【読み物版】生活の中の食品安全−アニサキスによる食中毒について−その1 平成29年9月15日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全 −アニサキスによる食中毒について− その1]
平成29年9月15日配信
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今月のe-マガジン【読み物版】は、魚介類に寄生する「アニサキス」による食中毒についてお送りします。アニサキスは、サバ、サンマ、イカなどの魚介類に寄生しており、寄生している魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含む)で食べると、胃や腸壁に侵入して食中毒をおこすことがあります。アニサキスによる食中毒はどのようなものなのでしょうか。

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1.アニサキス症ってなんだろう
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■アニサキスとは
アニサキスは、もともとクジラやイルカなどの海産哺乳類の胃の中で成虫となる寄生虫です。クジラなどのフンと共に排出された卵が海中で孵化し、オキアミと呼ばれるプランクトンに食べられ、その体内で幼虫に成長します。サバ、サンマ、イカなどの魚介類には、この幼虫が寄生したオキアミを捕食することによって寄生します。魚介類に寄生した幼虫は、長さ2〜3cm、幅0.5〜1mmの白い糸のように見えます。

■アニサキス症とは
アニサキスの幼虫は、ヒトの体内では成虫にはなれません。そのため、アニサキスの幼虫が寄生した魚介類を生で食べても、通常、幼虫は排泄されます。しかし、まれにヒトの胃や腸壁に侵入して食中毒を引きおこします。これをアニサキス症と言います。侵入した部位によって、胃アニサキス症、腸アニサキス症または腸管外アニサキス症に、症状によって、急性または慢性に分けられます。発症例の多くは胃アニサキス症です。
魚介類を生で食べた後、1時間から2週間で発症し、感染から約3週間以内で自然に消化管内から消失します。幼虫1匹でも発症します。
日本では、1970年代以降、内視鏡検査の普及に伴い、虫体の摘出が可能となり、発生実態が把握できるようになりました。

■症状及び治療法
急性胃アニサキス症は、食後数時間から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、おう吐を生じます。急性腸アニサキス症は、食後十数時間後から激しい下腹部痛、腹膜炎症状を示します。これら急性の症状は、アニサキスが胃壁や腸壁に刺入することで生じます。また、アニサキスの再感染によるアレルギー反応が関係している場合もあると考えられています。
慢性アニサキス症は、自覚症状を欠く場合が多く、胃壁や腸壁に肉芽腫が発見され、摘出された肉芽腫内部に虫体の断片が見つかることで、診断が確定する例が多くなっています。
治療法は、胃アニサキス症は、虫体を摘出することが最も効果的です。
また、じんましんを主症状としたアレルギー症状も報告されています。なお、アナフィラキシーの症状(全身の発疹、呼吸困難、血圧低下、おう吐)がある場合は、緊急に医療処置を行う必要があります。

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2.アニサキス症の発生状況
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■国内の発生状況
過去3年(2014〜2016年)の食中毒統計をみると、毎年病因物質別事件数の上位3位に入っています。

2014年 カンピロバクター 306件、ノロウイルス293件、アニサキス 79件
2015年 ノロウイルス481件、カンピロバクター 318件、アニサキス 127件
2016年 ノロウイルス354件、カンピロバクター 339件、アニサキス 124件

■原因となる食品は
人への感染源となる魚介類は、我が国の近海で漁獲されるものでも160種を超えるとされています。この中でも患者の食歴から、サバ(マサバおよびゴマサバの総称,加工品としての「シメサバ」を含む)が最も重要な感染源と考えられ、この他にもアジやイワシ、イカ、最近ではサンマなどが感染源になる機会の多い魚介類として挙げられます。

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3.アニサキス症を防ぐには?
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■加熱調理や冷凍処理を
アニサキスは60℃で1分、70℃以上では瞬時に死滅します。また、冷凍処理により感染性を失うので、魚を-20℃以下で24時間以上冷凍することは有効です。
酸には抵抗性があり、シメサバのように一般的な料理で使う程度の食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても死ぬことはありません。
国際食品規格を作成しているCodex委員会では、魚及び魚製品の実施規則において、製品中の寄生虫の駆除に効果のある手法として、中心部の加熱(60℃で1分)又は冷凍(-20℃で24時間)、生食の場合、中心温度-20℃で7日間冷凍を挙げています。

■魚介類を生で食べる場合は
アニサキスは、寄生している魚介類が死亡すると、とどまっていた内臓から筋肉部位に移動することが知られています。そのため、漁獲後は速やかに内臓を除去し、十分に洗浄することが有効です。また調理の際に目視で確認することも有効です。
「天然物だから、新鮮だから、生でも安全」と安易に考えず、適切な処理を行うことが食中毒を予防します。

 

≪参考≫
・食品安全委員会:ファクトシート「アニサキス症(概要)」
http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_anisakidae_170221.pdf
・厚生労働省:アニサキスによる食中毒を予防しましょう
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html別ウインドウで開きます(外部サイト)
・農林水産省:食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑(アニサキス(寄生虫線虫類))
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/anisakis.html別ウインドウで開きます(外部サイト)
・農林水産省:食品安全に関するリスクプロファイルシート(寄生虫)アニサキス
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/pdf/170602_anisakis.pdf別ウインドウで開きます(外部サイト)
・国立感染症研究所:アニサキス症とは
http://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html別ウインドウで開きます(外部サイト)
・東京都福祉保健局:食品衛生の窓(食品の寄生虫 アニサキス)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/musi/01.html別ウインドウで開きます(外部サイト)

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