食中毒予防のポイント
毒キノコによる食中毒にご注意ください
平成24年9月26日公開
令和6年8月29日最終更新
(5.関連ページへのリンク先を更新)
秋になるとおいしい食べものが多く出回りますが、その中でもキノコは代表的な秋の味覚です。しかし、キノコによる食中毒事件も発生しており、ほぼ9割が、毎年、秋(9月から11月)に集中して起きています。
キノコによる食中毒の発生場所はほとんどが家庭であり、食用キノコと外見がよく似た毒キノコを間違って食べてしまうことが主な原因です。外見で毒キノコを見分けることは困難です。安易に採って食べたり、人にあげたりしないでください。万が一、野生のキノコを食べて体調に異常を感じたら、直ちに病院を受診してください。
1.キノコは「菌類」 意外に少ない食用キノコ
キノコはカビと同じ「菌類」に属しており、種ではなく「胞子」で増えていきます。また、キノコは葉緑素を持っていないため、光合成によってエネルギーを生産できません。このため、落ち葉などに自身の菌糸をめぐらせて、そこから栄養分を得てきています。そして、繁殖に必要な「胞子」を生産するため、菌糸の集合体である子実体を作ります。この子実体が「キノコ」と呼ばれているものです。 我が国には、正確な数はわかっていませんが、4,000から5,000種類ものキノコが存在しています。このうち、食べることができると言われているキノコは約100種類、対して食べると中毒となるいわゆる「毒キノコ」は食用の倍の200種類以上が知られています(林野庁)。残りの大半のキノコは、毒性の有無自体も分かっていません。 食べることができるキノコは意外に少ないのです。野生のキノコは安易に採って食べたり、人にあげたりしないようにしてください。
2.キノコ毒の特徴
キノコには、栄養成分とともに特殊な成分が含まれています。この特殊成分には有毒なものもあり、注意が必要です。関係省庁から出されている情報等も参考にして、毒キノコによる食中毒の発生を防ぎましょう。
キノコ毒による健康障害には、有毒成分によっておこる急性の中毒と有害成分によっておこる慢性又は潜行性の健康障害があります。
キノコ毒による中毒は、その作用別に消化器障害型、神経障害型、原形質毒性型の3つに分類されます。
消化器障害型は、消化器系に作用し、吐き気、おう吐、下痢などの症状を起こします。ツキヨタケ、クサウラベニタケ等で起こります。
神経障害型は、神経系に作用し、幻視、幻聴、知覚麻痺、激しい頭痛、めまいなどを起こすものです。テングタケ、シビレタケ等で起こります。
原形質毒性型は、様々な臓器や細胞に作用し、腹痛、おう吐、下痢から始まり、肝不全、腎不全、循環器不全の併発といった全身症状を呈して、死に至る場合もある、致死率が高いものです。カエンタケ、ニセクロハツ等で起こります。
また、有害成分によっておこる健康障害として、スギヒラタケの急性脳症が知られています。かつて食用キノコと考えられていたスギヒラタケは、腎機能障害を持つ人が食べると急性脳症を起こし、死に至ることがあることが2004年に分かりました。その後、腎機能に異常のない人でも発症が確認されています。
キノコ毒の主な作用やキノコの種類との関係は下表のとおりです。
作用など | 潜伏期間 ※ | 主な症状 ※ | 主な毒キノコ名 | |
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消化器障害型 | 20分〜2時間 | 吐き気、おう吐、下痢、全身の倦怠感 |
ツキヨタケ(PDF:191KB)、クサウラベニタケ(PDF:181KB)、カキシメジ、オオシロカラカサタケ(PDF:546KB)、ニガクリタケ(PDF:556KB) (特にツキヨタケ、クサウラベニタケの2種類で全キノコ中毒の半分を占める) |
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神経障害型(知覚及び神経系症状) | 副交感神経刺激型(ムスカリン様) | 10〜30分 | 激しい発汗、腺分泌の亢進、瞳孔縮小、除脈から血圧低下、重症では精神錯乱など発現し、呼吸困難を起こして意識喪失 | オオキヌハダトマヤタケ、アセタケ、クサウラベニタケ |
副交感神経麻痺型(アトロピン様) | 30分〜1時間 | 異常な興奮、流涎、散瞳、うわ言、錯乱状態、症状が進むと痙攣、筋硬直、意識不明 | イボテングタケ、テングタケ、ハエトリシメジ | |
中枢神経麻痺型(幻覚剤様) | 30分〜1時間 | 幻視、幻聴、知覚麻痺、めまい、言語障害、酩酊状態、重症では精神錯乱、筋弛緩が起こり意識不明 | シビレタケ、ヒカゲシビレタケ、オオワライタケ | |
