【読み物版「臨時号」】 [魚介類に含まれるメチル水銀] 平成28年11月28日配信 (※ 平成26年1月22日及び1月31日配信記事等の関係部分再配信)

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版「臨時号」】 [魚介類に含まれるメチル水銀]
平成28年11月28日配信 (※ 平成26年1月22日及び1月31日配信記事等の関係部分再配信)
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魚介類に含まれるメチル水銀についての報道がありました。気になさっている方も多いと思いますので、平成26年1月に配信した「魚介類に含まれるメチル水銀」から、関連記事を再配信します。
魚介類は良質なタンパク質や健康に良いと考えられるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸 (DHA) (※) 等の高度不飽和脂肪酸を他の食品に比べて多く含むとともに、微量栄養素の摂取源でもあり、健康な食生活にとって不可欠な栄養上の特性を持っています。
一方、低濃度のメチル水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告があり、妊娠中の魚介類の摂食には一定の注意が必要とされています。

  ※ エイコサペンタエン酸 (EPA) 、ドコサヘキサエン酸 (DHA) ; 魚類、特にイワシ、マグロなど海産魚の脂質に多く含まれる脂肪酸の一種。血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあるとされています。

 

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◆1.メチル水銀とは◆
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■魚介類にメチル水銀が含まれる理由
私たちが通常摂取する水銀は、約8割が魚介類の水産物の摂食に由来します。魚介類の体内には自然界の食物連鎖を通じて微量のメチル水銀が蓄積されています。その含有量は一般に低いので健康に害を及ぼすものではありませんが、マグロやクジラ等の一部の魚介類については、食物連鎖を通じた濃縮を経てメチル水銀濃度が比較的高いものも見受けられます。

■メチル水銀の毒性は
ヒトも含め、動物に対するメチル水銀の毒性のもっとも典型的なものは中枢神経系に対する影響です。
メチル水銀は、体内に入った後、消化管から血中へと吸収され、肝臓や腎臓を経由して糞尿として排泄されるほか、毛髪にも含まれて体外に出されます。妊婦の場合は、体内に入ったメチル水銀の一部が胎盤を通過して胎児に移り、その胎児の機能的発育に影響を及ぼす可能性があります。

■低濃度のメチル水銀の健康影響
非常に高濃度のメチル水銀の摂取とは別に、自然環境中に元来存在する程度の低濃度のメチル水銀がハイリスクグループの神経発達に与える微細な影響についての研究報告では、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告があり、妊娠中の魚介類の摂食には一定の注意が必要とされています。厚生労働省は2003年6月に妊婦の方などを対象として、水銀を比較的多く含有する一部の魚介類などを食べることについての注意事項を公表しましたが、胎児や乳児へのリスクに対する懸念から、2004年7月に食品安全委員会に評価の要請がなされました。

 

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◆2.メチル水銀の食品健康影響評価◆
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■ハイリスクグループの設定
母親の血液中のメチル水銀は胎盤を通過して胎児に移行します。さらに胎児はメチル水銀を排出できないことから、胎児の血液中のメチル水銀濃度は母体血中よりも高くなります。また、胎児期は脳等の中枢神経系の成長が最も速い時期であり、メチル水銀による影響を受けやすい時期と考えられます。
これに対して、乳児のメチル水銀の摂取は主に母乳からとなりますが、その濃度は通常の食品等に比べてあまり高くないとされています。また、小児は成人と同様にメチル水銀を排泄することができ、中枢神経系も既に成人並みに成長していることから、メチル水銀の影響も成人と同様であると考えられます。
このことから、胎児のみをハイリスクグループとすることが妥当と判断しました。

■評価の根拠になったデータは
食品安全委員会では、北大西洋のフェロー諸島と西インド洋のセイシェル諸島における疫学調査のデータを中心に胎児の健康影響を評価しました。特にセイシェル諸島では魚の摂取量が多く(日本人の約2倍)、メチル水銀の摂取量の観点から日本に近いデータと考えられます。フェロー諸島のコホート研究では、胎児期のメチル水銀ばく露が、7歳児及び14歳児の神経生理学、神経心理学上の検査結果と有意な関連性があるという結果が得られましたが、セイシェル諸島の研究では、母親のメチル水銀ばく露量と小児の神経、認知、行動への影響は関連性がないとの結果でした。どちらの研究も1980年代から10年以上かけて行われたもので信頼性も高く、日本におけるリスク評価にも十分使用できると判断しました。

