薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関する情報
令和7(2025)年11月4日更新
食品安全委員会では、家畜や水産動物への抗菌剤の使用により選択される「薬剤耐性菌」について、食品を介してヒトに伝播し健康に影響を及ぼす可能性について、科学的な知見に基づいたリスク評価を行っています。
薬剤耐性菌(AMR)対策推進月間
11月は薬剤耐性(AMR)対策推進月間です。ここ1年間の食品安全委員会の取組について紹介しま す。
食品安全委員会設立以降の取組についてはこちらをご覧ください。
2024年12月から2025年11月までの取組
- 農林水産省から評価要請されたホスホマイシンナトリウムを有効成分とする牛の注射剤(動物用医薬品)につ いて、薬剤耐性菌に関するワーキンググループにおいて審議を行い、評価結果を農林水産省に通知しました。また、家畜に使用するキノロン系合成抗菌剤について、ワーキンググループでの審議を開始しました。
- 養殖水産動物に動物用抗菌性物質を使用した場合に選択される薬剤耐性菌の食品健康影響評価の進 め方の検討の結果や、これまでの食品健康影響評価の経験から得られた知見及び国際的な動向等を 踏まえて、「家畜等への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関す る評価指針(評価指針)」を改正しました。
- 2024年2月にWHOが人医療上重要な抗菌剤リストの第7版を公表したことを受けて、「食品を介してヒトの健康に影響を及ぼす細菌に対する抗菌性物質のランク付けについて」を改正しました。
その他、食品健康影響評価技術研究において市販養殖魚における薬剤感受性を調査する等の研究を実 施するなど、調査・研究事業や国内外の関係機関との連携・協力を通じて、評価に必要な科学的知見・ 情報の収集に努めています。さらに、食品安全委員会の取組について、国民や海外への情報発信を行っ ているところです。
国内の関係省庁や、国際機関等の薬剤耐性に関する取組は薬剤耐性菌関連情報へのリンクをご覧くだ さい。
薬剤耐性菌とは
病原菌に感染した患者の治療に抗菌剤が使われます。抗菌剤は、菌の分裂を止めてしまう、菌のタンパク質合成や遺伝子の複製を阻害するなど、様々な作用で菌に働きます。これに対して、細菌も抗菌剤を分解する酵素を出したり、抗菌剤の作用部位を変化させて結合できなくするなどして抵抗(耐性化)します。このような耐性化により、抗菌剤の効きが悪いまたは効かなくなった細菌を、薬剤耐性菌といいます。
抗菌剤の使用により、抗菌剤に耐性化していない感受性の細菌が死滅する一方で、薬剤耐性菌が選択的に生き残り、増えることがあります。薬剤耐性には様々なメカニズムが存在しますが、薬剤の使用による選択圧は薬剤耐性の最大の誘導因子の一つです。不要な投薬を長期間続ける等の不適切な抗菌剤の使用は、薬剤耐性菌の問題を顕在化させます。
薬剤耐性菌と食品
抗菌剤は人だけでなく、動物の治療や、飼料中の栄養成分の有効利用のためにも使われています。
食品安全委員会では、家畜や水産動物への抗菌剤の使用によって選択される薬剤耐性菌について、畜水産物等の食品を介して、人に対する健康への悪影響が発生する可能性とその程度を、科学的に評価しています。
食品安全委員会設立以降の取組についてはこちらをご覧ください。
なお、薬剤耐性菌も細菌の一種です。食肉については、十分に加熱して食べることが食中毒対策としても大切です。
薬剤耐性菌の食品健康影響評価
薬剤耐性菌の食品健康影響評価では、家畜への抗菌剤の使用状況、家畜由来の細菌での薬剤耐性菌の発生状況など(発生評価)、家畜や水産物がどのくらい薬剤耐性菌に汚染されているかなど(ばく露評価)、抗菌剤の人医療での重要性や代替薬の有無など(影響評価)について、科学的なデータを用いて検証し、総合的にリスクの程度を推定します。
・薬剤耐性(AMR)のリスク評価に挑む(20周年企画コラム:松永和紀委員)(令和5年6月21日公開)
