食品安全委員会の20年を振り返る

第1回 トランス脂肪酸〜リスク評価の意味を知ってほしい〜

2023年(令和5年)6月2日

食品安全委員会委員 松永和紀

 

  • トランス脂肪酸を多く食べると、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)の発症が増加する
  • 日本人の推定平均摂取量は、総摂取エネルギー量の0.31%。WHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満を下回り、通常の食生活では健康への影響は小さい
  • マーガリンなどの含有量は、近年大きく下がっている
  • 製品のトランス脂肪酸含有量を下げると、飽和脂肪酸が増える傾向がある。飽和脂肪酸も冠動脈疾患リスクを上げる
  • 栄養バランスのよい食事が、トランス脂肪酸対策となる
マーガリンの画像

突然ですが、SNSで「トランス脂肪酸」を検索してみてください。

危険、食べるプラスチック、日本は規制がなく野放し……。不安をかきたてる言葉がずらりと並びます。その多くが事実と異なり、科学的でない、と私は考えます。今、注意を強く向けるべきはトランス脂肪酸よりも飽和脂肪酸です。

内閣府食品安全委員会がトランス脂肪酸のリスクの大きさを検討し、今から11年前の2012年、評価書をまとめました。「日本人の平均的な摂取量では、健康への影響を見出せない」としています。私は当時、科学ジャーナリストとして評価書を読みました。トランス脂肪酸だけでなく、飽和脂肪酸についても実証、考察する内容に驚き、たくさんの記事を書きました。食品事業者も評価書をこぞって読んでいました。
一方で、一般の人たちや報道関係者向けのわかりやすい情報発信が足りない、と正直に言って感じました。やっぱり、食品安全委員会の情報発信は難解でした。

一般の人たちがあのとき、評価書の内容を把握し農林水産省が講じているリスク管理策を知ってくれれば、11年たった今、こんなにも大勢の人たちが依然としてトランス脂肪酸への不安や国への不信を抱えることはなかったのでは……。だれもがもっと適切に、トランス脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸摂取の問題点も踏まえて、食生活に気をつけることができたのでは……。
科学ジャーナリストをしつつ、食品安全委員会委員も務めるようになった今、当時を振り返ってそう思います。食品安全委員会の情報発信をなんとか改善しなければ、という思いが募ります。

食品安全委員会は、食品安全基本法が2003年7月に施行されたのと同時に発足しました。今年で20周年。その間に、トランス脂肪酸だけでなく、残留農薬や添加物、遺伝子組換え食品、食中毒の原因となる微生物など、3000件あまりの「食品健康影響評価」(リスク評価)を行いました。その科学的な判断が、農林水産省や厚生労働省などの規制や対策に活かされ、日本の「食品の安全」を支えています。しかし、残念なことにあまり知られていません。

2021年度に食品安全委員会が調査事業を行い、インターネットで約6000人を対象に行ったアンケートでは、4割の人たちが「食品安全委員会を知らない」と回答。「どんな機関であるかを含めて知っている」はわずか3.2%にとどまりました。
これではいけません。そこで、食品安全委員会のウェブサイトで、この20年に行ったリスク評価から主要なものをご紹介することにしました。食品安全委員会は、人々の食生活をより豊かで安全なものにするために、厳しくリスク評価を行ってきました。そして、最新の科学に基づき、これからもその活動を続けます。食品安全委員会を知ってください。

第1回で、トランス脂肪酸のリスク評価をご紹介します。

植物油の加工でできるトランス脂肪酸

食品中の多くの脂質は、グリセリンと脂肪酸が結合したトリグリセリドという形で存在し、体内で消化酵素によりグリセリンと脂肪酸に分解されます。脂肪酸にはさまざまな種類があり、多くは細胞を作るのに働いたりエネルギー源となったりします。しかし、中にはよくないものがあり、その一つがトランス脂肪酸です。

