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食品安全委員会e-マガジン 【読み物版】


食品安全委員会e-マガジン 【読み物版】


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 食品安全委員会e-マガジン【読み物版】平成24年10月号
 (食べものと放射性物質のはなし)
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 (今号の総文字数:約6,140字)

今月のe-マガジン【読み物版】では、「今の私たちの食事で子供
たちの健康は大丈夫? 大人の健康も大丈夫?」という声におこた
えするため、「食べものと放射性物質のはなし」をお届けします。
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【 目 次 】

1. 食べものと放射性物質のはなし

2. もっと知りたい方のための Q&A

3. 放射線によるがんのリスクの大きさ

4. 「放射性物質と健康維持」(食品安全委員会 山添委員長代理)

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1. 食べものと放射性物質のはなし
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わたしたちのまわりには、もともと放射性物質(※1)があります。

もちろん、食べものの中にもわたしたちは、大昔から、そして生ま
れてきてからずっと、食べものを口にすることで、毎年0.4ミリシ
ーベルト(※2)分くらい体に取り込んできました。

それでは、原発事故後、食べものから体に入る放射性物質(※3)は、
どのくらい増えたのでしょうか。

厚生労働省など(※4)が調べたところ、年間で0.02~0.003ミリシ
ーベルト増えました。

これは、今まで食べものから摂ってきた量の、1/20(※5)~1/130
(※6)くらいです。仮に、最も増えた場合(0.02ミリシーベルト/
年間)で、80年間摂り続けて1.6ミリシーベルトです。

元々受けてきた自然放射性物質からの放射線のほか、どのくらいの
放射線を受けると、わたしたちの健康に影響が出る可能性があるの
でしょうか。科学的に確認されているのは、一生涯で100ミリシー
ベルト以上(※7)です。

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┃★ベクレルとは?   ┃★シーベルトとは? ┃
┃            ┃          ┃
┃ 放射線を出す能力の ┃ 放射線による人体へ┃
┃ 強さを表す単位です。┃ の影響の大きさを表┃
┃           ┃ す単位です。   ┃
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(※1)カリウム40などの自然放射性物質
(※2)原子力安全研究協会「生活環境放射線(平成4年)」
(※3)事故由来のセシウム
(※4)厚生労働省・京都大学及び朝日新聞社・日本生活協同組合連
合会
(※5)福島県の場合
(※6)東京都の場合
(※7) 食品安全委員会


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2. もっと知りたい方のための Q&A
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(Q1)
大昔から食べてきた食べものの中に含まれる「自然放射性物質」っ
て、どんな食べものに入っているの?

(A1)さまざまな食べものに入っています。

私たちが口にする食べものには、もともと、カリウム40や炭素14
などの自然放射性物質が含まれています。  
例えばカリウム40の場合、野菜や肉・魚などに100~200ベクレル
/kg程度、穀類に30ベクレル/kg程度が含まれています。
日々の食事で、こうした自然放射性物質を摂っていることなどによ
り、私たちの体には、常に放射性物質が含まれています(体重約60
kgの日本人で約7,000ベクレル)。
【出典:原子力安全研究協会「生活環境放射線データに関する研究」
(昭和58年)】

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(Q2)
私たちは原発事故以降、どのくらい放射性物質を摂る量が増えたの
? また、それは誰が調べたの?

(A2)国・研究機関・消費者団体が調査し、いずれの結果でも、大
昔から食べてきた食べものの中の自然放射線量と比べ、きわめて少
量でした。

食品に含まれる放射性物質から受ける放射線量(1年分)について、
[1]厚生労働省
[2]京都大学・朝日新聞社
[3]日本生活協同組合連合会
が調べています。
その結果は、以下のとおりです。

【食事中の放射性セシウムによる放射線量(1年分)】

(調査機関) (調査結果(推計))
厚生労働省 0.003~0.02 ミリシーベルト
京都大学・朝日新聞社 0.023 ミリシーベルト
日本生活協同組合連合会 0.023 ミリシーベルト

※厚生労働省は、東京・宮城・福島で地元又は近隣県産を購入して
測定
※京都大学・朝日新聞社は、福島県内の26家族の普段の食事を測定、
検出された家族の中央値(26家族中1家族は検出限界以下)
※日本生活協同組合連合会は、全国250の家庭の普段の食事を測定、
検出された福島県・宮城県の家庭の中央値(95.6%の家庭は検出限
界以下)

どの結果も、私たちが原発事故以前から食事で摂ってきた自然放射
線量(年間0.4ミリシーベルト(※))の約1/20~1/130の量でした。
(※)原子力安全研究協会「生活環境放射線(平成4年)」

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(Q3)
今の私たちの食事で、子どもたちの健康は大丈夫?大人の健康も大
丈夫?

