【読み物版】生活の中の食品安全  -ノロウイルスによる食中毒について- その1 2019年11月22日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −ノロウイルスによる食中毒について− その1]
2019年11月22日 配信
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今号のe-マガジン【読み物版】は、ノロウイルスによる食中毒についてです。
ノロウイルスは、わが国の食中毒原因の上位を占めるウイルスです。ノロウイルスによる食中毒は一年を通じて起こりますが、winter vomiting bug(冬におう吐を起こす虫)と呼ばれることもあるように、特に冬場に多く発生しています。そこで、本格的な冬の到来の前に、食品安全委員会が昨年更新したノロウイルスのリスクプロファイルの中から、食中毒予防に関する情報を今号と次号の2回に分けてお届けします。食品安全委員会が行った食品安全モニターを対象とした調査においても、ノロウイルスによる食中毒について、まだ十分には知られていないことがありました。ぜひ参考にしてください。

※ノロウイルスのリスクプロファイル(2018年11月)
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/181120NorovirusRiskprofile.pdf[PDF]PDFファイルを別ウインドウで開きます
http://www.fsc.go.jp/risk_profile/index.data/181120NorovirusRiskprofile_betten.pdf[PDF]PDFファイルを別ウインドウで開きます(別添資料)
※平成30年度食品安全モニター課題報告「食品の安全性に関する意識等について」
http://www.fsc.go.jp/monitor/monitor_report.data/30kadai-gaiyou.pdf[PDF]PDFファイルを別ウインドウで開きます

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1.ノロウイルスとは
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■特徴
ノロウイルスはヒトの腸管で増殖するウイルスです。とても小さいウイルスで(30 nm〜40 nm)、少量(10〜100個程度)の感染でも症状を引き起こします。乾燥状態に強く、水中でも長期間生存し、凍結にも耐性があるとされています。感染力の強さから、食中毒や感染性胃腸炎の集団発生をしばしば引き起こします。

■食中毒の症状
感染してから発症するまでの潜伏期間は、一般に24〜48時間程度です。
主な症状は、下痢、吐き気、おう吐及び腹痛で、特におう吐は、突然強く起こることが特徴です。発熱を伴うこともありますが、多くは軽度です。通常、これらの症状が1〜2日程度続いた後に自然治癒し、後遺症はほとんどありません。しかし、乳幼児や高齢者等、抵抗力の弱いヒトでは重症化することもあるので、注意が必要です。なお、不顕性感染といって、感染しているにも関わらず症状が出ない場合もあります。

感染者は、症状が治まった後も、長いときには1ヶ月程の間ウイルスを排出することや、不顕性感染の場合も同様に、長期にわたってウイルスを排出することが確認されています。

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2.発生状況
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■事件数と患者数
厚生労働省の食中毒統計調査によると、2018年の場合、ノロウイルスによる食中毒の年間事件数は256件(総数1,330件の約2割)、患者数は8,475人(総数17,282人の約5割)です。患者数の総数に占める割合が、事件数のそれに比べて高いことから、1件あたりの患者数が多いことが分かります。

■発生時期
年間を通じて見られるものの、11月くらいから件数が増加しはじめ、翌1月を中心に12月〜3月頃までは多い時期が続く傾向があります。

※厚生労働省「食中毒統計調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html別ウインドウで外部サイトが開きます

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3.原因食品と感染経路
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これまでは、ノロウイルスを保有するカキなどの二枚貝を、生又は加熱不十分な状態で食べることが原因として知られていました。しかし最近は、パン、きざみのり等の摂食を原因とする大規模食中毒事例に代表されるように、調理や配膳等の過程で、ウイルスに感染したヒトの手指等を介して汚染された食品が原因と考えられる事例が多く発生しています。

感染経路には、以下のようなものがあると考えられています。なお、食品を介した経路(食中毒の経路)のほかに、ヒトからヒトへと直接感染する感染症としての経路もあります。たとえ食品を介さない感染であっても、調理従事者が罹患した場合はそこから食中毒発生へとつながる可能性があるため、併せてご紹介します。

●汚染されている食品の摂食
・二枚貝(カキ等)がノロウイルスを保有(※)。それらを、生あるいは十分に加熱調理せずに食べて感染。
※二枚貝は、プランクトン等を食べるために海水を体内に取り込みます。この海水がノロウイルスに汚染されていた場合、海水と一緒にウイルスが貝に取り込まれ、体内に蓄積されると考えられています。
なお、厚生労働省が定めた生食用カキの加工基準では、ノロウイルスの有無を調べることにはなっていません。

●ヒトの手指等を介して汚染された食品の摂食
・ノロウイルスに感染した食品取扱者(食品の製造従事者、飲食店や家庭での調理従事者等)の手指等を介してウイルスが食品に付着。それを食べて感染。

●ヒトからヒトへの感染
・ノロウイルスが大量に含まれる感染者のふん便やおう吐物がヒトの手指等に付着。手指等を介して経口で感染。
・感染者のおう吐物が周囲に飛散。この飛沫を吸い込んで感染。
・感染者が排出したノロウイルスが乾燥して空中を浮遊。これを吸い込む、付着したものに接触するなどして感染。

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4.予防策
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ノロウイルスによる食中毒の予防策として、以下のことが考えられます。
◆ウイルスを『持ち込まない』
日ごろから、体調を管理する
・感染しないよう健康管理に気を配るとともに、体調の把握に努める。
・おう吐・下痢等の症状があるときは、台所に入らない。調理を控える。

◆ウイルスを『つけない』、『ひろげない』
清潔な手や調理器具で調理する
・万が一、台所にウイルスが持ち込まれた場合でも調理場内にひろげないよう、調理中は石けん等を用いてこまめに手を洗う(※)。
・まな板・包丁などの調理器具もよく洗い、定期的に熱湯・台所用殺菌剤などを用いて消毒する。
※石けん自体にウイルスを直接失活させる効果はありませんが、石けんを使用し手の脂肪等を落とすことにより、ウイルスを手からはがれやすくする効果があります。

◆ウイルスを『やっつける』
加熱可能なものは、十分に加熱する
・中心温度85〜90 ℃で90秒間以上加熱する。
・調理器具は煮沸や塩素(※)で消毒する。
※一般的に、ノロウイルスにアルコールは効果がなく、煮沸消毒や次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200 ppm)による消毒が有効です。

次号(2019年11月29日配信予定)では、昨年公表したリスクプロファイルから、「現状の問題点」と「今後の課題」をご紹介します。

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