【読み物版】生活の中の食品安全−脂質との付き合い方−その1 平成30年6月15日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −脂質との付き合い方− その1]
平成30年6月15日 配信
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今月のe-マガジン【読み物版】は、脂質との付き合い方についてです。
脂質は、ヒトの体にとって非常に大事な役割を果たしており、少なすぎても多すぎても健康に悪影響を及ぼす可能性があります。今号では、体内に吸収されるしくみもまじえて、脂質の健康への影響についてご紹介します。

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1.脂質とは
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いわゆる「あぶら」には、常温で液体のあぶら(油)と固体のあぶら(脂)があり、まとめて「油脂(ゆし)」と呼んでいます。油脂は、脂肪酸やグリセロール(グリセリン)からできています。脂肪酸やグリセリド(脂肪酸とグリセロールが結びついたもの)、コレステロールなどをあわせて「脂質」と呼んでいます。

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2.脂質の働き
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脂質は体にとって重要な栄養素です。炭水化物・タンパク質とともに「三大栄養素」と呼ばれ、主に次のような働きがあります。
・体にとってのエネルギー源となる。
エネルギー源といえば、炭水化物もありますが、炭水化物はいわば即戦力であるのに対し、脂質は予備的に蓄えられたエネルギーで、必要に応じて消費されます。
・身体の機能を正常に保つ働きがあるビタミンAやビタミンDなどの吸収を助ける。
・体温を維持したり、外部からの衝撃に対する壁となって内臓を守る。

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3.体内に吸収されるしくみ
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栄養素を体に吸収するには、その分子としての大きさ(分子量)を取り込み可能なサイズにまで小さくする必要があります。
まず食べ物は、口の中で噛み砕かれて胃に送り込まれます。胃で2〜4時間ぐらいかけて消化され、おかゆのような状態になります。その後、十二指腸や小腸でも、口や胃のように、消化酵素の働き等によってさらにサイズが小さくなり、小腸の腸管壁を通って体内に吸収されます。
ところで、栄養素には、水に溶ける性質(親水性)のものと、油に溶ける性質(親油性)のものがあります。脂質は親油性です。
小腸の腸管壁を通って体内に吸収されるとき、親水性の栄養素は、基本的には体に必要な成分が必要な量だけ吸収されます。一方で、親油性の栄養素は、質や量に関係なく吸収されやすい性質をもっています。

代表的な脂質の1つであるトリグリセリド(いわゆる中性脂肪)を例にとってみます。トリグリセリドとは、1つのグリセロールに3つの脂肪酸が結合したもので、親油性が大きくほとんど水に溶けません。
体に吸収されるまでの大きな流れとして、トリグリセリドは、まず、消化酵素(リパーゼ)によって、中鎖脂肪酸(注1)、長鎖脂肪酸(注2)及びモノグリセリド(注3)に分解されます。
その後、中鎖脂肪酸は、そのまま小腸で吸収され、門脈系と呼ばれる血管の経路で、直接、肝臓(体にとって良いものか悪いものかを判断する関所)に運ばれ、効率よく分解されてから、全身へ運ばれエネルギーになります。
一方、長鎖脂肪酸とモノグリセリドは、胆汁酸のはたらきによって、リン脂質やコレステロールといったその他の脂質とともに、水にも油にもある程度なじむ性質をもつ形(ミセルと言います)になり、小腸で吸収された後、再び合成されます。その後、リンパ系と呼ばれるリンパ管の経路ですぐに全身へ運ばれ、脂肪組織や筋肉組織、肝臓に貯蔵され、必要に応じて分解されます。こちらは、関所である肝臓を先に通らないため、体に留まりやすくなります。
(注1)中鎖脂肪酸:脂肪酸のうち、炭素数が8個〜12個くらいのもの
(注2)長鎖脂肪酸:脂肪酸のうち、炭素数が14個〜20個くらいのもの
(注3)モノグリセリド:1つのグリセロールに、1つの脂肪酸が結合したもの

※詳しくはこちらをご覧ください。
報道関係者との意見交換会
資料2:脂質の摂取〜トランス脂肪酸を理解するために〜 P9
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20180524ik1

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4.健康への影響は?
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ヒトは、体にとって必要な脂質を食事から摂取しています。
脂質である脂肪酸のうち、リノール酸やα-リノレン酸などの必須脂肪酸は、生命の維持に不可欠で、体内で作ることができないため、食事からとる必要があります。
また、油に溶けやすい栄養素(ビタミンA、Dなど)は、油と一緒に摂取することで体内に吸収されやすくなります。極端な低脂質食は、これらの吸収を悪くするおそれがあります。
しかし、脂質は一般に、いったん体に入るとどこかに留まりやすく、また、体外に出ていくのにも時間がかかります。そして、取り過ぎると、肥満・高脂血症・高血圧などのリスクが高まる可能性があります。

このように、脂質は、摂取量が少なすぎても多すぎても健康に悪影響を及ぼす可能性があります。脂質全体の摂取量に十分配慮して、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

≪参考≫
・食品の安全を守る賢人会議編著:「食品を科学する〜意外と知らない食品の安全〜」(第1版)(大成出版社)
・農林水産省:すぐにわかるトランス脂肪酸
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/別ウインドウで開きます(外部サイト)
・農林水産省:脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/別ウインドウで開きます(外部サイト)

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