【読み物版】 [生活の中の食品安全 −食中毒予防の三原則について− (食品安全委員会委員 熊谷 進) その2] 平成28年8月26日配信

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】
 [生活の中の食品安全 −食中毒予防の三原則について− (食品安全委員会委員 熊谷 進) その2]  
平成28年8月26日配信
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今号では、前回(8月25日発信)の続きをお送りします。

 

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3. 加熱で「やっつける」、加熱後の「つけない」・「ふやさない」
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食べる直前に加熱される食品は、加熱が十分であれば「やっつける」を達成できます。しかし、加熱調理後の手や指、調理器具などによる二次汚染で、しばしば食中毒が発生するので、加熱後の「つけない」にも注意が必要です。
なお、マグロ、カジキ、サバなどの赤味魚やその加工品は、保存状態が悪い場合(特に常温放置)、腐敗細菌が増加して、加熱しても無毒化しないヒスタミンという有害物質を作り出します。この場合、加熱しても食中毒を引き起こすことがありますので、速やかな冷蔵、冷凍といった「ふやさない」ための対処が、大変重要となります。

※ 参照:食品安全委員会ファクトシート「ヒスタミン(概要)」
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/140326_histamine.pdf

 

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4. 「ふやさない」
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「ふやさない」は、食中毒菌が増える条件(下記参照)の下に食品や食材を置かないようにすれば達成できます。増えるスピードが速い菌は、それに最適な環境下では、菌数が2時間で数千倍にも増えることを記憶に留めておいてください。一方、条件が整わない場合は、その増殖はとてもゆっくりになります。

※食中毒細菌の増殖条件のめやす (例外もあり)
■温度:(増殖可能条件) 5−45℃、 (至適条件) 30−40℃
■pH(ピーエイチ、ペーハー)(注1):(増殖可能条件) 4.4−11.0、 (至適条件) 6.0−8.0
■水分活性(注2):(増殖可能条件) 0.84以上、 (至適条件) 0.92以上

 (注1)  水溶液の性質(酸性・アルカリ性の程度)を表す単位。中性はpH7、これより低い方を酸性、高い方をアルカリ性と呼びます。

(注2)  微生物が増殖に利用できる水の量を表す単位。0から1で表され、みそは0.7−0.8、にぼしは0.57−0.58、水は1。

 

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5. 料理の再加熱も十分に −特に前日に作った煮物やカレー−
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しっかりと加熱しても、芽胞(注1)を作ることで生き残る菌があることを覚えておいてください。このような菌によってしばしば起こる食中毒として、前日に作った煮物やカレーによるウエルシュ菌による食中毒があります。
ウエルシュ菌は、酸素のある所では増殖しにくい性質(嫌気性)がありますが、例えば、底の深い鍋で煮込むカレーなどは、鍋底に近い、酸素が少なくなりがちな部分が増殖する絶好の環境となります。
そして、生き残った熱に強いウエルシュ菌の芽胞(注1)が、一晩、室温に置かれている間に鍋の中で発芽し、増殖することによって食中毒が発生することがあります。このような料理は、翌日、食べる前に再加熱しても、加熱が不十分な場合には増殖した菌によって食中毒が引き起こされます。
前日にしっかりと加熱調理をした場合でも安心せず、具材にむらなく十分に火が通っているくらいの再加熱が必要です(注2)。

(注1)  芽胞(がほう):ウエルシュ菌やボツリヌス菌などの特定の細菌において、栄養の不足や乾燥などの発育に適さない環境でなくなると、「芽胞」と呼ばれる構造物を作り、増殖をやめて休眠状態となります。その中で菌は加熱や乾燥に耐えて生残し、増殖に適した環境下におかれると発芽し増殖します。
(注2)  具材も含めて75℃以上をめやすとして加熱。

 

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おわりに 
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「食中毒予防の三原則」−「つけない」・「ふやさない」・「やっつける」−をしっかり守って、健康で安全な食生活を送りましょう。

 

※ 本稿は、食品安全委員会季刊誌「食品安全」38号(平成26年3月号)の「委員の視点」を、e-マガジン【読み物版】として加筆修正して発信しています。

~~◆食品安全委員会季刊誌「食品安全」38号も、ぜひ、ご覧ください。◆~~
https://www.fsc.go.jp/sonota/kikansi/38gou/38gou_1_8.pdf

 

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