食品添加物は危ないの?複合的な影響は? ー添加物に関する質問に川西徹委員がお答えしますー

令和4年11月17日公開

 食品安全委員会は7月から3回にわたって、添加物についてのリスクコミュニケーション「食品添加物のリスク評価をアップデート─評価指針を改定、ワイン添加物も続々評価─」を開催しました。報道関係者、食品安全モニター、事業者など300人あまりの方々に参加いただきました。

 各回とも前半では、食品安全委員会が昨年度に行なった添加物の評価指針改定について、化学物質のリスク評価を担当する川西徹委員が話題提供しました。約1時間のその模様(2022年8月25日食品安全モニターセミナー)は、動画でご覧ください(以下リンク先参照)。一方、30件以上お寄せいただいた質問は、時間が足りず十分には回答できませんでした。そこで、主な質問について川西委員にウェブサイト上で解説してもらうことにしました。
 海外で禁止されている添加物がどうして日本で使われているの?日本は緩いの?添加物を複合して摂ったときのリスクは?なるべくなら動物試験はしてほしくないんだけど……。さまざまな質問、意見にお答えします。(インタビュアー:松永和紀委員)

◆食品安全委員会YouTubeチャンネル
 食品安全モニターセミナー(2022年8月25日)・話題提供
 食品添加物のリスク評価をアップデート ─評価指針を改定、ワイン添加物も続々評価─ [1:02:04]

 

川西委員画像

川西委員

Q1.添加物のリスク評価は、どのように行っているのか?

【松永】
 多くの質問をいただき、添加物に対する社会の関心の高さを改めて感じています。まずは、動画を見ていただきたいと思いますが、寄せられた質問にお答えする前に、食品安全委員会が添加物のリスク評価をどのように行なっているか、かいつまんで説明してください。

【川西】
 新規の添加物についてはまず、添加物メーカーや添加物を使用する食品メーカーが厚生労働省に「添加物として指定してほしい」と要請し、厚労省が必要性や有用性について検討します。そのうえで「この物質をこういうふうに使う場合、安全性はどうでしょうか?」と食品安全委員会に食品健康影響評価、すなわちリスク評価を依頼します。
 食品安全委員会の中に設置されている添加物専門調査会が、提出された試験結果等を基に審議を行って評価結果をまとめ、厚労省に通知します。正しく使えば問題ない、となれば、厚労省は添加物として指定し、あわせて規格・基準(使い方、使用量または残留してよい上限量など)を決め、その後、添加物として使えるようになる、という流れです。

図1画像

図1
出典:厚生労働省・食品添加物に関する規制の概要

【松永】
 評価の際に検討する試験結果は表1のように多数あります。ただし、異論も聞きます。要請者、つまり添加物メーカーが提出する資料、試験結果をもとにリスク評価するので、「企業が都合のよい結果を提出し、それを評価するのだから、信用できない」というご意見です。
 

表1

表1画像

出典:食品安全委員会資料・食品添加物のリスク評価のアップデートー評価指針の改正と評価事例(ワイン添加物)についてー P13

 

【川西】
 それは誤解ですよ。提出された試験結果で不十分な場合は、さらに追加提出を求めます。専門調査会に所属する専門委員は、国立研究機関や大学などに所属する科学者で、添加物の専門家だけでなく薬学や栄養疫学の研究者もいます。それぞれの立場から検討し不足も指摘してくれます。
 それに、試験のデータは、優良試験所規範(GLP)等で信頼性が保証された試験によるもの、OECD(経済協力開発機構)等のテストガイドラインに則ったものであることが原則です。それ以外の試験データや文献は、専門委員がそれぞれデータの信頼性を検討して評価に用いています。ただし「安全性について懸念がある」と指摘するデータ・資料、特にヒトでの知見については、信頼性にかかわらず提出していただくこととしています。

Q2.海外と日本とで使える添加物の種類が異なるのはなぜ?日本は評価基準が緩いのか?

【松永】
 次に、海外との違いについて説明してください。「日本は添加物の数が多い。評価が緩い」と思っている人が多いようです。評価基準が他国と違うのですか?