図1のように、脂肪酸は二重結合がない飽和脂肪酸と、二重結合がある不飽和脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸の中にトランス脂肪酸があります。食品に含まれる不飽和脂肪酸のほとんどはシス型。乳製品や肉などに天然のトランス型脂肪酸が含まれますが、その量はわずかです。ところが、液状の植物油を部分水素添加という加工により固形状の硬化油に変える際に、多量のトランス脂肪酸が生成します。また、植物油を脱臭処理する時にもできます。

図1 脂肪酸の分類
Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子。=が二重結合を表す。二重結合がある不飽和脂肪酸のうち、Hが同じ側にあるものをシス型、反対側にあるものをトランス型と呼ぶ。トランス脂肪酸にも多数の種類があり、図で示されているのはエライジン酸
出典:農林水産省ウェブサイト
図1 脂肪酸の分類

海外で話題となり、自主的に評価を開始

植物油の工業的な加工が始まって、一般の人たちのトランス脂肪酸摂取量は一気に増えました。トランス脂肪酸はヒトの体に必要ではなく、健康への悪影響が懸念されました。欧米では1990年代には、トランス脂肪酸による狭心症や心筋梗塞などの「冠動脈疾患」のリスクが指摘されるように。2003年に世界保健機関(WHO)は「食事からのトランス脂肪酸(水素添加油脂) 摂取を非常に少なくし、総エネルギー摂取量の1%未満とすべき」という勧告(目標)基準を定めました。また、油脂中の上限量を定めたり食品への含有量表示を義務化する国も出てきました。

日本でも2000年代に入ってから栄養学関係者や市民団体などの間で厳しい規制を求める声が高まりました。そのため、食品安全委員会は2009年度、自主的に日本人におけるトランス脂肪酸のリスクがどの程度なのかを判定する「リスク評価」を始めました。

リスク評価の基本ステップ

このあたりで、少しトランス脂肪酸から離れて、リスクを評価するとは具体的にどういう作業なのかを説明しましょう。

化学物質や微生物などは、そのものの持つ毒性の強さ(特性)と、それをどれくらいの量を食べるか、という二つの要素により、予想される健康への悪影響、つまりリスクの大きさが変わります。化学物質や微生物などリスクを招くものを「ハザード」と呼びます。「リスク評価」の基本ステップは、ハザードを特定し、その特性と摂取量(ばく露量)を評価し、そこからリスクの大きさを判定する、というものです (図2参照)。

穀物や野菜、肉など食品は、多種多様な化学物質や微生物、つまりハザードを含んでおり、それらがそれぞれに大小さまざまなリスクを内包しており、ゼロリスクの食品はありません。リスクがあるかないか、ではなく、「そのリスクはどの程度の大きさか」ということが重要です。食品安全委員会は、各ハザードについてリスクの大きさを検討し、許容できるレベルかどうかを判定しています。

トランス脂肪酸というハザードについても、食品安全委員会の中にある「新開発食品専門調査会」が計8回の審議を行い、日本人におけるリスクを評価しました。

図2 リスク評価の基本ステップ画像
図2 リスク評価の基本ステップ

摂取量を推定し「日本人のリスク」を評価

“日本人における”というところが重要ポイントであることにお気づきでしょうか。
この時点で、ハザードとしての特性については海外を中心に、研究がかなり進んでいました。トランス脂肪酸を多く食べた場合に冠動脈疾患の発症が増加するのは確実、と考えられました。また、肥満やアレルギー疾患とも関係がありました。妊産婦、胎児等に対しても健康への影響が考えられました。ただし、これらの影響はかなり多量のトランス脂肪酸を摂取している人たちにおいてみられるものでした。

