【読み物版】 妊娠時に特に注意すること その1 平成28年1月22日配信

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 内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】

妊娠時に特に注意すること その1  平成28年1月22日配信
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赤ちゃんは、妊娠して2か月頃(7週)頃にお母さんといわゆる「へその緒」でつながり、4か月末(15週)頃には器官がほぼできあがります。赤ちゃんは、お母さんから栄養をもらって発育を続けます。
栄養ばかりでなく、有害なものもお母さんから受け取って赤ちゃんに影響を与えることがありますので、妊娠時に健康的な食生活を送ることはとても大切です。
今回のメールマガジンでは、妊娠中の方々に、知っておいていただきたいトピックをご紹介します。

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1. アルコール飲料
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妊娠中にアルコールを摂取した女性から生まれた子どもに、発育の遅れ、中枢神経の障害等を伴う異常がみられる場合があります(「胎児性アルコール症候群(FAS:Fetal Alcohol Syndrome)」)。妊娠中すべての期間で、飲酒しても胎児に影響が出ない安全なアルコールの量は明らかになっていません。また、アルコールがどのように作用してFASを引き起こすのかは十分に解明されていませんが、妊娠中にアルコールを摂取すると、FASのリスクが高くなることは分かっています。生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中の飲酒は避けてください。

≪参考≫食品安全委員会;妊婦のアルコール飲料の摂取による胎児への影響(ファクトシート) 
http://www.fsc.go.jp/sonota/54kai-factsheets-alcohol.pdf別ウインドウで開きます

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2. ビタミンA
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ビタミンAは、ヒトの視覚・聴覚等の機能維持、皮膚や粘膜の保持などに関与しています。不足すると、視覚障害などを起こすことが知られていますが、現在の日本の一般的な食生活であれば、ビタミンAが不足することは、ほぼありません。一方、健康食品などにより過剰に摂取すると、関節痛や皮膚乾燥などの慢性症状、催奇形性、骨粗しょう症がみられることが知られています。
妊娠3か月以内の方または妊娠の可能性のある女性は、健康食品やビタミンAを高濃度に含む食品を継続して多量に食べることで、過剰に摂取しないよう気をつけてください。


≪参考≫
・食品安全委員会 「健康食品」についての報告書及びメッセージ
http://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html
・食品安全委員会;ビタミンAの過剰摂取による影響(ファクトシート)
http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-vitamin-a.pdf別ウインドウで開きます
・国立健康・栄養研究所:ビタミンA解説(「健康食品」の安全性・有効性情報)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail171.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

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3. 大豆イソフラボン
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大豆イソフラボンは、大豆に含まれ、女性ホルモンに似た構造をもつ物質です。大豆自体は、長年食べられてきたもので、良質な植物性たんぱく質を含んでいます。(ただし、消化を阻害する物質が含まれていることから、生で食べることはできません。)
食品安全委員会では大豆イソフラボンのリスク評価を行っており、妊娠中の方が通常の食生活に上乗せして、サプリメントといった健康食品などで、この物質を摂取することは特段のメリットがないとされており、お勧めできません。
なお、フランスでは、乳幼児や、本人又は家族に乳がんの病歴のある人について、大豆たん白を主成分とする食品の摂取を制限すべきとしています。

≪参考≫食品安全委員会;大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
http://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html

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4. 葉酸
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葉酸は、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一つで、動物の肝臓、肉、卵、緑色野菜などの多くの食品に含まれています。妊娠初期における葉酸の不足は、胎児の神経管閉鎖障害につながる可能性があることが分かっています。そのため、妊娠初期の女性(妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3か月までの間)は、通常の食事からの摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から、1日400マイクログラム(※)を摂取するよう推奨されています(厚生労働省)。 
しかし、葉酸摂取を目的としてマルチビタミン製品を摂ることで、過剰摂取に注意すべきビタミンA等葉酸以外の成分を意図せずに取りすぎてしまう可能性があるため、選択に注意が必要です。