【川西】
 リスク評価の基本的な考え方は、国連食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)により定められています。日本は評価指針を国際機関の議論を踏まえて定めており、欧州連合(EU)や米国等も同様のシステムで評価しています。ただし、要請された物質について一つ一つ評価してゆくときに、どの試験結果を重視するかなど、そのつど、専門調査会で議論するので、結果的にほかの国の判断と異なることもあります。それに、国によって大きく違うのは、その添加物を使うと想定した時のばく露量。人が身体に取り込む摂取量のことです。食文化によっても、どのような食品をどれぐらいの量食べるかは大きく変わってきます。健康に悪影響が及ぶ可能性とその程度、つまりリスクの大きさは、図2のようにその物質のハザードの特性とばく露量を比較して判定されますので、リスクの判定結果がほかの国と同じにならない場合も出てきます。

図2画像

図2

【松永】
 食文化によってかなり変わってきますね。添加物は、図1のようにメーカーが指定を要請してそこから審査・評価が始まります。その添加物が必要かどうかは食文化によって大きな違いがあるので、評価を要請される添加物も国により種類が異なります。たとえば、日本では、きんとんに使われるクチナシ黄色素をはじめとして天然色素が好まれますが、多くの国では必要とされずメーカーが指定要請していません。結果的に、ほかの国では使用できない添加物、ということになります。それを「○○国では、この添加物は禁止されている」と表現する人がいるのです。こういう場合、添加物として認められているかどうかと安全性とは関係がないのですが。

【川西】
 食品安全委員会は、ハザードの特性評価において厳しく、そして、ばく露評価においても摂取量をかなり多く見積もって最終的にリスクの判定を行ない、十分に安全が守られるような評価をまとめているのですが、一般の方たちにはわかりにくいようですね。

【松永】
 EU等で使用を認められている添加物で、日本では使えないものもあります。ところが、残念なことに、「他国は数十の添加物しか使用を認められていないのに日本は1500も添加物がある」というような間違った数字が飛び交っているのです。そもそも国によって添加物の定義が異なり、国によって香料や酵素が含まれたり含まれなかったり、果汁やお茶が添加物に含まれている国もあったりで、数の比較は意味がありません。

Q3.複数の添加物を同時に摂取する「複合ばく露」をどう考えたらよいのか?食品内で添加物同士が反応して安全性が変わる可能性は?

【松永】
 さて、消費者からの質問が非常に多いのが複合ばく露の問題です。添加物のリスク評価は個別に行われているけれど、摂取するときには複数を同時に食べます。複数一緒に、ということで予想もつかないとんでもないことが起きるのではないか、加工食品のパッケージには使われた添加物の名前がずらりと並んでいてとても心配……。そんな意見をよく聞きます。

【川西】
 添加物の複合摂取の健康影響については、食品安全委員会の平成18年度(2006 年度)「食品安全確保総合調査」で報告書がまとめられています。「実際に起こりうる可能性は極めて低く、現実的な問題ではなく、理論的な可能性の推定にとどまるもの」「食品添加物はADI※1の考え方を基本として個別に安全性が審査されているが、複合影響の可能性を検討する際にもこのアプローチは有効であり、個々の食品添加物の評価を十分に行うことで、食品添加物の複合影響についても実質的な安全性を十分確保することが可能」としています。報告されてからかなりの年数が経っていますが、今読んでもおおよそのところは妥当だと考えていますので、一読していただきたいです。

※1 ADI:Acceptable Daily Intake(許容一日摂取量)。ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと考えられる1日当たりの物質の摂取量のこと。通常、毒性試験から導き出される無毒性量(NOAEL)を安全係数(SF)の100で割って算出する。

【松永】
 実質的な安全性を十分確保することが可能」とする根拠はどのようなものですか?

【川西】
 図3を見てください。医薬品は、ヒトの体に作用をもたらすために摂取しますので、作用を現す量を投与します。したがって、しばしば相互作用が問題となります。一方、添加物はヒトの体には影響がなく、しかし微生物の増殖を抑えたり食品の品質を保ったりできるように、量を厳しく制限し安全性を十分に見越した使用基準の範囲内で使います。厚労省の摂取量調査によると、一つ一つの添加物の摂取量はわずかなので、複数を同時に食べても相互作用は現れにくい、と考えられます。