・家畜等への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する評価指針(令和7年3月25日一部改正) [PDF:624KB]
・食品を介してヒトの健康に影響を及ぼす細菌に対する抗菌性物質の重要度のランク付けについて(令和7年3月25日一部改正) [PDF:446KB]
・ハザードである薬剤耐性菌の考え方(令和4年2月7日薬剤耐性菌に関するワーキンググループ決定) [PDF:144KB]
[PDF:1,117KB]
これまでに評価した動物用抗菌剤
食品安全委員会では、これまでに、次の動物用抗菌剤についてリスク評価を行い、農林水産省に通知しています。
農林水産省では、各抗菌剤のリスクの程度に応じて、使用対象動物、使用量、使用時期等に関する基準を設定し、責任ある慎重使用を進めています。また、全国的なモニタリングにより、耐性率の推移について調査を行っています。
| 動物用医薬品 | 飼料添加物 | 動物用医薬品及び飼料添加物 |
|---|---|---|
| フルオロキノロン剤(牛及び豚用、鶏用) | モネンシシンナトリウム | 硫酸コリスチン |
| ツラスロマイシン製剤(豚用) | ノシヘプタイド | マクロライド系抗生物質 |
| ピルリマイシン製剤(牛用) | センデュラマイシンナトリウム | テトラサイクリン系抗生物質 |
| ガミスロマイシン製剤(牛用) | ラサロシドナトリウム | ビコザマイシン |
| セフチオフル製剤(牛及び豚用) | サリノマイシンナトリウム | スルフォンアミド系合成抗菌剤 |
| ツラスロマイシン製剤(牛用) | ナラシン | |
| フロルフェニコール製剤(牛及び豚用) | フラボフォスフォリポール | |
| 硫酸セフキノム製剤(牛及び豚用) | アビラマイシン | |
| ガミスロマイシン製剤(豚用) | エンラマイシン | |
| 酒石酸タイロシン製剤(蜜蜂用) | バージニアマイシン | |
| チルジピロシン製剤(豚用) | ハロフジノンポリスチレンスルホン酸カルシウム | |
| アミノグリコシド系抗生物質 | 亜鉛バシトラシン | |
| ホスホマイシンナトリウム製剤(牛用) |
・薬剤耐性菌に関する評価書は、食品安全関係情報データベースの評価書一覧(薬剤耐性菌)
でご確認ください。
食品安全委員会は、薬剤耐性菌に関するリスク評価の一層の推進や向上に向けて、2027年度までに実施する取組をまとめた行動計画を決定しました(2024年2月)。毎年度、その進捗状況をワーキンググループにおいて確認することとしています。
・薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画2023-2027[PDF:483KB]
・2023年度進捗状況の確認について[PDF:283KB]
・2024年度進捗状況の確認について[PDF:152KB]
2016-2020年の行動計画及びその成果は以下です。
・薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画2016-2020[PDF:389KB]
・薬剤耐性行動計画2016-2020の概要[PDF:469KB]
・2016年度進捗状況の確認について[PDF:283KB]
・2017年度進捗状況の確認について[PDF:280KB]
・2018年度進捗状況の確認について[PDF:138KB]
・2019年度進捗状況の確認について[PDF:145KB]
・2020年度進捗状況の確認について[PDF:152KB]
・薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画2016-2020 行動報告書[PDF:636KB]
薬剤耐性菌に関する用語集
- 薬剤耐性菌に関する主な用語の説明は薬剤耐性菌に関する用語集をご覧ください。
薬剤耐性菌関連情報へのリンク
- 国内の関係省庁や、国際機関等の薬剤耐性に関する取組は薬剤耐性菌関連情報へのリンクをご覧ください。
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