研究情報詳細
評価案件ID | cho99920121001 |
評価案件 | 遺伝子発現モニターマウスを用いた発達期脳に対する化学物質暴露影響評価法の開発(研究課題番号1001) |
資料日付 | 2013年3月29日 |
分類1 | --未選択-- |
分類2 | --未選択-- |
事業概要 | いくつかの化学物質は、遺伝子発現に影響を与え、脳機能を障害すると考えられる。従って本研究では、神経活動に伴う脳内遺伝子発現を、個体で非侵襲的かつ経時的に解析できる新たな脳遺伝子発現モニターマウス系統を開発し、代表的な農薬類の影響を、定量的に解析する評価系としての有効性を検証する。また、個体レベルでの解析を行う際の要素的な情報を得るために、大脳由来初代培養神経細胞を用い神経回路網の発達過程での遺伝子発現に与える化学物質の影響とその作用分子機構の解析を行うことを目的として実施した。 マウス脳において神経活動依存的な遺伝子発現をモニターするために、我々は、最初期遺伝子群のひとつであるArc遺伝子にホタルの発光遺伝子(Luc)を連結したArc-Lucを構築し作製したトランスジェニック (Arc-Luc Tg) マウス系統、および脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子にLucを連結したBDNF-Luc Tgマウス系統を作製した。これらのマウス系統を用いて、化学物質の急性投与ならびに慢性投与が遺伝子発現に与える影響を解析した。更に化学物質が遺伝子発現に与える作用の分子機構を解析するために、初代培養神経細胞を用いた解析を行った。 本研究で、我々はArc遺伝子の発現に伴い発光タンパク質酵素(ルシフェラーゼ、Luc)を発現するArc-Luc Tg、ならびにBDNF-Luc Tgマウス系統の作製に成功した。これらのマウス系統では、ArcあるいはBDNFの遺伝子発現に伴うLucの発現量を、発光基質のルシフェリンをマウスに投与し、光検出器を用いる測定により、発光量として解析することが可能であった。Arc-Luc Tgマウス系統を用いた解析で、グルホシネート(GLA)ならびにデルタメトリン(DM)の急性投与が、Arc遺伝子発現に伴う発光上昇を引き起こした。さらに、発達期マウスへのGLAの低容量慢性投与が、Arc-Luc Tg 成体マウスでの発光低下を引き起こした。BDNF-Luc Tgマウスでは、興奮神経毒のカイニン酸投与による発光上昇が観察できた。一方、初代培養神経細胞を用いた解析で、DMによるBDNF遺伝子発現の分子機構を明らかにした。 これらの研究成果から、我々が作製した新規Tgマウス系統、ならびに初代培養神経細胞を用いた解析手法は、化学物質の脳での遺伝子発現と機能に与える影響の評価系として有効であると考えられた。 (注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。 本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。 |
事業名 | 食品健康影響評価技術研究 |
実施機関 | 食品安全委員会 |
添付資料ファイル |