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食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[かび毒その2] (2013.9.27)


食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[かび毒その2] (2013.9.27)

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内閣府 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】[かび毒その2] 平成25年9月27日配信 
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前回(9月12日配信)のe-マガジン【読み物版】では、かび毒に関する一般的な情報をお届けしました。
今号では、かび毒に関するQ&Aと、かび毒・自然毒等専門調査会の芳澤宅實座長の随想をお送りします。


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1.かび毒に関するQ&A
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Q1. かびの生えた食品は、かびを取れば、食べても大丈夫ですか。

A1.生えたかびが毒素を産生すると、表面のかびを除いても、かび毒は食品の中に残っています。
かびそのものは加熱等により死滅しますが、かび毒の中には比較的熱に強く、通常の加工調理では
十分に減少しないものがあります。一度かび毒に汚染されてしまうと、食品から取り除くことは困
難です。
もったいないですが、かびの生えた食べ物は食べないで廃棄しましょう。食品は正しく保管してか
びが生えないうちに食べきることが大切です。 

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Q2.食品を汚染するかびは、どの地域に分布しているのですか。
汚染された輸入食品が流通することはないのでしょうか。

A2.強い発がん性を持つかび毒として有名なアフラトキシン類を産生するアスペルギルス・フラバ
スは、熱帯や亜熱帯地方に多く存在することが確認されています。従ってこれらの国で生産される
ナッツ類や穀類、香辛料はアフラトキシン類に汚染されている可能性があります。
一方、温帯や寒帯にかけては、赤かびとして知られるフザリウム属が産生するデオキシニバレノー
ルやニバレノールなどの穀類での汚染が問題となっています。このかびは気候条件によっては麦、
とうもろこし、米などに大発生し、我が国でも1946年から63年にかけて各地で起こったうどんや
米飯による食中毒の原因となりました。産生菌は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパなど世界中で見
られ、日本においても全国的に生息しています。
輸入食品については輸入時に全国32か所にある検疫所で監視が行われており、例えば、アフラト
キシンに汚染されている可能性が高いとされる落花生やピスタチオナッツ、アーモンドについては、
全ての輸出国のものについてアフラトキシンの検査が義務付けられ、検出された場合は輸入が認め
られません。

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Q3.りんご果汁にはパツリンというかび毒が入っていることがあると聞きました。子供たちがりん
ごジュースが大好きなのですが、飲ませても大丈夫でしょうか。

A3.パツリンは青かびの一種であるペニシリウム属やアスペルギルス属等のかびが産生するかび毒
で、りんごを汚染することが知られています。日本では、人への安全性を考慮して、りんごジュー
ス及び清涼飲料水の原料用りんご果汁に含まれるパツリンは0.050 ppmを超えてはならないとの
規格基準が設定され、これに基づき、管理されています。


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2.「専門委員随想」(かび毒・自然毒等専門調査会座長 芳澤 宅實)
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東京での10年間の学生生活を終え、四国でかび毒研究をスタートしたのが1971年であった。
赤かび病菌の被害を受けた麦類に含まれるかび毒を明らかにするために、地域の農家から提供され
た被害麦を研究材料に、そこから直接証明することを発想した。それまでの大方の研究手法に比べ
ると、大変泥臭いドン・キホーテ的な挑戦であったが、地方の劣位な研究条件をできるだけ優位に
活かすためには、それも一つの選択であった。幸運にも赴任して間もなく、新規のかび毒であるデ
オキシニバレノールに出会い、その後の研究の展開に関係するいくつかの重要な知見も得ることが
できた。
デオキシニバレノールを発見した当初は、この現象は地域に限定的なことかも知れないとも考え
たが、その後の国際的な研究の進展により世界各地でも普遍的に認められることが判明した。研究
情報が次第に蓄積されるに伴い、国際化学物質安全性計画(IPCS, 1990)、国際癌研究機関(IARC,
1993)、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA, 2001)等の国際的組織による安全性評価の俎上
に上り、重要な食品汚染物質の一つとして位置付けられるに至った。発見後、約30年を要したこ
とになる。
これらの国際機関によるリスク評価の作業に筆者も携わってきたが、欧米諸国に比べて、わが国
から発信される情報のほとんどが個々の研究者によるものであり、国として組織的に収集したデー
タがあまりにも乏しいことを痛感し、忸怩たる思いであった。そんな中、2003年に内閣府食品安全
委員会が設立され、専門調査会の一つとしてかび毒・自然毒等専門調査会が設置された。これは画
期的なことであり、その意義は極めて深いものがある。これを契機に、リスク評価を念頭においた
各種かび毒の汚染実態のナショナルモニタリングが食品安全委員会の研究補助事業として、また農
林水産省や厚生労働省の協力のもとで組織的に行われ、国際的に見ても質の高い情報が着実に集積
されてきた。
食品健康影響評価を行うためには、研究情報の集積が前提となることは言うまでもないが、研究
現場においてリスク評価に求められる知見は何かについて意識されることが大切である。その点で、
食品安全委員会の諸活動が関連する学界等に対して積極的に発信・周知され、またリスク評価の成
果が研究現場にフィードバックされていくことが必要ではないかと思う。


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