ABC Dophilus ® Powder (エービーシードフィルスパウダー)に関する注意喚起について

平成26年11月20日
平成27年1月19日更新

ABC Dophilus ® Powder (エービーシードフィルスパウダー)に関する注意喚起について

 アメリカのソルガー社が製造した健康食品(ABC Dophilus ® Powder(エービーシードフィルスパウダー))が、ムーコル症を引き起こす可能性のある「クモノスカビ」に汚染され、当該製品の回収が行われています。
 米国食品医薬品局(FDA)によると、当該製品を病院での治療の一環として使用された未熟児(32週未満)が、合併症を起こし、最終的に2014年10月11日に死亡に至ったと発表されています。
 日本では、当該製品がインターネットで販売されている例があるなど、個人輸入されている可能性があるので注意が必要です。厚生労働省も注意喚起を行っています。

厚生労働省からのプレスリリース

ABC Dophilus ® Powder (エービーシードフィルスパウダー)に関する注意喚起(厚生労働省)別ウインドウで外部サイトが開きます

<クモノスカビについて> ※肉眼写真はこちら[PDF:396KB]別ウインドウで外部サイトのPDFが開きます
クモノスカビ(Rhizopus)は、真菌のうち接合菌に属し、土壌を含め、環境中に広く生息しており、特に湿性環境に多く分布します。穀類、ナッツ類、香辛料、果実、野菜等の食品が汚染されていることがあり、チーズ等の発酵食品の製造にも利用されることもあります。
灰白色から褐色や灰黒色の綿毛状コロニー(塊)を形成します。また、クモノスカビによるカビ毒の産生は確認されていません。

<ムーコル症について>
真菌は環境中に広く存在しており、健康な人が真菌を吸い込んだからといって、普通はムーコル症(ムーコル症は、接合菌による感染症の総称です。)を発症することはありません。ただし、重篤な免疫不全の人(骨髄移植直後の人、コントロール不良の糖尿病にかかっている人など)は、体内で真菌が増殖し、ムーコル症を発症することがあるので、基礎疾患について、適切な治療を受け、コントロールをすることが大切です。
その特徴としては、主に環境中に浮遊するクモノスカビ等の真菌を吸い込むことによって感染し、その他に外傷等による経皮感染や胞子を含む食品による経口感染もあります。脳へ到達するケース(鼻脳型)が最も多く、その他、肺型、皮膚型、消化器型があります。
鼻脳型の症状としては、鼻や口の中の壊死から始まり、疼痛、発熱、眼球の突出、膿性の鼻汁を伴うことがあります。症状の進行は速く、予後不良であり、まれに死に至ることもあるので注意が必要です。

参考文献

  1. 食品微生物学辞典.日本食品微生物学会監修.中央法規出版株式会社.2010
  2. 医真菌―同定の手引き.D.H.ローラン.シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社.1996
  3. 土壌糸状菌―培養株の検索と形態―.渡邊恒雄.ソフトサイエンス社.1993
  4. カビ検査マニュアルカラー図鑑.高鳥浩介.株式会社テクノシステム.2002
  5. 病原真菌と真菌症 改訂4版.山口英世.南山堂.2007
  6. Zygomycetes in Human Disease. Ribes J.A.他.Clinical Microbiology Reviews. 2000

参考情報