リスク評価

用語解説

■フェロー諸島前向き研究、セイシェル小児発達研究

フェロー諸島前向き研究:メチル水銀の主要な疫学研究のひとつ。

フェロー諸島は、北大西洋のノルウェーとアイスランドのほぼ真中、デンマーク自治領。人口47,000人。国際捕鯨委員会から捕鯨が認められており、長年ゴンドウクジラを食している。 人種はヨーロッパ系。
1986年3月1日〜1987年12月31日の間にこの地域で出生した子供と母親1,023組をコホート(調査集団)として登録し、7歳及び14歳時に神経行動発達検査が行われた。胎児期の水銀曝露といくつかの神経行動学、神経心理学上の評価項目において、統計的に有意な関連が見られた。
「前向き研究」とは、多数の健康人の集団を対象に、疾病の原因となる可能性のある要因を調査し、その後その集団を追跡調査して、疾病にかかる者を確認し、最初に調査した要因との因果関係を分析する研究手法。

セイシェル小児発達研究:メチル水銀の主要な疫学研究のひとつ。

セイシェル共和国は、西インド洋沖、マダガスカル島の北西に位置する。人口8万人。観光業と漁業が主要産業であり、食事は魚、果物、野菜、輸入米が中心。人種はヨーロッパ人とアフリカ人の混血(クレオール)が多数であるが、中国系、インド系住人も多く、人種的背景は複雑。
1989年〜1990年の1年間にこの地域で出生した子供と母親779組をコホート(調査集団)とし、6.5、19、29、66ヶ月、及び9歳時に神経発達検査が行われた。いずれも、小児の神経、認知、行動への水銀曝露の影響は見出されなかった。

■JECFA

Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives
FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機構)が合同で運営する専門家の会合として、1956年から活動開始。FAO、WHO、それらの加盟国およびコーデックス委員会に対する科学的な助言機関として、添加物、汚染物質、動物用医薬品などの安全性評価を行う。通常年2回開催(添加物汚染物質で1回、動物用医薬品で1回)。

食品安全委員会「食品の安全性に関する用語集」より

■耐容週間摂取量   TWI:Tolerable Weekly Intake

耐容摂取量は、意図的に使用されていないにもかかわらず、食品中に存在したり、食品を汚染する物質(重金属、かび毒など)に設定される。
耐容週間摂取量は、食品の消費に伴い摂取される汚染物質に対して人が許容できる一週間当たりの摂取量であり、「耐容一日摂取量(TDI:Tolerable Daily Intake)」は一日当たりの摂取量である。

食品安全委員会「食品の安全性に関する用語集」より

■生物学的半減期

体内蓄積量(人の体内に残留する成分量)が半分になるまでに要する期間。
人体内のメチル水銀は、生物学的半減期が70日と考えられており、いつまでも体内に留まることはない。

食品安全委員会季刊誌「食品安全2005 vol.4」より

■不確実係数   UF:Uncertainty Factor

安全係数と同義。
安全係数とは、ある物質について、人への一日摂取許容量(ADI)を設定する際に、通例、動物における無毒性量(NOAEL)に対して、更に安全性を考慮するために用いる係数。

食品安全委員会「食品の安全性に関する用語集」より抜粋

■ベンチマークドーズ   BMD:Benchmark Dose

量ー反応関係を表す関数において、対象集団の異常率(カットオフ値)が、曝露量の増加に伴って増えていく。この異常増加分をBMR(Benchmark Dose Response)と決め、カットオフ値+BMRになった時の値をBMDとする考え方。この考え方は、生物学的な変動と統計的な不確実性の両面を考慮しているといえる。

汚染物質専門調査会第6回会合 村田勝敬(秋田大学教授)参考人 発表より

■交絡

交絡とは、曝露要因と疾病の実際の関連性が、第三の要因の影響を受ける現象をいう。

■食品健康影響評価

リスク評価。リスク評価とは、食品中に含まれるハザード(危害要因)を摂取することによって、どのくらいの確率でどの程度の健康への悪影響が起きるかを科学的に評価すること。

食品安全委員会「食品の安全性に関する用語集」より