食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06450270303
タイトル 米国農務省動植物検疫局(USDA-APHIS)、野鳥から乳牛への高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の新たな異種間伝播の発生について公表
資料日付 2025年2月7日
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分類2 -
概要(記事)  米国農務省動植物検疫局(USDA-APHIS)は2月7日、野鳥から乳牛への高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の新たな異種間伝播(spillover)の発生について公表した。概要は以下のとおり。
1. 背景
 2024年3月、USDAは米国の乳牛群間で広がっているHPAIの初発例を確認した。これは、酪農業者から、その前の2~3か月間にわたり泌乳牛において異常な疾病が見られるという報告を受けたものであった。USDAが実施したウイルスの全ゲノム配列決定及びモデリングにより、HPAI H5N1(クレード2.3.4.4b、遺伝子型B3.13)ウイルスの野鳥から乳牛への1度の異種間伝播が、2023年10月から2024年1月の間に発生した可能性が高いことが示唆された。それ以降、連邦、州、及び産業界の関係機関が協力して乳牛におけるHPAIの脅威に対処し、2件の連邦命令と全国乳検査戦略(National Milk Testing Strategy(NMTS))の実施につながった。
 各州は2024年12月にNMTSへの登録を開始し、州全体のバルクタンクサーベイランス及び/又は乳加工工場のサイロモニタリングを継続又は現在実施している。ネバダ州は、加工工場のサイロから採取した乳検体のHPAI検査を含む国家サイロモニタリングプログラムに最初に参加した州の1つである。この検体採取計画は、全てのグレードA生乳(raw milk、加熱殺菌処理されていない乳)サイロを6か月以内に4回検体採取することを義務付ける、米国食品医薬品庁(FDA)の既存の規制プログラムと一致するものである。
2. 当該検出
 ネバダ州では、2025年1月6日及び7日に収集された11のサイロ検体のうち3検体が、1月10日に国立獣医学研究所(NVSL)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でHPAI陽性と判定された。ネバダ州に通知され、最大12の酪農場(同じ地理的地域内)が影響を受けたサイロに乳を供給していた可能性があるため、発生源を追跡するための調査が開始された。1月17日、規制当局は、疑いのある酪農場から農場内のバルク乳検体を収集し、全米動物衛生研究所ネットワーク(NAHLN)のメンバーであるワシントン動物疾病診断研究所(WADDL)に提出した。NVSLは1月24日金曜日、これらのうちの2か所の酪農場由来の検体においてPCRによりHPAIを確認した。NVSLは1月31日に全ゲノムシークエンス解析を完了し、1群由来の4つの異なるバルクタンクから採取した検体でHPAI H5N1、クレード2.3.4.4b、遺伝子型D1.1を同定した。2群目でもD1.1と一致する部分配列が示された。検出前には当該畜牛に臨床症状は見られなかったが、それ以降に報告されており、影響を受けた酪農業者は当該酪農場の近くでの野鳥の大量死亡を報告している。
 遺伝子型D1.1は、2024年から2025年の冬季に北米の4つの飛行経路を移動する野鳥の間で優勢に伝播していた株であったが、今回のネバダ州の症例は米国の乳牛でB3.13以外の遺伝子型が初めて検出されたこととなり、野鳥から泌乳牛への2件目の既知の異種間伝播となった。
3. ウイルスの疫学と起源
 2021年後半以降、北米の飛行経路の渡り鳥に6度にわたりEurasian HPAI H5N1クレード2.3.4.4bウイルスの導入があったことが記録されている(遺伝子型A1~A6)。遺伝子型D1.1はA3の再集合体(reassortant)である。遺伝子型A3は2022年4月に太平洋飛行経路に初めて出現し、2024年秋まで太平洋飛行経路でのみ検出されていた。この秋以降、野鳥サーベイランスを通じて、遺伝子型A3は4つの飛行経路全ての渡り鳥で散発的に報告されており、これまでの検出全体の3.3%を占めている。遺伝子型D1.1は、元のA3遺伝子型に由来する4つの遺伝子(ヘマグルチニン(HA)、polymerase basic 1(PB1)、マトリックスタンパク質(M)、非構造タンパク質(NS))を保持しており、その他の遺伝子は渡り鳥に見られる他の北米系統ウイルスに由来する。この遺伝子型は2024年9月に初めて検出され、北米の全ての飛行経路に急速に拡大した。D1.1は現在、渡り鳥で優勢な遺伝子型であり、2024年後半に初めて出現したにもかかわらず、2022年以降の検出総数の6.07%を占めている。
 ネバダ州の乳牛で特定された当該D1.1ウイルスは、複数の北米飛行経路の渡り鳥で最近検出された他のD1.1ウイルスと近縁であることが判明した。ネバダ州の乳牛のウイルスのヘマグルチニン遺伝子の分析では、感染性や哺乳動物宿主への適応に影響を与えると予測される変化は確認されなかった。しかし、4頭の乳牛から個別に配列決定されたウイルスにおいて、HPAIウイルスの哺乳動物適応に一般的に関連付けられているPB2 の変化(D701N)が確認された。現在までに、この変化は野鳥や家きんで見つかったD1.1ウイルスでは観察されておらず、乳牛で検出されたB3.13遺伝子型ウイルスでも見つからなかった。PB2 D701Nは、哺乳動物細胞でのRNAポリメラーゼ活性と複製効率を向上させ、感染した哺乳動物の病原性に影響を与える可能性があるため、以前から哺乳動物適応に関連付けられていた。この変化は、過去にHPAI H5のヒト症例で確認されているが、ヒト間での更なる伝播の証拠はない。哺乳類適応に関連するその他の変化は、当該ウイルス配列では確認されなかった。注目すべきことに、乳牛由来のこれらの配列決定されたD1.1ウイルスには、乳牛のB3.13遺伝子型ウイルス配列で固定されていると思われるPB2-631Lマーカーが含まれていない。NVSLは、既存の公開共有手続きに従い、直ちに当該D1.1配列情報を米国疾病管理予防センター(CDC)に提供し、分析後7日以内に米国国立生物工学情報センター(NCBI)のSequence Read Archive(SRA)に配列ファイルを投稿し、疫学情報に照らして配列を解釈し質的確認ができ次第、メタデータを追加する予定である。
4. 概要
 この検出は、このHPAIウイルス(遺伝子型D1.1)が、2023年後半から2024年初頭にかけて発生したB3.13の異種間伝播事例に続く、渡り鳥から乳牛への2度目の異種間伝播事例であることを示している。当該事例の完全な特性調査が進行中である。ネバダ州農業局は、まずNMTSに迅速に登録してアクティブサーベイランスを開始し、次に畜牛の移動によってこのウイルスが地域外にさらに伝播する前に、影響を受けた酪農場を特定して隔離するという迅速な対応を行った。これは、農場で個別に又は直接的にではなく、加工工場での乳の検体採取で重大な疾病が検出された初めての事例であり、サイロモニタリングが全国の乳牛群のHPAIを監視する効率的な方法であることを実証するものである。
地域 北米
国・地方 米国
情報源(公的機関) 米国農務省動植物検疫局(APHIS)
情報源(報道) 米国農務省動植物検疫局(APHIS)
URL https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/dairy-cattle-hpai-tech-brief.pdf
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