研究情報詳細

評価案件ID cho99920212001
評価案件 ベイズ推定を活用したベンチマークドーズ法の評価手法検討と国際動向に関する研究 (研究課題番号JPCAFSC20202001)
資料日付 2022年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要 食品の健康リスク評価でベンチマークドーズ法(BMD法)を活用する上において、ベイズ推定の技術を適用する上での技術的評価に関する研究が米国などで進められている。ベイズ推定は、本質的に区間推定が主眼であるため、BMDLという信頼区間下限値を参照用量に頻用しようとするBMD法に理論的に適合しやすい。一方、事前分布の設定や判断基準、実装上の手順や留意点など、公的機関での導入に際して解決すべき技術的課題が多い。さらに、ベイズ推定の活用に関する国際的動向を把握することが望ましい。
本研究の目的は、ベイズ統計学に基づく統計手法を導入した用量反応モデリングの手順、判断基準などの検討を実施し、また、ベイズ推定が導入されたBMD法に関する既存のソフトウェアの使用手順を整理・提案することであった。加えて、国外の主要なリスク評価機関におけるベイズ推定の活用状況を把握することも目標として研究を遂行した。
目的を達成するために3つの研究項目を設け、検討を行った。その要旨を抜粋して記述する。
① ベイズ推定をBMD法に活用する手順と判断基準などの検討と提案:他の研究手法では実現できないこととして、ベイズ推定を用いることで、少ないサンプル数でも十分に不確実性を定量化することが可能である。ただし、事前分布の想定の別でリスク評価結果に大きな影響が出ないよう、使用するエビデンスが存在する場合は必ずその情報を事前分布に用いるなど、使用方法の取り決めが必要とされる。
② 国外のリスク評価機関におけるベイズ推定の活用状況の把握:今後、ベンチマークドーズ法の活用においてはベイズ推定を用いることが強く推奨されることが見込まれる。モデル平均化においてベイズ推定を活用することが評価手法の中心的存在になると考えられ、今後その方法論の理解の周知と計算の実装が求められるものと考えられた。
③ ベイズ推定を導入したBMD法に関するソフトウェア(BBMD、BMDS等)を用いる場合の手順の整理・提案:BBMDによる推定は計算手続きを進める上でBMDSと大きく異なるということはなく、BMD法へベイズ推定を、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を活用して実装しているため、より高い信頼性を担保したものに位置づけられる。用量反応のモデリングの信頼性を高めるために事前情報を取り入れることができ、より重要な「分布での推定値」を与えてくれる。また、BMDSで保証されていた最尤法にかかる分析機能をR言語で実効可能なように新規開発されたToxicRは用量反応に関するパッケージであり、BMDSでできる内容に加え、MCMCを用いたベイズ推定も実装することが出来る仕様となっている。
初年度および2年度目の研究成果より、ベイズ推定のBMD法への活用に関する知見の整理、既存のソフトウェアの使用手順の整理を行うことができた。これらの成果により、ベイズ推定のBMD法への活用という国際的動向を把握し日本での導入に向けての足掛かりとなり、リスク評価の質の向上に貢献できると考える。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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