 

※400マイクログラムは0.4mg

≪参考≫
・厚生労働省;神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf別ウインドウで開きます(外部サイト)
・厚生労働省;日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf別ウインドウで開きます(外部サイト)

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5. 魚介類等に含まれるメチル水銀
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魚介類は、良質なタンパク質や、生活習慣病の予防、脳の発育に効果があると言われているEPA、DHA等の不飽和脂肪酸を多く含み、また、カルシウムを始めとする各種の微量栄養素の摂取源として健康的な食生活に不可欠な食品です。
一方、魚介類の体内には自然界の食物連鎖を通じて微量のメチル水銀が蓄積されています。厚生労働省が実施している調査によれば、平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるレベルではありません。ただし、一部の魚介類(キンメダイ、クロマグロなど)については、食物連鎖を通じた濃縮を経てメチル水銀濃度が比較的高いものもあります。このような魚ばかりを、毎日、多量に食べることは避けてください。

 

≪参考≫厚生労働省;これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/051102-2a.pdf別ウインドウで開きます(外部サイト)

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6. 病原微生物
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【トキソプラズマ】
トキソプラズマはネコなどのほ乳類、鳥類等に寄生する原虫です。
トキソプラズマに感染した豚肉を生又は加熱不十分な状態で食べた場合や、ネコなどの動物の糞尿の処理等、糞便中のトキソプラズマを摂取した場合にヒトへ感染します。
ヒトが感染すると、多くの場合は無症状で経過しますが、微熱が出る程度の軽い症状を示すことがあります。しかし、妊娠中に胎盤を経て胎児が感染すると、流産や死産を引き起こす原因となるだけではなく、生まれてくる赤ちゃんに脳や眼の障害が生じる場合があります。
感染を予防するためにも、豚肉は十分に加熱して食べてください。調理器具もよく洗い、熱湯をかけて消毒してください。また、土壌を触った後、又はネコなどの動物の糞尿を処理した後は、よく手を洗ってください。

 

【リステリア】
リステリアは、自然界に広く分布している細菌で、食中毒の原因菌の一つです。低温に強く、冷蔵庫内でも増殖することがあります。ヒトへの感染は、主にリステリアに汚染された食品の摂取からと考えられています。
感染してから症状がでるまでの期間(潜伏期間)が長いために、感染経路の特定が難しい場合も多いです。一般的には、健康な成人は感染しても軽い胃腸炎症状、発熱等を起こすか、無症状であることが多いのですが、髄膜炎や中枢神経症状を起こすこともあります。
妊娠中の感染では、胎盤を経て胎児が感染した場合には、早産や流・死産の原因になることがあります。また、生まれてくる赤ちゃんに中枢神経症状を伴う髄膜炎や水頭症、精神・運動障害などがみられる場合もあります。
リステリアは、通常の加熱調理条件(70℃程度)で死滅します。感染を予防するためにも、食べる前に食品を十分加熱することが大切です。また、冷蔵庫を過信せず、加熱せずにそのまま食べるような食品、例えば、生ハム、肉や魚のパテ、スモークサーモン、加熱殺菌していない生乳で作ったチーズ(国産の乳製品の原料は加熱された乳しか使用できません。)などは、気になる方は、妊娠中は避けた方が無難です。

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7. まとめ
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生まれてくる赤ちゃんとお母さん自身のために、妊娠時や妊娠の可能性がある場合の食生活において注意すべきことを確認してください。
一種類のものだけを食べ続けるなどの偏食をさけ、多様な食品を取り合わせて食べることが大切です。

 

≪参考≫
・食品安全委員会;お母さんになるあなたへ(令和2年6月19日更新)
http://www.fsc.go.jp/okaasan.html
・厚生労働省;食中毒に関する情報:妊産婦の方への情報提供について
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/06.html別ウインドウで開きます(外部サイト)


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