そうなると、重要なのは「日本人がどれほどの量を食べているか」というばく露評価。ところが、こちらは当時、わずかな研究しかなく、よくわかっていなかったのです。
トランス脂肪酸は、食品製造時に意図して投入するものではなく、主に植物油を製造加工した時にできますが、製造方法によって生成量に大きな違いがあります。そのうえ、植物油を加工したさまざまな油脂製品が、多種多様な食品に原材料として使われており、その配合割合も千差万別。さらに、人がどの食品をどの程度の量食べるかも、人により大きく異なります。したがって、摂取量の推計は非常に難しいのです。

日本人の摂取はかなり少なかった

食品安全委員会はリスク評価を始める前の2006年度、「食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査」を行い、マーガリンやショートニング、菓子やパンなど約380点に含まれるトランス脂肪酸を測定しました。また、2010年度には「食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価情報に関する調査」も行いました。

このほか、食品産業を所管する農林水産省が2005〜07年度に行った製品調査結果、トランス脂肪酸に関連する国内外の論文、各国がリスク評価時に用いた調査結果、それに厚生労働省が実施している国民健康・栄養調査の2003〜07年の約3万人の食事摂取データなども基にして、食品安全委員会として日本でのトランス脂肪酸摂取量を推定しました。その主な結果が図3です。左のグラフは各年代の平均値、右のグラフは95パーセンタイル値です。パーセンタイルというのは、測定値を小さいほうから順番に並べ、何パーセントめにあたるかを示すことば。95パーセンタイル値というのは、100人いるとすると少ない数字の人から並べて95番めの人の摂取量、という意味。かなり多めの人たちです。

図3 トランス脂肪酸摂取量の年代別平均値 図3 トランス脂肪酸摂取量の年代別95パーセンタイル値グラフ
図3 トランス脂肪酸の年代別摂取量

平均的な日本人は、トランス脂肪酸を1日に0.67g、総エネルギーの0.31%、摂取していました(左のグラフ)。WHOの掲げる目標は「1%未満に」ですから、どの年代も大きく下回っています。
アメリカ人の平均摂取量は当時、2.2%とされていました。日本人の平均0.31%という数値は、リスク上昇を見出せないレベルです。

さらに、摂取量がかなり多めの95パーセンタイルの人たちでも、1〜6歳男児を除きWHOの目標値を下回っていることがわかりました(右のグラフ)。子どもの摂取量の多さが気になりますが、子どもは乳製品を多く食べ、乳製品には天然のトランス脂肪酸がわずかですが含まれますので、摂取量が多くなるのは避けられません。

通常の食生活では健康への影響は小さい

食品安全委員会は、評価書で「日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満であり、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さい」としました。ただし、脂質に偏った食事をしている個人においては、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えることがあります。また、「日本人での喫煙、糖尿病、高血圧などの主要な危険因子と比較すると、トランス脂肪酸による冠動脈疾患リスクはかなり小さい」とも記述しました。

ちなみに、図3、多くの人がなんとなく違和感を覚えるのではないでしょうか。
イメージとしては揚げ物たっぷりの男性がトランス脂肪酸を多く摂取しているはずなのに、女性の方が多いなんて!?
評価書は、日本の学生を対象とした小規模な調査結果にも触れています。女性がクッキーやケーキ、焼き菓子などを多く食べるため、トランス脂肪酸摂取の割合が多くなっている可能性があります。
クッキーの画像

飽和脂肪酸は、半数近くが摂り過ぎ

これらの結果、どう感じますか?
ひとまず安心。でも、トランス脂肪酸は体に有害、必須ではないのだから、気を緩めることなくできるだけ減らしたい。他国のように、製品の上限値を設定したり含有量表示を義務付けたりして、消費者の健康を守るべきだ……。

評価書が出た当時、そう考えた人が多かったようです。でも、話はそう単純ではありませんでした。評価書は、事業者がトランス脂肪酸を下げる努力をすると、国民の飽和脂肪酸摂取量が上昇してしまうかもしれない、という「トレードオフ」の関係も、しっかりと示していたのです。

