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食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[薬剤耐性菌 その1] (2013.10.24)


食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[薬剤耐性菌 その1] (2013.10.24)

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[薬剤耐性菌 その1] 平成25年10月24日配信 
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今月のe-マガジン【読み物版】は、薬剤耐性菌についてお送りします。
薬剤耐性菌は、人や家畜の病気を治療する薬に対して抵抗力を持ってしまい、薬が効きにくくなっ
た菌のことです。
人の薬剤性耐性菌については、厚生労働省において検討及びリスク管理が行われています。食品安
全委員会では、畜産物等の安全の確保の観点から畜産に関する薬剤性耐性菌のリスク評価を行って
います。
今号では、食品安全委員会がリスク評価を実施している家畜の薬剤耐性菌についてご紹介します。
また、次号では、薬剤耐性菌に関するQ&A及び委員の随想を予定しています。

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1. 薬剤耐性菌と抗菌性物質
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■薬剤耐性菌
医療現場で「抗菌性物質※」を人に不適切に使用したり、畜産現場で動物用医薬品や飼料添加物と
して抗菌性物質を家畜に使用すると、その抗菌性物質が効かない細菌が現れることがあります。
これが薬剤耐性菌です。
このような、薬剤耐性菌の出現は 、人や家畜等での治療を困難にするおそれがあり、また畜産物
や水産物等を介して人の医療に影響を及ぼすことが心配されます。

薬剤耐性菌には、元々その薬剤の作用部位を持たない菌(自然耐性菌)と、後天的に作用部位の変
異や耐性遺伝子の獲得によって薬剤耐性になった菌があります。
薬剤耐性菌は抗菌性物質に抵抗する方法として、
[1]薬剤を分解または修飾する酵素をつくる
[2]薬剤の菌体内への侵入を防ぐ
[3]薬剤が作用する部位の構造を変化させる
[4]菌体内に侵入した薬剤を菌体外へ排出する
などの能力を獲得しています。

※抗菌性物質:微生物又は化学的に合成されることにより生産されて、微生物の発育をさまたげる
物質。このうち、微生物から生産されるものを抗生物質といいます。

食品安全委員会e-マガジン【読み物版】動物用の薬 その1(2013.3.21)
http://www.fsc.go.jp/sonota/e-mailmagazine/e-mailmagazine_h2503_r1.html

食品安全委員会e-マガジン【読み物版】動物用の薬 その2(2013.3.29)
http://www.fsc.go.jp/sonota/e-mailmagazine/e-mailmagazine_h2503_r2.html


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2. 薬剤耐性菌の食品健康影響評価
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■評価指針(ガイドライン)の策定

食品安全委員会は、2003(平成15年)年12月8日付で農林水産省から、飼料添加物又は動物用医薬
品として使用される抗菌性物質によって選択される薬剤耐性菌について、食品を介して人に対する
健康への悪影響が発生する可能性とその程度を、科学的に評価(食品健康影響評価)することを求め
られました。

このことを受け、「薬剤耐性菌に関するワーキンググループ」を設置し、OIE(国際獣疫事務局)の
「抗菌剤耐性に関する国際基準(OIE International Standards on Antimicrobial Resistance,
2003)」を参考として、薬剤耐性菌の食品健康影響評価に必要であると考えられる事項を示した評
価指針(ガイドライン)を策定しました。

「家畜等への抗菌性物質の使用により選択される薬剤耐性菌の食品健康影響に関する評価指針」
(平成16年9月30日 食品安全委員会決定)
http://www.fsc.go.jp/senmon/doubutu/taiseikin_hyoukasisin.pdf


■評価の対象
本指針では、家畜等の飼養及び養殖課程において動物用抗菌性物質が使用されていることから、評
価の対象を「畜水産食品※」とし、畜水産食品が介在しない場合、
例えば、
[1]保菌している家畜等との接触による直接的な伝播(感染)
[2]空気や汚染された用具等を媒介とした環境循環による伝播(感染)
等については、対象としないこととしています。
また、水については、農場の近隣の河川水や井戸水が、家畜等由来の薬剤耐性菌によって汚染され
る可能性も考えられますが、現時点では、その汚染状況等の科学的評価を行うのに十分な情報及び
知見が集積されていないことから、これらを評価することは非常に困難であると判断されたため、
本指針の対象としないこととしています。

※畜水産食品:家畜等に由来する畜肉、鶏卵、牛乳、魚肉などの食品。


■直近に実施した薬剤耐性菌のリスク評価(抜粋)
食品安全委員会では、これまで以下の抗菌性物質に対する薬剤耐性菌について評価を行いました。

【リスクの程度が「影響が無視できる」と評価された薬剤耐性菌】
・センデュラマイシンナトリウム(薬剤耐性菌)2013年4月22日
・ラサロシドナトリウム(薬剤耐性菌)2013年4月22日
・サリノマイシンナトリウム(薬剤耐性菌)2013年6月24日
・ナラシン(薬剤耐性菌)2013年6月24日

【リスクの程度が「低度」と評価された薬剤耐性菌】
・塩酸ピルリマイシンを有効成分とする乳房注入剤(ピルスー) 2013年2月4日

【リスクの程度が「中等度」と評価された薬剤耐性菌】
・ツラスロマイシンを有効成分とする豚の注射剤(ドラクシン) 2012年9月24日
・牛及び豚に使用するフルオロキノロン系抗菌性物質製剤 2010年3月25日
なお、評価をとりまとめたこれらの薬剤耐性菌についても、現時点では詳細な科学的知見や情報が
必ずしも十分とは言えない、またはリスク評価の手法についても国際的にも十分確立されていない
と考えられる場合があるため、引き続き国際機関における検討状況を含め、新たな科学的知見・情
報の収集が必要であるとしています 。


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