食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06440020149
タイトル 欧州食品安全機関(EFSA)、食品及び飼料中の臭化物の存在に由来するヒトの健康及び動物の衛生に対するリスクに関する科学的意見書を公表 (1/3)
資料日付 2025年1月28日
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概要(記事) (この記事は 1 / 3 ページ目です)
 欧州食品安全機関(EFSA)は1月28日、食品及び飼料中の臭化物(bromide)の存在に由来するヒトの健康及び動物の衛生に対するリスクに関する科学的意見書(2024年11月20日採択、164ページ、DOI: 10.2903/j.efsa.2025.9121)を公表した。概要は以下のとおり。
 欧州委員会は、EFSAに対して、ヒト及び動物に対する臭化物の毒性を評価し、毒性学的参照値を導出し、既存の最大残留基準値(MRL)、及び飼料から動物由来の食品へのキャリーオーバーを評価するよう委任した。
 食料生産動物と非食料生産動物の両方が、今回の委任事項の領域である。藻類及び海藻は、動物の衛生に関連するばく露評価の対象になる飼料原料の主要関連物質である。臭素が共有結合している、及び(又は)臭化物イオンに起因しない毒性特性を有する臭素を含有する化合物(臭化メチル(methyl bromide)、臭素化難燃剤、臭素化植物油等)は、ハザード評価の対象ではない。
 臭素は、自然に存在し、臭化物として環境中に広く分布している。臭化物は自然に存在し、人間の活動に由来する環境汚染、特定の殺生物剤の使用、及び食料生産動物中の動物用医薬品の使用の結果として食品及び飼料中に存在する可能性がある。食品及び飼料中の臭化物を定量する場合、これらの様々な汚染源からの寄与を定量することは可能ではない。
 最近の研究では、臭化物の定量に質量分析法と連動したクロマトグラフ法を用いることが多い。これらの方法は総元素臭素を測定するものであり、食品及び飼料中の臭化物を定量するのに十分な特異性や感度がない重量分析、硝酸銀による滴定、光度計を用いる従来の方法よりも適している。質量分析法は、クロマトグラフ分離と組み合わせることで、臭化物と臭素を含有する化合物を区別することが可能である。
 海水中の臭化物濃度は一般的に、65 mg/L~80 mg/Lを優に超える範囲にある。淡水中の臭化物濃度はそれよりも低く、微量~およそ0.5 mg/L~最大約1 mg/Lの範囲にあるのが一般的である。
 臭化物イオンは、安定しており、水溶性である。したがって、食品中の臭化物イオン濃度が調理に使用される水中の臭化物イオン濃度よりも高いと仮定すると、水で調理される場合に食品から移行すると推定可能である。調理、加工の際に食品から水分が失われる場合、臭化物も水分とともに失われると考えられるが、調理や加工中に油脂が失われる場合は、臭化物は食品中に残留し、濃度が上昇する可能性がある。ヒトの場合、消化管からの臭化物の吸収率(bioavailability)はほぼ完全であり(96 ± 6%)、げっ歯類と類似しているが、イヌやウマ(それぞれ最大46%及び38%)とは異なる。臭化物は主に腎臓から排泄され、ヒトでの排泄半減期は285 ± 34時間である。
 臭化物が飼料から動物由来食品に移行する可能性があることを示すエビデンスはあるが、限られたデータのため、移行率を定量化することはできない。反すう動物に大型海藻類(macroalga)を与てた場合の乳中又は肉中の臭化物のレベルへの影響については不確実性が残っており、その増加の原因が飼料からの臭化物の直接移行によるものか、あるいはブロモホルム(bromoform)(訳注 分子式CHBr3の化合物、別名 トリブロモメタン(tribromomethane))から臭化物への変換によるものかについては依然として確かではない。
 臭化物の実験動物における急性毒性は低い。主にラットにおける反復投与試験において、臭化物は中枢神経系(CNS)、腎臓、甲状腺、その他の内分泌器官、及び体重増加に影響を及ぼすとのエビデンスが示されている。最低用量で生じる影響は、甲状腺ホルモンのホメオスタシスと中枢神経系である。ラットにおける生殖・発生研究においても、母ラットの甲状腺と神経系への影響が報告されている。報告された神経毒性は一般に、100 mg Br-/kg体重/日を超える用量で、歩行異常等の臨床徴候と関連していた。あるラット研究では、詳細な機能観察における能力障害が、184 mg Br-/kg体重/日の用量で報告されたが、82 mg Br-/kg体重/日の用量では報告されず、関連する組織病理学的所見もなかった。遺伝毒性に関する示唆がないこと、計画上の制約がある発がん性試験の結果が陰性であること、及び甲状腺への影響に関する作用機序(MoA)に基づき、臭化物にはヒトに対する発がん性はないと予想される。
 甲状腺への影響には、血清甲状腺ホルモン濃度の変化、特に血清総サイロキシン(thyroxine)(tT4)及びトリヨードサイロニン(triiodothyronine)(tT3)の減少、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の増加、並びに形態学的及び組織学的変化を伴う甲状腺の絶対重量/相対重量の増加が含まれる。ヨウ素欠乏は甲状腺中のヨウ素/臭化物比を低下させ、臭化物の影響を増大させる可能性があるというエビデンスがある。報告されている甲状腺への影響は、甲状腺におけるナトリウム/ヨウ化物共輸送体(NIS)を介したヨウ化物取り込みの臭化物競合が関与するMoAのin vitroエビデンスによって裏付けられている。有害転帰経路(AOP)に基づき、甲状腺ホルモンの変化の時期、期間、及び影響の大きさに依存して、甲状腺ホルモンの変化は神経発達毒性を引き起こす可能性がある。
 ヒトに関する研究において、妊娠可能な年齢の女性に9 mg Br-/kg体重/日のカプセルを12週間摂取させたところ、δ1-及びδ2-活性の減少、β-活性の増加、及び平均周波数(可動性パラメータ)及び視覚誘発反応等、脳波図(EEG)で捉えられる神経生理学的変化が観察された。9 mg/kg体重/日の臭化物カプセルを投与された女性において、試験開始時の濃度と比較して、血清遊離T4(fT4)、tT4及びtT3の統計学的に有意な増加が試験終了時に観察されたが、全ての濃度は正常範囲内であった。しかし、追跡調査ではTSHの増加は報告されたが、tT4には変化がなかった。これらの試験から得られた無毒性量(NOAEL)は4 mg/kg体重/日であった。科学委員会は、これらの試験のうちの1試験において、平均tT4濃度が上昇したことについて説明はないが、平均TSH濃度の上昇は視床下部-下垂体-甲状腺軸への影響を示すものであると指摘した。ヒトにおける研究から得られたエビデンスは、健康影響に基づく指標値(HBGV)を設定する根拠として十分ではないと考えられた。

(次ページの内容:https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu06440021149)
地域 欧州
国・地方 EU
情報源(公的機関) 欧州食品安全機関(EFSA)
情報源(報道) 欧州食品安全機関(EFSA)
URL https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/9121
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