図3画像

図3
出典:食品安全委員会資料

【松永】
 添加物の使用量は実際のところごく少量。たくさん使うと味に影響してくるのでわずかにならざるを得ない。私は同じような質問をされた時には、添加物同士がヒトの体に37兆個あるという細胞の一つで偶然出会って反応したり、細胞中の一つの代謝経路に同時に作用して悪い影響をもたらす確率がどれくらいか想像してみてください、と説明したりします。科学的にはゼロとは言えない。でも、起きるとは考えにくいし、起きたとしても甚大な影響が出るとは考えにくい。このあたりは、一般の人たちには伝わりにくいところかもしれません。

【川西】
 もちろん、食品安全委員会は「心配ない」で停止しているわけではありません。評価指針にも書いているのですが、構造が似ている添加物同士や、構造は似ていないけれども生物作用の特性が類似する添加物同士については、グループとしてのADIを設定し、合算した摂取量がADIを超えないようにする、ということを従来からしています。昨今は、特に欧米で複合ばく露に関する評価が非常にホットな話題になっているので、海外の動向も注視しています。

【松永】
 体内での複合的な影響だけでなく、食品製造において複数の添加物が使われ食品内で発がん物質ができるような現象にも心配の声があります。

【川西】
 2006年に、清涼飲料水中で保存料の安息香酸と酸化防止剤として使われたアスコルビン酸(ビタミンC)が、ある条件下で反応して発がん物質のベンゼンが生成する、という指摘がありました。実際に、製品を調べたところ、水道水の基準値10ppbを上回ったものがあり自主回収されています。現在は、添加物のリスク評価において、食品中での安定性についても確認し、安定的でない場合には、主な分解物の種類や生成の程度を検討することとしています。

インタビューの様子



Q4.動物試験は減らせるか?

【松永】
 次に、動物試験についてお尋ねします。動物を使った実験は、減らしてゆこうというのが国際的な流れです。市民の間でも、動物福祉、アニマルウェルフェアの観点から注目が高まっています。一方で、食品の安全性の評価には動物を用いた試験が欠かせません。今後はどうなってゆくのでしょうか。

【川西】
 この問題は、食品安全委員会としての見解がまとまっているわけではないので、個人の意見として聞いてください。動物試験には今、3Rの原則が求められています。動物試験を廃止して代替試験をしなければ……とよく言われるのですが、それだけではないのです。食品安全委員会はすでにこの3Rに基づき対応を進めています。香料や加工助剤におけるTTCアプローチ※2、アレルゲン性試験におけるin vitro試験※3の組み合わせなど、添加物評価指針にも既に代替試験法の活用が書き込まれています。

表2:3Rの原則

Replacement 動物を用いる試験を、動物を用いない、あるいは系統発生的下位動物を用いる試験法に置換(代替)する
Reduction 使用動物数を削減する
Refinement 実験動物の苦痛軽減と動物福祉を進める


 ただし、添加物や農薬などの安全性評価に代替試験法を取り入れるにはかなり高いハードルがある、と考えています。化学物質の安全性を評価する試験については、OECDが国際標準となるテストガイドラインを作っているのですが、動物を用いない試験としては皮膚への毒性試験が多く、全身の毒性を調べる試験はほとんどありません。動物試験削減は化粧品から始まったので、皮膚に関係する試験への対応が進んでいます。これらは、OECDがバリデーション(妥当性確認)されていることを確認して採用しています。
 一方、動物に一定期間繰り返し食べさせて影響を見る「反復投与毒性試験」の代替法はまだ、検討が進んでおらずバリデーションもなされていません。添加物のリスク評価の基本となっているのはこの反復投与毒性試験です。話題提供で説明した無毒性量や安全係数などはすべて、動物試験に合わせて国際的に長い時間をかけて構築してきた考え方です。そのため、代替法開発にはまだ相当な時間がかかる、と考えられます。

※2 TTCアプローチ:TTC(Threshold of Toxicological Concern、毒性学的懸念の閾値)は、ヒトの健康への悪影響を引き起こす可能性が極めて低いと考えられるばく露量の閾値が存在するという考え方を基に、さまざまな試験や化学構造等から推測した値。毒性データが十分にあるわけではないが、ばく露量又は摂取量が極めて少ないことが推定される化学物質のリスク評価に用いられる。

※3 in vitro試験:試験管内で行う試験

【松永】
 動物試験をなくしその代わりに妥当性のあやふやな試験を行なって、リスク評価の質が下がる、安全性の判断が甘くなってしまう、というようなことになったら大変です。

【川西】
 ただし、3Rの努力は続いていて、近年は使用する動物数が大きく減っていることも理解してください。日本ではマウスが2004年には600万匹以上使われていたのが2019年には300万匹を切り、ラットも250万匹から60万匹にまで減っています。いずれも日本実験動物協会の調べによる数字です。

Q5.この添加物が危ない、というニュースが出た時、どういうところに注意して受け止めたらよいか?

