FSC Views

食品安全委員会e-マガジン 【読み物版】


食品安全委員会e-マガジン 【読み物版】


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】平成24年8月号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 (今号の総文字数:約2,945字)

夏の暑い時期は、カビが増える絶好の条件の季節です。
食品にカビが生えると食品の味が変わったり悪い影響をあたえますが、
カビの働きによって食品、薬が作られたりもしています。
今月のe-マガジン【読み物版】では暑い時期のカビへの対応、カビ毒
についてまとめてみました。
また、村田委員の「国菌とは何でしょう」を紹介します。

┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏

【 目 次 】

1. 暑い時期は「カビ」に注意を

2. 食の安全Q&A(カビ毒)

3.「国菌とは何でしょう」(食品安全委員会 村田委員)

┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛┛

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1. 暑い時期は「カビ」に注意を
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
食べ物に生える「カビ」は、細菌とともに食中毒などの原因になり
ます。特に湿度と温度が高い夏は、カビが増えやすい季節。食べ物
のあつかいにじゅうぶん気をつけて、食品のカビに注意しましよう。

★こうやって、カビは増えていく!
・空気中など、どこにでもカビの「胞子」や「菌糸」がただよって
 います。
・食べ物などにくっつきます。冷蔵庫の中でも安心できません。
・食べ物を栄養にしてどんどん増えて胞子を作ります。いちばん好
 きな温度は20~30℃、湿度は80%以上。
・増えた場所から、また、空気中などに胞子をまき散らします。

★カビはどんな食べ物が好き?
・特にパンやおもち、ケーキなどのお菓子など、でんぷんや糖分を
 含んだ物に生えやすいカビ、でも、種類によっては野菜や果物、
お米や麦、ピーナッツなど、どんな食べ物にも生えます。
・5℃くらいから増えることができますから、冷蔵庫でも食べ物を
長く入れすぎると、増えてきます。ただし、酸素が必要なので、
真空パックした食品には生えません。
★カビにはどんな害があるの?
・カビは、食べ物の味や匂いを変えてしまったり、腐らせたりしま
 す。また、アレルギーを起こしたり、毒を生産して食中毒やがん
の原因になることも。洗ったり加熱したりしても、カビ毒が残っ
ているおそれがあります。もったいないことですが、カビの生え
た食べ物は食べてはいけません。
★そのほか
・カビは、おみそやしょうゆ、チーズやかつお節、それにペニシリ
 ンなどの薬を作るという良い働きをしているのもあります。
・カビは、人間の敵ばかりではないということです。食べ物を正し
 く保存して、新鮮なものを早めに食べれば大丈夫です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2. 食の安全Q&A(カビ毒)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q1.かび毒とはどのようなものですか?
A1.菌類の一種であるかびがつくる物質は、食品や医薬品製造で役立
 つものも多くありますが、一部のかびは天然毒素を生み出します。
・これを「かび毒」といい、現在、300種類以上のかび毒が知られて
 います。代表的なものとしては、トウモロコシや落花生、豆類な
 どから検出されるアフラトキシン、リンゴ果汁などから検出され
 るパツリン、小麦、大麦などから検出されるデオキシニバレノー
 ル、ニバレノール、穀類とその加工品などから検出されるオクラ
 トキシンなどがあります。
・一般にかび毒は熱に強く、加工・調理しても毒性がほとんど減ら
 ないため、農産物の生産、乾燥、貯蔵などの段階でかびの発生や
 増殖を防止することが重要です。

Q2.かび毒はヒトに対してどのような影響を及ぼすのですか?
A2.かび毒は、ヒトや動物に対して多様な健康被害を及ぼします。急
 性症状を伴うものもありますが、多くは長期に連続して食べ続け
た結果としておこる慢性毒性、発がん性が主体となります。
・たとえば、アフラトキシンは肝臓障害や発がん性、パツリンは消化
管の充血や出血、潰瘍、デオキシニバレノールやニバレノールは嘔
吐・下痢などの消化器症状や免疫抑制、オクラトキシンは腎臓障害
などです。
・家庭でできるかび毒の害を避ける方法としては、かびが生えてい
 るものを食べないことです。かびが見えている部分を取り除いて
 も、かび毒が残っているおそれがあるので気をつけましょう。

Q3.かび毒の対策はどうなっているのですか?
A3.日本では、アフラトキシン類のうち総アフラトキシン(フラト
 キシンB1、B2、G1,G2)については、食品衛生法で基準値が設定さ
 れています。りんごジュース及び原料用りんご果汁のパツリンに
ついても基準値が設定されています。
 なお、小麦のデオキシニバレノールについては、暫定基準値が設
定されています。
  農産物や輸入食品などのかび毒への具体的な対策については、農
林水産省、厚生労働省等のリスク管理機関が実施しています。
また、食品安全委員会では、これまで、かび毒である総アフラト
 キシンやパツリン、デオキシニバレノール、ニバレノールについ
 てリスク評価を終え、続いて乳中のアフラトキシンM1及び飼料中
のアフラトキシンB1について評価を行っており、オクラトキシンA
 についても、「自ら評価」の案件として、評価を行っています。

[評価書]
(総アフラトキシン)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20080903001

(パツリン)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20030701068

(デオキシニバレノール)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20101118001

(いろいろなカビ毒 農林水産省HPより)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kabi_iroiro.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3.「国菌とは何でしょう」(食品安全委員会 村田委員)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
国菌という言葉を聞いたことがおありになりますか。国花は桜、国
鳥はキジ、国チョウはオオムラサキなどになぞらえて、国の象徴的
微生物を国菌とし、麹菌すなわち黄麹菌(アスペルギルス オリゼ)
類を当てようというものです。

麹菌は、日本人の伝統的食生活になくてはならないもので、日本酒、
みそ、しょうゆの製造に必須です。

ところで、最も危険なカビ毒であるアフラトキシンは、分類学的に
は黄麹菌に類縁のアスペルギルス フラバス(麹菌ではありません)
により生産されます。近年の分子生物学の進歩により、なぜアスペ
ルギルス フラバスはアフラトキシンを産生するのに、黄麹菌類は
産生しないかということが解明されてきました。
アフラトキシンを作り出すには多数の酵素群とそれをコードする25
以上の遺伝子の遺伝子群が必要だということが分かり、黄麹菌にお
いては、そのかなりの部分を欠いているもしくは制御遺伝子がほと
んど発現できない、仮にできても機能しないということが判明しま
した。

従来の形態学的観察や生理的特性に加えて、遺伝子レベルでも黄麹
菌の安全性が確認されたことになりました。これらの研究のかなり
の部分は我が国の研究者によりなされたもので敬意を表したいと思
います。

============================================================
※このメールはシステムが自動発行しておりますので、返信メール
 は受け付けておりません。
■食品安全委員会e-マガジンバックナンバー
http://www.fsc.go.jp/sonota/e-mailmagazine/back_number.html
■配信中止・配信先変更はこちら
https://www.fsc.go.jp/fscmds/magazinereader/cancel
■食品安全委員会からのご案内
http://www.fsc.go.jp/sonota/e-mailmagazine/e_oshirase_info.html
============================================================
[食品安全委員会e-マガジン]
編集:食品安全委員会e-マガジン編集会議
発行:内閣府食品安全委員会事務局勧告広報課
〒107-6122 東京都港区赤坂5-2-20
赤坂パークビル22階
http://www.fsc.go.jp/