【読み物版】生活の中の食品安全 -ボツリヌス症について- その1 平成31年1月11日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −ボツリヌス症について− その1]
平成31年1月11日 配信
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今月のe-マガジン【読み物版】は、ボツリヌス症についてです。発症すると重篤となることもあり、十分な注意が必要です。今号ではボツリヌス症の概要を、次号(1月25日発行予定)ではQ&Aをお伝えします。

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 1.ボツリヌス症とは?  
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ボツリヌス症は、ボツリヌス菌等が産生するボツリヌス毒素が引き起こす病気です。ボツリヌス菌は、土壌・河川・海洋に広く存在しており、生育には酸素の無い環境を好みます。生育環境が悪くても、芽胞(※1)を形成し長く生き延びるので、注意が必要です。
ボツリヌス症にはいくつかの型がありますが、食品と関連が深いものは「乳児ボツリヌス症」と「ボツリヌス食中毒(食餌性ボツリヌス症)」等です。
特に注意が必要なのは、「乳児ボツリヌス症」で、ボツリヌス菌に汚染されたハチミツなどを乳児(1歳未満)が食べると、腸管内で菌が増殖し、そこで産生された毒素が吸収されて発症します。主な原因食品はハチミツとハチミツを含んだ食品です。
「ボツリヌス食中毒」は、食品中で菌が産生する毒素を食品と共に摂取することで起こります。様々な食品が原因となる可能性がありますが、保存食品や発酵食品での食中毒事例があります。

(※1)芽胞:特定の菌が作る細胞構造の一種。生育環境が増殖に適さなくなると菌体内に形成されます。加熱や乾燥等の過酷な条件に対して強い抵抗性を持ち、発育に適した環境になると、本来の形である栄養細胞となって再び増殖します。

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 2.どんな症状なの?
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【乳児ボツリヌス症】
潜伏期間は、明確になっていませんが、3〜30日間と推定されています。便秘で気づくことが多く(多くは3日以上持続)、脱力状態になる、ほ乳力が低下する、泣き声が小さくなる等の症状が出ます。脳神経まひによる眼けん下垂、首や体幹部・上下肢等のまひや筋肉の緊張の低下等が進み、横隔膜にまひが及ぶと人工呼吸器が必要となります。2017年2月の症例では、離乳食として市販のジュースにハチミツを混ぜたものを飲んでいた生後5か月の乳児が発症し死亡しています。

【ボツリヌス食中毒】
潜伏期間は、一般には8〜36時間とされています。初期症状としては、吐き気やおう吐、下痢等の消化器症状があります。次いで、特有の神経まひ症状がみられるようになります。その多くは、めまい・頭痛を伴う全身の違和感や、視力低下・かすみ目等の眼症状で、これらと前後して口が渇く、飲み込みにくい等の咽喉部のまひが認められます。更に病状が進行すると、腹部の膨満・便秘・尿閉(※2)・著しい脱力感・四肢のまひがみられるようになり、重症の場合は呼吸困難に陥って死に至ることがあります。

(※2)尿閉:膀胱に尿がたまっているのに排尿できないことです。

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 3.どんな治療をするの?
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【乳児ボツリヌス症】
治療は対症療法です。呼吸管理等に伴う合併症がなければ予後は良好とされていますが、腸内で菌が増殖するため、回復後も数か月間は便とともに菌が排出されます。

【ボツリヌス食中毒】
抗毒素療法と対症療法を行います。日本では、1962年に抗毒素療法が導入されて以降、致死率がそれまでの約30%から約4%に低下しています。

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 4.予防するには?
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ボツリヌス菌は土壌などに広く分布していることから、食品原材料そのものの汚染を完全に防止することは困難です。したがって、予防には、菌の性質を知って、食品中での発芽・増殖を抑制することが重要です。ボツリヌス菌は、3℃未満又は水分活性(※3)0.94未満、又、高い酸性(<pH4.6)の環境では増殖や毒素の産生ができません。

【乳児ボツリヌス症の予防策】
1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌に汚染されるおそれのあるハチミツやハチミツ入りの食品等を与えてはいけません。なお、1歳以上の方にとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません。

【ボツリヌス食中毒の予防策】
野菜・果物等の原材料を十分に洗浄すること、冷蔵や冷凍で保存すること、発酵食品(保存食)や自家製瓶詰ではpHの調整を行うこと等です。ボツリヌス菌の芽胞には熱に非常に強いタイプがあり、加熱では死滅しないこともありますが、産生する毒素は熱にそれほど強くありません。そのため、食べる前の十分な加熱は、ボツリヌス食中毒の予防に有効です(※4)。また、缶詰や瓶詰、真空パック等では、膨らんでいたり異臭がしたりするものは食べないようにすることも重要です。

(※3)水分活性(Aw):微生物が利用できる水が、食品中にどのくらい入っているかの目安となる数値です。0〜1で表され、水は1となります。
(※4)80℃で20分間、又は100℃で1〜2分間の加熱で不活化されます。

≪参考≫
・食品安全委員会「ファクトシート ボツリヌス症」(2018年2月13日更新)
http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_10botulism.pdf別ウインドウで開きます
・厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

●次号(平成31年1月25日配信予定)では、ボツリヌス症に関するQ&Aをお届けします。

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