【読み物版】生活の中の食品安全−加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?(食品安全委員会委員 石井 克枝)−その1 平成29年8月18日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
[生活の中の食品安全−加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?−(食品安全委員会委員 石井 克枝)  その1]
平成29年8月18日 配信
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今月のe-マガジン【読み物版】は、加熱調理と食中毒についてお送りします。
調理は食品をおいしく安全にします。特に加熱調理は食中毒の原因となる細菌などを死滅させる効果があります。2016年、冷凍メンチカツによる食中毒が起こりました。「加熱したのに食中毒が起こるの?」という声も聞こえてきました。
加熱したのになぜ食中毒が起こるのか。加熱調理と食中毒について、当委員会の石井克枝委員から解説します。

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1.細菌などの死滅温度
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多くの食中毒の原因となる細菌などは熱に弱いといわれ、65〜90℃で死滅します。
細菌などの死滅条件は以下のとおりです。

細菌など 温度 加熱時間
腸管出血性大腸菌 75℃ 1分
カンピロバクター 75℃ 1分
サルモネラ属菌 75℃ 1分
リステリア 65℃ 数分
ノロウイルス   85〜90℃ 1分30秒以上

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2.加熱調理操作の温度
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調理で行う加熱ですが、「ゆでる」、「揚げる」などの調理方法により温度が異なります。
「ゆでる」「煮る」「蒸す」での加熱温度は、水を媒介するので100℃です。
また、「炒める」「焼く」「揚げる」での場合は、空気や油を媒介するので150〜250℃になります。
これらの温度で、熱が食品の中心部まで達していれば、細菌などはいずれも死滅し、食品は安全になります。

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3.食品が変化する温度
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食品は加熱により見た目や硬さなどの状態が変化します。
野菜やいも類は90℃以上で軟らかくなり、肉や魚や卵はおよそ60℃以上で凝固し始め、色も変わります。
肉や魚や卵の色や硬さの変化する温度は細菌などの死滅する温度より少し低いので注意が必要です。
また、加熱温度が100℃以上でも食品の中心に熱が伝わるには時間がかかり、必ずしも食品の中心温度が100℃以上になっているわけではありません。

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4.加熱時間の目安
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厚さ1cm程度の肉や魚を「煮る(100℃)」と中心まで熱が伝わるのにおよそ8〜10分かかります。
「焼く」調理でも、過度に焦がさない程度の火加減でほぼ同じ時間を要します。
「揚げる」調理では、揚げ始めは160℃程度で次第に温度を上げていき、食品の中心の温度を上げます。約5〜7分程度の揚げ時間を要します。しかし、冷凍している場合、当然それ以上長く要します。

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5.揚げ温度と時間と衣の色
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私(石井委員)の実験では厚さが約3cmの冷凍したメンチカツを170℃で揚げるとちょうどよい色になるのに約8分かかり、200℃で揚げると約2分でした。
しかし、その時の中心の温度をみてみると、いずれも0〜5℃程度でまだ凍っている状態でした。
衣の色では中心まで熱が伝わったか判断できず、中心部分の状態は切ってみないとわかりません。油の温度や食品の中心状態の見極めに温度計を使用することをおすすめします。

※次号(平成29年8月25日配信予定)に続きます。

≪参考≫
・内閣府食品安全委員会〜会議資料詳細「加熱調理と食中毒」
http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20170112ik1&fileId=250
・内閣府食品安全委員会〜平成28年度 食品安全モニター会議「冷蔵庫に入れれば大丈夫? 食品の保存を理解する
http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20160616ik1&fileId=030

【注】本稿は、食品安全委員会季刊誌「食品安全」50号(平成29年3月号)の「委員の視点 加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?(石井克枝委員)」を、e-マガジン【読み物版】として加筆修正して発信しています。
◆食品安全委員会季刊誌「食品安全」50号も、ぜひ、ご覧ください。◆
http://www.fsc.go.jp/visual/kikanshi/k_index.data/anzen50_P08.pdf

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