【読み物版】生活の中の食品安全−脂質との付き合い方−その2 平成30年6月29日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −脂質との付き合い方− その2]
平成30年6月29日 配信
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前号(6月15日配信)のe-マガジン【読み物版】では、脂質についての一般的な情報をお届けしました。今号では、脂質の中でも「トランス脂肪酸」に焦点をあててお届けします。
トランス脂肪酸は、多く取り過ぎると、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症等)のリスクを高めるなど、健康に悪影響を及ぼすことがわかっています。しかし誤解もあるようです。過剰摂取には留意が必要ですが、まずは正確な情報を入手することが大切です。

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1.トランス脂肪酸について
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●トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸は、脂質の構成要素である脂肪酸の一種です。
脂肪酸は、構造の違い(炭素と炭素が2つの手で繋がっている二重結合があるか無いか)によって、二重結合がある「不飽和脂肪酸」と二重結合が無い「飽和脂肪酸」に分けられます。トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸に含まれます。ちなみに、魚に多く含まれるEPAやDHAも不飽和脂肪酸の一種です。
さらに、不飽和脂肪酸は、「シス型」と「トランス型」に分けられます。二重結合の炭素にそれぞれ結びつく水素が、二重結合をはさんで同じ側にあるものがシス型、反対側にあるものがトランス型です。
このうち、孤立したトランス型の二重結合を持つものを「トランス脂肪酸」と呼んでいます。(共役二重結合をもつ脂肪酸は含めていません。)なお、トランス型はシス型よりも分解されにくいため、体の中に蓄積しやすい性質があります。
※詳しくはこちらをご覧ください。
・農林水産省:トランス脂肪酸
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/trans_fat.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

●どうやってできるの?
トランス脂肪酸は、大きく分けて、工業的に加工した植物油に由来するもの(加工段階で生成されるもの)と、牛などの反すう動物に由来するもの(天然に生成されるもの)があります。
工業的に加工した植物油に由来するものは、液体の植物油に、水素を添加して、固形の油脂を作る際に副産物として生成されます(こうして作られたものを「部分水素添加油脂(PHOs)」と言います)。また、脱臭のために油を高温で処理することがあり、この工程でも生成されます。
牛などの反すう動物に由来するものは、胃の中で微生物により生成されます。

●トランス脂肪酸を含む食品
主に、部分水素添加油脂を原料とするマーガリン、ファットスプレッド及びショートニング等や、これらを使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などがあります。

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2.人の健康に与える影響
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トランス脂肪酸(エライジン酸等)をとる量が多いと、血液中の脂質の一種であるLDL-コレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)(注1)が増える一方、HDL-コレステロール(いわゆる善玉コレステロール)(注2)が減る(LDL/HDL比が増加する)ことが報告されています。LDL/HDL比の増加は一般的に、動脈硬化症の危険因子と認められており、日常的にトランス脂肪酸を多く取り過ぎている場合には、少ない場合と比較して、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症等)のリスクが高まると考えられています。
なお、牛などの反すう動物に由来するトランス脂肪酸(バクセン酸)は、工業的に加工した植物油に由来するものに比べ、健康への影響は小さいと考えられています。

(注1)LDL-コレステロール:肝臓から体内の各部へコレステロールを運ぶ役割がある。コレステロールを血管壁に沈着させる原因の一つ。
(注2)HDL-コレステロール:細胞内に蓄積したコレステロールを除去し、細胞内へのLDLの取り込みを抑制する。

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3.国内外の摂取基準等
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米国では、本年(平成30年)6月18日から(一部を除く)、FDA(米国食品医薬品庁)が、トランス脂肪酸が含まれる部分水素添加油脂を、GRAS(従来から使われており安全が確認されている物質)の対象から除外し、食品に使用するためにはFDAの承認を新たに必要としました。
このFDAによる規制の対象は、トランス脂肪酸ではなく、部分水素添加油脂(PHOs)です。さらに、規制の内容は、使用禁止ではなく、これまではGRASとして食品に自由に使用できた部分水素添加油脂を、GRASの対象から除外する代わりに、改めてFDAに承認申請して認められれば使用可能とするものです。なお、反すう動物に由来するトランス脂肪酸は、今回の規制の対象外です。

WHO(世界保健機関)では、心血管系疾患のリスクを低減し、健康を増進するための目標として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー比1%未満に抑えるよう提示しています。

日本では、トランス脂肪酸の平均摂取量(エネルギー比)は0.31%で(米国は、1.1%)、大多数の人の摂取量はエネルギー比1%未満となっていること等から、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられます。
このため、特段の規制措置は不要と判断され、食品中のトランス脂肪酸について、表示の義務や含有量に関する基準値はなく、不飽和脂肪酸や飽和脂肪酸、コレステロール等の他の脂質についても、表示の義務や基準値はありません。
とはいえ、脂質全体についていえば、食生活の変化による摂取過剰が懸念されています。トランス脂肪酸だけを必要以上に心配せず、脂質全体の摂取量に十分配慮し、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

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4.トランス脂肪酸に関するQ&A
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Q 食品に含まれるトランス脂肪酸の量が減ったというのは本当ですか?
A 水素添加工程を工夫することなどにより、トランス脂肪酸の生成を抑えることができることから、食品製造事業者は自主的に低減に取り組んでいます。例えば、平成18・19年度と26・27年度の調査結果(平成18年度:食品安全委員会、平成19、26、27年度:農林水産省)を比べると、以下のとおり、食品中のトランス脂肪酸の含有量は、試料の採取方法や分析方法が異なるものの一部で低い傾向となっています。

※値は中央値(カッコ内は範囲)                   <単位:g /食品100g>

  平成18・19年 平成26・27年
  食パン  0.077  (0.029-0.32)  0.03  (0.02-0.15)
 クロワッサン  0.82  (0.29-3.0)  0.54  (0.22-2.6)
 菓子パン  0.27  (0.039-0.78)  0.18  (0.04-0.42)
 マーガリン  8.7  (0.36-13)  0.99  (0.44-16)
 ショートニング  12  (1.2-31)  1.0  (0.46-24)
 ショートケーキ  0.44  (0.4-1.3)  0.42  (0.21-1.2)
 デニッシュ  0.49  (0.41-0.98)  0.27  (0.08-3.1)

注: 測定した炭素数14,16,18,20,22のトランス脂肪酸のうち、H18・19時は、炭素数14のトランス脂肪酸は対象に含まれていない。

≪参考≫
・食品安全委員会:報道関係者との意見交換会「資料2:脂質の摂取〜トランス脂肪酸を理解するために〜」
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20180524ik1
・食品安全委員会:トランス脂肪酸の食品影響評価の状況について
http://www.fsc.go.jp/osirase/trans_fat.html
・食品安全委員会:「食べものについて知っておきたいこと」e-マガジン【読み物版】総集編(平成28年3月発行)
http://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/sousyuhen.html
・農林水産省:すぐにわかるトランス脂肪酸
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/別ウインドウで開きます(外部サイト)

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