食品安全委員会の基本姿勢

令和3年9月
食品安全委員会

「食品安全委員会の基本姿勢」をまとめるにあたって

内閣府食品安全委員会が創設(2003年7月1日)されてから18年が経過しました。創設のきっかけとなったBSE(Bovine spongiform encephalopathy;牛海綿状脳症)は発生しなくなり、食品安全に関する人々の認識や社会の状況は様変わりしています。人々の食生活はますます多様化し、何をどう食べ、どんな物質や病原微生物にどの程度ばく露されているのかを把握する必要が、リスク評価の上でますます重要となってきています。科学の進歩は著しく、新知見が報告され、数理モデルの利用など新しい評価法が開発されてきました。

そこで、食品安全委員会は18年の軌跡を振り返り、今後の食品安全委員会の活動がどうあるべきか、「リスクアナリシス」の枠組みの中であらためて確認しました。

以下に「食品安全委員会の基本姿勢」として示します。

 

食品安全委員会の基本姿勢

食品安全委員会は、食品の安全性確保において国民の健康保護が最も重要であるという基本的認識のもとに、リスク評価およびリスクコミニュケーションを行う。

1.リスク評価

食品安全委員会は、食品の安全性を確保するために科学的にリスク評価を行う。食品安全委員会は、利用可能な最新の科学的知見に基づき、科学的判断のもとで適切に、一貫性、公正性、客観性および透明性をもってリスク評価を行い、評価内容を明確に文書化する。

食品安全委員会によるリスク評価は、国際的リスクアナリシスにおける構成要素のひとつであるリスク評価の4つの段階、すなわちハザード(危害要因)の特定、ハザードの特性評価、ばく露評価およびリスクの判定に基づく評価を基本とする。摂取する食品の種類や量等は国による違いがあることから、リスク評価は我が国の現状を考慮した現実的なハザードの摂取(ばく露)の状況に基づき行う。

2.リスク管理者との関係

食品安全委員会は、リスク評価を、リスク管理と機能的に明瞭に分離し、独立性を確保しつつ行う。

リスク管理者からの諮問に応じてリスク評価を行う場合には、リスク管理者は、リスク評価者を含むステークホルダーと協議した上で、リスク評価方針を制定することとなっている。この手続の目的は、リスク評価が系統的で、欠けたところがなく、公正であって透明性の保たれたものとなるよう保証することである。食品安全委員会は、このリスク評価方針に沿って、リスク評価の範囲や目的を明確に示す。

適切なリスク評価に基づいて行われるリスク管理措置によって、食品を摂取することによる国民の健康への悪影響が未然に防止されることを目指す。

3.リスクコミュニケーション

食品安全委員会の行うリスク評価や発信する情報は、国民の食品に対する理解やよりよい行動変容に貢献する内容とすべきである。食品安全委員会は、フードチェーンの各段階において関わる全てのステークホルダーと科学的な情報を共有し、意見を交換し、その結果を必要に応じて活動に反映させる。

4.国際協調

グローバル化する社会において「日本独自」は通用しない。したがって、食品安全委員会は、リスク評価やリスクコミュニケーションにおいては、コーデックス委員会へ科学的助言を行う国際的リスク評価の専門家会議等(例えば、JMPR、JECFA、JEMRAなど)やリスク評価機関(EFSA、BfRなど)で実施された人の健康保護に関する情報を考慮する。

海外の食品のリスク評価機関と情報や意見を交換し、日本からも食品のリスク評価に関する情報発信や国際的な食品のリスク評価への貢献を進める。

5.緊急時における対応

食品を摂取することにより国民の健康に係る重大な被害が生じた場合、あるいは生ずるおそれがある緊急の事態において、食品安全委員会はステークホルダーが適切に対処できるよう、速やかに保有している科学的な情報を提供する。