【松永】
 さて、添加物に対する社会の関心は高いので、「危ない」という論文が出ると大々的に報じられます。専門家と称する人が「危ない」と主張する場合もあります。最近は、甘味料に関する懸念が欧米でよく話題となります。こうした情報はどのように受け止めたらよいのでしょうか。

【川西】
 甘味料については、食品安全委員会の設立以前に評価されて指定されたものや、食品安全委員会設立後、リスク評価して指定されたものなどあります。一部の甘味料は、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が現在、再評価を行う準備を進めており、リスク管理機関である厚労省が情報収集に務めていますので、食品安全委員会でも連携して対応してゆく予定です。
 ただし、個別の添加物や論文についてではなく一般論として申し上げると、一つ一つの論文や学会等での発表が正しいとは限らないことは、市民も知っておいてほしいのです。食品安全委員会の評価は一つの研究結果では決まりません。一つ一つの研究の質を吟味し、それら多数の結果を突き合わせて整合性も検討し、最終的にリスクの判定をしています。私たちは、最新最善の科学に則った評価に努めていることをご理解いただきたいと思います。

【松永】
 研究のデザインや用いた動物数などさまざまな要素により、その研究結果をどの程度信頼してよいのか、ヒトへの影響についてどれぐらい参考になるのか、という判断がまったく変わってきますね。ところが、こうしたことは一般の人たちにとってはとてもわかりにくくて、どうしても、インパクトの強い「危ない」というような結果だけが、情報として一人歩きしてしまう傾向があります。

Q6.添加物に関する情報はどこにあるか?

【松永】
 有名な○○さんが危ないと言ったから危ないに決まっている、ではなく、まずは評価書を読んでいただきたいです。ただ、私たちにも反省点があり、やっぱり食品安全委員会の評価書やQ&Aなどは難しかったりわかりにくかったり。そもそも、評価書がどこで読めるのか、探せない、と叱られたりします。

【川西】
 食品安全委員会のホームページの上部のタブの「食品健康影響評価」(リスク評価)をクリックしていただくと、リスク評価の結果が分野別に見られるようになっています。添加物をクリックすると、これまでにまとめた190の評価書が並んでいます。最近は、ぶどう酒の製造に用いる添加物の評価を多数実施しました。また、用語集、解説集などもあります。

図4画像

図4:食品安全委員会のホームページ  http://www.fsc.go.jp

【松永】
 食品安全委員会は食の安全に関するさまざまな情報を提供しています。あまり知られていないのですが、海外の政府機関の情報を収集し翻訳して掲載しています。添加物について日本と異なる判断が出た場合も実はきちんと紹介しています。こうした情報を多くの方に活用してほしいですね。
 川西委員、今日はていねいにご説明くださり、ありがとうございました。

 

<参考文献>

・添加物専門調査会(添加物に関する食品健康影響評価指針やこれまでの会合資料、議事録など掲載)
 http://www.fsc.go.jp/senmon/tenkabutu/
・食品添加物のリスク評価をアップデート ─評価指針を改定、ワイン添加物も続々評価─
 報道関係者との意見交換会(2022年7月21日)
 http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20220721ik1
・事業者、研究者などを対象とした精講(2022年9月16日)
 http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20220916ik1
・食品添加物の複合影響に関する情報収集調査
 http://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20070330001
・食品中の化学物質への複合ばく露に関する情報収集調査
 http://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20210010001
・FAO/WHO・Food safety risk analysis: a guide for national food safety authorities
 https://apps.who.int/iris/handle/10665/43718別ウインドウで開きます(外部サイト)
・厚生労働省・食品添加物
 https://www.mhlw.go.jp/content/000798511.pdf[PDF:438KB]別ウインドウでPDFが開きます(外部サイト)

 

 

       
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