脂肪酸には、図1のように不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は大事な栄養素です。しかし、摂り過ぎはダメ。摂り過ぎるとLDLコレステロールや中性脂肪を上げ、トランス脂肪酸と同じように冠動脈疾患リスクを上げる、とされています。「日本人の食事摂取基準2020年版」では、飽和脂肪酸の目標量は成人で7%以下、と定められています。
ところが、食品安全委員会がトランス脂肪酸と同じやり方で飽和脂肪酸の摂取量を推定したところ、日本人の摂取平均値は総エネルギー量の6.9 %に。各人を摂取量の順に並べたときに真ん中に位置する人の摂取量である「中央値」は6.6%でした。つまり、成人の半数近くが飽和脂肪酸の目標量を超え、摂り過ぎていることが明らかとなりました。

トランス脂肪酸を減らすと飽和脂肪酸が増える

食品安全委員会の2006年度と10年度の調査結果から、トランス脂肪酸の主な摂取源とみられるマーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどの製品で、トランス脂肪酸の含有量が下がり、飽和脂肪酸の含有量が増加する傾向がわかりました。

評価書ではその理由にまでは触れていないのですが当時、多くの事業者が、トランス脂肪酸のリスクを避けようと、トランス脂肪酸の多い部分水素添加油脂を、室温で固形の植物油であるパーム油(アブラヤシ油)に置き換えました。パーム油は、飽和脂肪酸を多く含みます。また、バターに置き換える動きもありましたが、バターも飽和脂肪酸が非常に多い食品です。ほかにもいくつかの理由があり、食品中の飽和脂肪酸が増えてしまったようです。

トランス脂肪酸だけを見ると、減る傾向は素晴らしい。でも、飽和脂肪酸の含有量は上がっている。しかも、日本で暮らす平均的な人はトランス脂肪酸をそれほど摂っておらず、でも、飽和脂肪酸は既に半数近くが摂り過ぎ。この状態で、トランス脂肪酸の低減に業界が突き進んだら、飽和脂肪酸摂取がさらに増えてしまうのではないか?

このトレードオフの関係は以前から、海外でも指摘されていたのですが、食品安全委員会が科学的根拠を基に摂取量を推定したことで、日本においては飽和脂肪酸問題がより深刻化しやすいことがはっきりと見えてきました。

「栄養バランスのよい食事」が結論

日本には、海外とは異なる食事や食文化があり、「他国が厳しくしているから、日本も……」では意味がない場合もあるのです。トランス脂肪酸はヒトに不必要なものですが、脂質自体は重要な栄養素でもあることから、食品安全委員会は評価書の中で、「脂質全体の摂取バランスにも配慮した、栄養バランスのよい食事を心がけることが必要」とまとめています。同時に、食品事業者に対して、引き続き食品中のトランス脂肪酸含有量の低減に努める必要がある、と伝えました。

食品安全委員会の審議は公開で行われました。評価書案は通常、国民の意見を聞く「パブリックコメント」を行い妥当な意見を内容に反映させます。17通の意見が寄せられ食品安全委員会が回答しました。その内容も、評価書の後に参考資料として付けられ現在も公開されています。

リスク管理機関も対策

日本は、食品安全行政において「リスクアナリシス」という仕組みで動いています(図4参照)。食品安全委員会は、「リスク評価」を行う機関です。その結果も受けて、農林水産省や厚生労働省、消費者庁などが、食品に規格基準を設定したり事業者を指導したりする「リスク管理」を行います。

図4 リスクアナリシス
食品安全委員会が科学的にリスク評価を行い、リスク管理においては各省庁が、対策コストや事業者が実行できるか、行政が事業者を監視できるか、というような科学でない要素も考慮し、実行する。リスク評価とリスク管理の際には、消費者や事業者なども含めた関係者間で情報や意見の交換を行う「リスクコミュニケーション」が求められる。これら3つの要素を合わせて、「リスクアナリシス」(リスク分析)と呼ばれる
図4 リスクアナリシス(リスク分析)