■メチル水銀の健康影響は
評価の根拠となった疫学研究において、胎児期にメチル水銀にばく露された場合に出てくる健康影響は、音を聞いた場合の反応が千分の一秒以下のレベルで遅れるようになるという程度のもので、水俣病のような重篤な症状とは異なります。
食品安全委員会は2005年8月、胎児をハイリスクグループとし、妊娠している方(もしくは妊娠している可能性がある方)を対象に、メチル水銀の耐容週間摂取量(※)を体重1kgあたり水銀に換算して2.0μgとする答申を出しました。

  ※ 耐容摂取量は、意図的に使用されていないにもかかわらず、食品中に存在したり、食品を汚染する物質(重金属、かび毒など)に設定されます。耐容週間摂取量は、食品の摂取を通じて体内にとり入れてしまう汚染物質に対して、人が許容できる一週間当たりの摂取量です。

 

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◆3.妊婦の方の魚介類摂取の注意点◆
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食品安全委員会の評価を受けて、厚生労働省から妊婦に向けて魚介類の摂食量についての注意喚起が出されています。一般的に、魚介類に含まれるメチル水銀濃度は、0.4ppm(mg/kg)以下ですが、食物連鎖の高い位置をしめる魚類の一部では、5ppmを超えることもあり、高齢、大型の肉食性の種類の魚やクジラ類は、比較的高濃度のメチル水銀を含んでいることから、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロなどは一回に食べる量を80gとして、妊婦の方は1週間に1回までを目安に食べることを勧めています。
魚介類は良質なタンパク質や健康に良いと考えられるEPAやDHA等の高度不飽和脂肪酸を他の食品に比べて多く含むとともに、カルシウムなどのミネラル、微量栄養素の摂取源でもあり、健康な食生活にとって不可欠な栄養上の特性を持っていますので、積極的に食べてほしい食材です。妊婦のみなさんは、魚の種類などに気を付けて、バランスの良い食生活を送ってください。
なお、男性や妊娠していない女性におかれては、これらの魚種であっても通常の食べ方をして差支えありません。

 

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◆ メチル水銀に関するQ&A ◆
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■Q1■ 妊婦へのメチル水銀に関する注意事項の内容を教えてください。
■A1■ 魚介類は良質なたんぱく質を多く含み、エイコサペンタエン酸 (EPA) やドコサヘキサエン酸(DHA)等の高度不飽和脂肪酸がその他の食品に比べ一般的に多く含まれ、微量栄養素の摂取源ともなっており、健康な食生活を営む上で重要な食材です。厚生労働省のホームページには、約400種、約9,700検体の魚介類についての調査結果が掲載されていますが、魚介類が含む水銀の濃度は低く、妊婦が食べても健康に影響を及ぼすようなレベルではありません。
しかし、一部の魚介類については、自然界の食物連鎖を通じて、他の魚介類と比較して水銀濃度が高くなるものが見受けられます。
妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂取量の目安としては、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラは1回あたり80gとして1週間に1回まで、キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、マッコウクジラは週2回
までとなっています。
ただし、マグロの中でも、キハダ、ビンナガ、メジマグロ、ツナ缶は通常の食べ方で差支えありません。

 

■Q2■ 胎児への健康影響とは具体的にどういうものですか?
■A2■ 魚介類を通じた水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告書によれば、この胎児への影響は、例えば音を聴いた場合の反応が千分の一秒以下のレベルで遅れるようなもので、将来の社会生活に支障があるような重篤なものではありません。妊婦の皆さんは注意事項を正しく理解して、対象となった魚介類に偏って多量に食べることを避け、水銀摂取量を減らすようにしましょう。

 

■Q3■ 現在妊娠3か月の妊婦です。メチル水銀のことを知らずにマグロのお寿司を沢山食べてしまいました。大丈夫でしょうか。
■A3■ 1回または1週間当たりの魚介類の摂食が、体内の水銀の濃度を大きく変えるものではありませんが、注意を要する魚介類を食べすぎた場合、次回または次週の食事でその量を減らすなどの工夫をしましょう。

 

■Q4■ 授乳中の母親や、小児も魚介類の摂食に注意すべきですか?
■A4■ 食品安全委員会が行った食品健康影響評価では、母乳を介して乳児が摂取する水銀濃度は、あまり高くないことが示されています。また、小児は成人と同様の水銀の排泄機能を有しており、脳への作用も成人と類似していること、「セイシェル小児発達研究」において、子供の神経系の発達にメチル水銀に関連する有害影響が証明されなかったことなどが示されていることから、摂食に注意する対象とはしていません。

 

≪参考≫
厚生労働省;「魚介類に含まれる水銀について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/別ウインドウで開きます(外部サイト)
厚生労働省;「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/051102-2a.pdf別ウインドウで開きます(外部サイト)
食品安全委員会;「お母さんになるあなたへ」
https://www.fsc.go.jp/sonota/maternity/maternity.pdf

 

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