとしても、食品を十分に加熱調理して食べれば感染の心配はない。

鳥インフルエンザの病原性と亜型

 

レセプター(受容体、受容器) Receptor 【最終更新日 2016年4月】

 細胞表面や内部に存在し、細胞外の特定の物質(ホルモン・神経伝達物質・ウイルス等)と特異的に結合することにより細胞の機能に影響を与える物質の総称である。ホルモンが細胞に作用する際に特異的に結合するホルモン受容体や、ウイルスが細胞に進入する際に特異的に結合するウイルス受容体等がある。様々な種類のレセプターが存在し、種類ごとに結合できる物質も異なることから、「鍵穴」と「鍵」の関係に例えられる。

 

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