トランス脂肪酸は海外で大きな問題となっていたため、消費者庁が2011年、食品においてトランス脂肪酸の含有量を表示する際の指針をまとめていました。事業者が任意に表示するものと位置付け、その際には飽和脂肪酸、コレステロールも共に表示するなどの内容です。
2012年3月に食品安全委員会の評価書がまとめられた後も、一部の学会や識者などがトランス脂肪酸の食品表示の義務化を主張し、内閣府消費者委員会でも検討されました。しかし、食品安全委員会の評価結果なども詳しく検討し、やはり義務表示は求めないこととなりました。

マーガリンなど多くの市販品で低減

農林水産省はトランス脂肪酸について、事業者の自主的な改善を促すべく、精力的な調査と情報発信を続けています。農林水産省のウェブサイト内に、「トランス脂肪酸に関する情報別ウインドウで外部サイトが開きます」が作られているので、ご覧ください。調査から、製品のトランス脂肪酸含有量が下がっていることがわかっています。揚げ物や調理冷凍食品であっても、多くは「トランス脂肪酸ゼロ」という表示を許されるレベル(食品100 gあたり0.3 g未満)です。
消費者の関心の高い市販のマーガリンは、多くの製品で「トランス脂肪酸の低減に取り組んでいます」という表示がパッケージに記載されています。一部のメーカーは「トランス脂肪酸ゼロ」を表示できるレベルであることを公表しています。

ただし、現在の日本人の食生活におけるトランス脂肪酸の総摂取量は、わかりません。個々の製品の状況などから、おそらく総摂取量も下がっていることが見込まれます。「もうそろそろまた、総摂取量を推計して、問題ない状態かどうか改めて確認したい」という声が専門家から聞こえてきます。

飽和脂肪酸摂取は増えている

一方、飽和脂肪酸の摂取量については国立健康・栄養研究所が推定しており、2010年の摂取平均値が総エネルギー摂取量の7.15%だったのが、2019年は8.65%となっています。飽和脂肪酸は、肉や乳製品、植物油等に多く含まれます。体にとって一定量は必要ですので、多過ぎず少な過ぎず、というのはやはり難しい。こちらは、非常に心配な状況です。

挿絵:飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の天秤

飽和脂肪酸にもっと注目を


トランス脂肪酸は日本で、海外とは摂取状況が異なるのに引きづられて社会問題化し、依然として関心も不安も高く、一方で、飽和脂肪酸はあまり話題になりません。そんな現状は、好ましいとは言えないでしょう。食品安全委員会は2012年の評価書の段階で、両方をきちんと指摘し、「栄養バランスのよい食事」を提唱したのですが、「当たり前のことを言っていてつまらない」と受け止められてしまった面があります。

トランス脂肪酸の摂取量推定に尽力した佐々木敏さん(栄養疫学の専門家。昨年度まで東京大学大学院医学系研究科教授)が個人的に、興味深い指摘をしています。飽和脂肪酸は普通の食べ物に含まれていて、食べる人自身が摂取量に責任を負います。一方、トランス脂肪酸摂取は、加工製造する事業者のせい。「自分には甘く、他人には厳しい」という人間心理が、トランス脂肪酸をめぐる騒動、飽和脂肪酸の軽視につながっているのでは? と佐々木名誉教授は問うのです。

幸いなことに、事業者の多くはがんばっているようです。たとえば日本生活協同組合連合会や大手パンメーカー、マーガリンメーカーなどは、主な製品のトランス脂肪酸、飽和脂肪酸、コレステロール含有量を公表して、三つの低減に努めていることをアピールしています。
食品の安全を守るために、事業者の努力も活かすために、食品安全委員会はひたすら、中立公正な立場で科学的なリスク評価を行います。そして、人の心理も考えながら、わかりやすい情報発信に努めてゆきます。

<参考文献>