末梢血管運動神経刺激型(肢端紅痛症) | 数時間以上 | 不快感、吐き気、しびれ感、全身倦怠感、数日後に手足末端が赤く腫れ、浮腫を起こし激痛 | ドクササコ(PDF:557KB) | |
ジスルフィラム型(アンタビュース様) (きのこを食べる前後にアルコールを摂取した場合にのみ発症) | 20分〜2時間 | 顔、首、胸が紅潮、激しい頭痛、めまい、おう吐、呼吸困難、不快感 | ホテイシメジ、ヒトヨタケ、スギタケ | |
原形質毒性型 (致死率が高い) | コレラ様症状、肝臓、腎臓障害型 | 6〜10時間以上 | 突然の腹痛、激しいおう吐、下痢(コレラ様の水溶性下痢が反復継続)、脱水症状、糖代謝異常または肝細胞の壊死、中毒末期には黄疸、中毒性腎炎から肝不全、腎不全、肝性脳症を併発して死に至る | ドクツルタケ(PDF:556KB)、シロタマゴテングタケ、タマシロオニタケ、テングタケモドキ |
溶血障害、心機能不全型 | 10〜30分 | おう吐、下痢、瞳孔縮小、背筋硬直、言語障害、血尿から心機能障害、意識不明 | ニセクロハツ(PDF:551KB) | |
毛細血管など循環器障害型 | 30分〜2時間 | 悪寒、腹痛、頭痛、激しいおう吐、下痢、喉の渇き、顔などの粘膜性びらん、脱毛、重症では腎不全、循環器不全、脳障害などの全身症状が現れ死に至る | カエンタケ(PDF:553KB) |
なお、表中※印の潜伏期間及び主な症状については、「薬学の時間(ラジオNIKKEI) キノコ毒による食中毒(2008年10月16日)山浦 由郎」から適宜追記した。
3.注意すべき毒キノコ
ツキヨタケ[PDF:191KB]
出典:厚生労働省ホームページ
初夏〜秋に、ブナなどの広葉樹の倒木や枯れ木などに多数重なり合って発生します。地域によっては、ツキヨ、クマベラ、ワタリ、ドクモタシ、ドクキノコ、ツキヨンダケ、ツキヨダケ、ドクアカリ、キカリキノコ、ヒカリダケ、ヒカリゴケ、クマベラ、コウズル、ブナタロウといった名前でも呼ばれています。食用のヒラタケ、ムキタケ、シイタケに、外見、色彩、サイズ等が酷似しているため、誤食による中毒がクサウラベニタケに並んで多く発生します。幼菌ではナメコとも混同されます。また、ムキタケとツキヨタケは同じ枯幹から発生していることもあるので注意が必要です。喫食後数時間(30分から3時間)で、おう吐、腹痛、下痢などの消化器系の中毒がみられます。主な有毒成分はイルジンS,イルジンM,ネオイルジンなどのイルジン類です。
クサウラベニタケ[PDF:181KB]
出典:厚生労働省ホームページ
夏から秋にブナ科(コナラ、スダジイなど)の林に群生〜単生します。地域によっては、アシボソシメジ、ウススミ、サクラッコ、ニタリといった名前でも呼ばれています。食用のウラベニホテイシメジ(同じ時期、同じ場所に生える)やナラタケと間違いやすいキノコです。喫食後20分から1時間程度でおう吐、下痢、腹痛などの消化器系の中毒がみられます。発汗など神経系のムスカリン中毒の症状も現れます。毒性成分は、ムスカリン、コリン、ムスカリジン、溶血性タンパクなどです。
※現在、各地で食中毒が発生しています。
スギヒラタケ[PDF:553KB]
出典:厚生労働省ホームページ 出典:厚生労働省ホームページ
晩夏から秋にかけてスギ、マツなどの針葉樹の倒木や古株に群生します。地域によっては、スギワカイ、スギワケ、スギカヌカ、スギカノカ、スギモタシ、スギミミ、スギナバ、シラフサ、ミミゴケ、オワケなどといった名前でも呼ばれています。かつて食用キノコとして知られていましたが、2004 年に腎機能障害を持つ人が喫食して急性脳症を発症する事例が相次ぎ、死亡例も報告されました。その後、腎機能に異常のない人でも発症が確認されたことから、腎機能が低下していない人も含め、スギヒラタケは食べないよう注意喚起が行われています。喫食後数時間から 31 日、平均9日で脚の脱力感やふらつきなどがみられ、さらに数日経つと、筋肉の不随意運動、麻痺や全身性の痙攣、意識障害を起こします。軽症の場合には回復しますが、重症の場合には脳浮腫が進行し、死に至ることがあります。毒性成分は不明ですが、スギヒラタケにはシアン、シアン多糖類、レクチン、脂肪酸類が含まれることが分かっています。
4.その他の毒キノコに関する情報
5.きのこに関する他省庁の関連ページへのリンク
6.野生きのこに関する放射性物質検査について
野生きのこについては、各都道府県等においてきめ細かく検査が行われており、その検査の結果は、次のホームページ等で公開 されておりますので参考にしてください。