【読み物版】生活の中の食品安全 -食中毒に気をつけよう- その2 2019年9月27日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −食中毒に気をつけよう− その2]
2019年9月27日 配信
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今号のe-マガジン【読み物版】は、前号に引き続き「食中毒に気をつけよう」です。
食品安全委員会が毎年行うモニター調査において、食品の安全性を考える際に不安を感じる程度の大きいものとして、多くの方が“有害微生物(細菌等)、ウイルス等による食中毒等”をあげており、ここ7年間は連続して第1位となっています。(※)
そこで今号では、例年、食中毒の患者数が多い「カンピロバクター(細菌)」と「ノロウイルス(ウイルス)」について、その特徴と家庭での食中毒予防の対策をご紹介します。
なお、この2つのハザードについては、昨年、リスクプロファイルも更新しております。こちらも併せてご覧ください。
※平成30年度食品安全モニター課題報告「食品の安全性に関する意識等について」(概要)P.3、4
http://www.fsc.go.jp/monitor/monitor_report.data/30kadai-gaiyou.pdf[PDF:1,364KB]別ウインドウで開きます

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1.カンピロバクター
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■特徴
カンピロバクターは、哺乳類や鳥類の消化管等に広く分布する細菌です。特に鶏の保菌率は、他の動物と比べて非常に高くなっています。食中毒の原因となる主な種類は、カンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリです。
5〜10%の酸素存在下でのみ増殖可能な細菌で、大気中では生存できません。乾燥や熱に弱く、また、生の鶏肉等の食材中で増殖することはほとんどありません。ただし、数百個程度の少量の菌数で症状を引き起こすことがあります。

■症状
汚染された食品を食べてから1〜7日(平均3日)で、主に下痢、腹痛、発熱等が認められ、多くは自然治癒します。予後は良好で、多くの場合は特別な治療を要しません。国内では、食中毒統計上、カンピロバクター食中毒による死亡例は報告がありません。(しかし、海外では、高齢者又は他疾患を併発している者で致死となった事例が報告されています。)
なお、菌に感染した数週間後に、手足の筋力が低下し、呼吸麻痺や顔面神経麻痺などを起こすギラン・バレー症候群を発症することがあるという報告があります。

■原因となる食品
食中毒の事例では不明の場合が多いのですが、判明したケースのほとんどは、生もしくは加熱不十分の鶏肉や鶏内臓の料理が原因です。厚生労働省によれば、実際にも市販の鶏肉から高い割合でカンピロバクターが検出されています(調査研究によって結果は異なりますが20〜100%の割合で検出)。このほか、生野菜などによる例もありますが、これらは、調理過程等における生の鶏肉等からの二次汚染が原因と考えられています。

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2.ノロウイルス
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■特徴
ノロウイルスは、ヒトの腸管で増殖するウイルスです。ノロウイルスによる食中毒の原因としてカキなどの二枚貝が知られていますが、これは、ウイルスを含むヒトの排泄物等が下水を介して河川や沿岸海水を汚染した結果、二枚貝の体内にウイルスが取り込まれ蓄積したものと考えられています(二枚貝やその他の食品中でウイルスが増殖することはありません)。
サイズがとても小さいウイルスで(30nm〜40nm)、少量(100個以下)でも症状を引き起します。また、乾燥に強く、ステンレススチールや陶器などの上でも長期間生存できる等の報告があります。このため、ノロウイルスによる食中毒は、二枚貝のほか、感染者のふん便や吐しゃ物から直接又は間接に汚染された食品によるものが多くあります。感染者から排出されたウイルスが人の手などを介して食品に付着したり、床などに残った感染者のふん便や吐しゃ物が乾燥し、そこに含まれるウイルスが飛散したりすることが原因と考えられます。

■症状
汚染された食品を食べてから24〜48時間程度で、主に下痢、おう吐、発熱及び腹痛が認められます。特におう吐は、突然強く起こることが特徴です。多くはこれらの症状が1〜2日程度続いた後に自然治癒し、後遺症はほとんどありません。また、感染しても発症しないケースもあります。しかし、乳幼児や高齢者等、抵抗力の弱いヒトでは重症化することもあるので、注意が必要です。
症状が治まった後も通常では1週間程度、長いときには1ヶ月程の間はウイルスを排出することがあることが報告されています。また、症状が出ないケースでも、感染した人はウイルスを排出すると報告されています。

■原因となる食品
食中毒の事例では約7割は原因が特定できていませんが、特定された原因の多くは、飲食店等で提供される料理又は仕出し弁当です。調理又は配膳の過程で、食品取扱者を介して汚染されたと考えられています。

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3.予防策
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カンピロバクターとノロウイルスによる食中毒を防止するために家庭でできる対策をご紹介します。それぞれの特徴の違いから細かい点は両者で異なりますが、共通することも多くあります。ポイントは清潔の保持と加熱の徹底です。ぜひ参考にしてください。
※下記( )内は主な対象:(カ)カンピロバクター、(ノ)ノロウイルス

『持ち込まない』(ノ)
▽日ごろから、体調を管理する
・感染しないよう健康管理に気を配るとともに、体調の把握に努める。
・おう吐・下痢等の症状があるときは、台所に入らない。調理を控える。

『ひろげない』(ノ)
▽清潔な手や調理器具で調理する
・万が一、台所にウイルスが持ち込まれた場合でも調理場内にひろげないよう、調理中は石けん等を用いてこまめに手を洗う。
・まな板・包丁などの調理器具もよく洗い、定期的に熱湯・台所用殺菌剤などを用いて消毒する。
※石けん自体にウイルスを直接失活させる効果はありませんが、石けんを使用し手の脂肪等を落とすことにより、ウイルスを手からはがれやすくする効果があります。

『つけない』(カ)
▽手や調理器具等は、こまめにかつ十分に洗浄する
・食事や調理の前、調理中に生肉や生の魚介類を触った後、トイレの後は、必ず手を洗う(2回洗うと効果的)。
・調理器具等は、熱湯で消毒して乾燥させるとより効果的。
▽生の鶏肉等が、生食するものや調理済みの食品に触れないようにする
・まな板や包丁は、例えば生肉用と野菜用など、食材ごとに用意して使い分ける。箸やトングなどは生肉等専用のものを用意し、生食するものや調理済みのものには使用しない。
・生の鶏肉等は洗わない。(表面に付着しているカンピロバクターが水と一緒に周囲に飛び散り、他の食品や調理器具を汚染するおそれがあります。)

『やっつける』(カ・ノ)
▽加熱可能なものは、十分に加熱する
・カンピロバクターは「中心温度75 ℃以上で1分間以上」加熱する。豚肉や鶏肉の場合であれば、調理品を切って、中心部の色の赤味がなくなっていることを確認する。
・ノロウイルスは「中心温度85〜90 ℃で90秒間以上」で加熱する。
▽調理器具は煮沸や塩素で消毒する
・一般的に、ノロウイルスにアルコールは効果がなく、煮沸消毒や次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200 ppm)による消毒が有効です。

<参考>
・「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル 〜鶏肉等におけるCampylobacter jejuni/coli〜」食品安全委員会(2018年5月)
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/180508CampylobacterRiskprofile.pdf[PDF:1,867KB]別ウインドウで開きます
・「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル〜ノロウイルス〜」食品安全委員会(2018年11月)
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/181120NorovirusRiskprofile.pdf[PDF:1,713KB]別ウインドウで開きます
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/181120NorovirusRiskprofile_betten.pdf[PDF:1,270KB]別ウインドウで開きます (別添資料)


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