(A3)科学的にみて心配する必要はありません。

食品安全委員会(内閣府)では、昨年の原発事故の後、国内外の
約3,300の文献を整理し、専門家による食品健康影響評価を行いま
した。
その結果、放射線による健康影響が確認されるのは、一生涯で、自
然放射線など通常の一般生活において受ける放射線量に加え、おお
よそ100ミリシーベルト以上と判断しました。
そのうち、子どもは、放射線の感受性が大人より高い可能性がある
と判断しています。
ただし、子どもは体内からの排出が早く、食べものの摂取量も少な
いことなどから、食事から摂取する放射線量は少なくなります。

一方、原発事故の影響により、実際に私たちが食事から追加的に摂
った放射線量は、今まで摂ってきた自然放射線量(0.4ミリシーベル
ト/年)と比べてもきわめて少なく、仮に最も増えた場合(0.02ミリ
シーベルト/年)(※)でも、80年間摂り続けて1.6ミリシーベルト
です。お子さんを含め、科学的にみて心配する必要はありません。
※厚生労働省調べ(Q2参照)

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(Q4)
自然放射性物質も、人工放射性物質も、健康への影響は同じなの?

(A4)健康への影響は同じです。

放射線が私たちの健康へ影響を与えるしくみは、自然放射性物質か、
人工放射性物質かで異なるものではありません。同じ線量なら、健
康への影響は同じです。(その影響は、すべてシーベルトで表しま
す)。

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(Q5)
少量であっても、放射性物質を普段より多く摂ることは心配です。
どのような食生活が体にいいの?

(A5)バランスの良い食生活が大切です。

痩せ過ぎや肥満、塩分の摂り過ぎは、100~200ミリシーベルトの
放射線を受けた場合より、がんになるリスクを高くするという研究
報告があります。
また、カリウムは、ナトリウムの排泄を促し、血圧の上昇を抑える
など、健康を保つのに必須の栄養素です。カリウム40は、カリウ
ムに一定比率(0.012%)含まれているため、カリウム40だけを避け
ることはできません。
ごく少量の放射性物質の健康への影響については諸説ありますが、
野菜や果物などからカリウムを摂り、食品をバランスよく食べるこ
とが大切です。


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3. 放射線によるがんのリスクの大きさ
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国立がん研究センターでは、放射線や生活習慣によるがんのリスク
の大きさを、以下のように示しています。
============================================================ 
:        要  因         :がんになる:
:                    :リスク   : 
============================================================
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:1,000~2,000ミリシーベルトの放射線を受けた場合:1.8 倍 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:喫煙/大量飲酒(エタノール450g以上/週※) :1.6 倍 :
------------------------------------------------------------
:痩せ過ぎ                   :1.29倍 :
------------------------------------------------------------
:肥満                      :1.22倍 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:200~500 ミリシーベルトの放射線を受けた場合  :1.19倍 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:運動不足                     : 1.15倍 :
: : ~1.19倍:
-----------------------------------------------------------
:塩分の摂り過ぎ                 :1.11倍  :
:                        :~1.15倍 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:100~200 ミリシーベルトの放射線を受けた場合   :1.08倍 :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:野菜不足 :1.06倍 :
-----------------------------------------------------------
:受動喫煙                    :1.02倍 :
:                       : ~1.03倍:
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
:100 ミリシーベルト未満の放射線を受けた場合   :検出   :
:                        :不可能  :
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

出典:(独)国立がん研究センター調べ
「わかりやすい放射線とがんのリスク ‐国立がんセンター」
http://www.ncc.go.jp/jp/shinsai/pdf/cancer_risk.pdf

・放射線によるがんのリスク
「広島・長崎の原爆被ばく者の約40年間の追跡調査」からのデー
タ(寄与率を相対リスクに変換)
http://www.rerf.or.jp/radefx/late/cancrisk.html

・生活習慣によるがんのリスク
 日本の40~69歳の地域住民を約10~15年追跡調査したデータ
(多目的コホート研究)
http://epi.ncc.go.jp/jphc

※飲酒については、酒類に関わらずエタノール換算量で示した。
目安として、エタノール23gはほぼ日本酒1合(180ml)、ビール大
瓶1本(633ml)、焼酎25度120ml、ワイングラス 2杯(200ml)、
ウイスキーダブル1杯 (60ml)相当。


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4.「放射性物質と健康維持」(食品安全委員会 山添委員長代理)
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放射性物質がからだに当たると表面を通過して内側の細胞に達しま
す。
そこで発生した放射線は多くの場合細胞内の水分子とぶつかり、消
滅します。
しかし一部は遺伝子(DNA)にぶつかり、DNA鎖を傷つけることがあり
ます。私たちの身体にはDNA修復機構と呼ぶ修理(複製)の仕組みが
あり、日々元通りのDNA組み合わせに直してくれています。
通常の生活の下で私達は常に少量の放射線を受けていますが、この
修復機構のおかげで遺伝子の異常が生じることは極めて希とされて
います(百万回に1回以下)。一度に大量の放射線を浴びるか、細胞
の状態が極度に悪化している場合、元通りに修理できず、応急修理
をするため元と少し違った組み合わせに直してしまうことがありま
す。
このような状況で、遺伝子の突然変異が生じると染色体の異常を導
き、さらに大きな変化が続くとがん発生への歩みが進みます。
私達の身体を健康に保つことで、からだの放射線に対する防御とが
ん抑制の仕組みを維持するができます。
このためカロリーだけでなくバランスのとれた食生活に気を配りま
しょう。

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