研究情報詳細

評価案件ID cho99920222202
評価案件 鶏肉のフードチェーンを通じたカンピロバクターの定量的動態解析とリスク低減効果の評価に向けた研究 (研究課題番号JPCAFSC20222202)
資料日付 2023年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  鶏肉のフードチェーンを通じたカンピロバクターの定量的動態解析とリスク低減効果の評価に資するデータを収集することを目的として、本研究を実施した。鶏肉のフードチェーンのうち、生産段階では地鶏での本菌の時系列保菌動態解析、食鳥処理段階では殺菌剤の適正使用、HACCP導入効果並びに迅速検査法実効性の評価解析、流通消費段階では国内流通鶏肉での本菌の定量的汚染実態把握と調理施設での交差汚染探知に向けた手法の評価、カンピロバクターの環境適応に関する検討、更に継続的な健康被害実態の推定及び本菌の遺伝性状に基づく食品寄与率推定から成る統合的な研究を実施した。その結果、地鶏での時系列保菌動態解析においては、カンピロバクター感染群と非感染群では地鶏の盲腸内の菌叢の挙動が異なることが明らかとなった。また食鳥処理場において、と体への噴霧水への次亜塩素酸ナトリウム添加は、カンピロバクターの汚染低減効果の可能性が示唆された。流通消費段階(東京の小売店及び大阪の卸売市場内の鶏肉加工施設)の鶏肉のカンピロバクター陽性率は、小売店で30.3%及び卸売市場内で35.6%であり、このような実際に消費地に流通する鶏肉について、今後さらに検体数を増やした上で、汚染実態把握に向けた継続的な調査が必要であると考えられた。また、消費段階での交差汚染探知に向け、まな板上でカンピロバクター汚染鶏肉を処理した際の飛散・生残挙動の検討、飲食店での二次汚染実態の解明に向けた研究を行った。カンピロバクター属菌の環境適応に関連すると考えられるバイオフィルム形成性については、鶏肉から時折分離されるST-353CC株や牛肉から分離されることの多いST-61CC株はバイオフィルム形成性が低い傾向が見られたが、ヒト及び広範な食品より分離されることの多いST-21CC株の半数以上はバイオフィルム形成性が高い傾向が見られた。さらに、カンピロバクターによる健康被害実態の推定を行ったところ、カンピロバクターの食品由来感染被害実態推定で報告される食中毒患者数は食中毒統計で公表されている報告数より多いことから、食中毒として報告されない散発事例が多く存在する可能性が示唆された。今後、さらに各段階のデータの集積及び解析を進めることにより、鶏肉のフードチェーンを通じたリスク評価に資する科学的知見の集積が見込まれる。
※本研究は2年計画であったが、当初の主任研究者が一身上の都合により研究を継続することが困難となったため、主任研究者と分担研究者を交代した上で、研究は1年で終了し、研究成果を取りまとめたものである。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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