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資料管理ID syu06360040510
タイトル 論文紹介:「母親のPFASばく露と子孫の染色体異常の関係が解析された」
資料日付 2024年9月11日
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分類2 -
概要(記事)  論文紹介:「母親のPFASばく露と子孫の染色体異常の関係が解析された」
 Environmental Health Perspectives (2024年9月11日電子版https://doi.org/10.1289/EHP13617)に掲載された論文「母親のPFASばく露と子孫の染色体異常:子どもの健康と環境に関する全国調査 (Maternal Exposure to Per- and Polyfluoroalkyl Substances and Offspring Chromosomal Abnormalities: The Japan Environment and Children’s Study)、著者Kohei Hasegawa (Shinshu University School of Medicine、日本)ら」の概要は、以下のとおり。
 背景:最近のin vitro実験の結果から、母親のパーフルオロ及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)へのばく露が子孫の染色体異常の潜在的な環境リスク因子となるかどうかという疑問が提起されている(※訳注1)。しかしながら、これらの関連を調査する疫学研究は不足している。
 目的:本研究では、出生前のPFASばく露が子孫における染色体異常の有病率(prevalence)の高さと関連するかどうかを検討した。
 方法:全国規模の出生コホート研究である「日本の環境と子どもの研究」のデータを用い、ロジスティック回帰モデルにより、2歳までの全出生(人工妊娠中絶、流産、死産、生児)における、妊娠初期の3カ月間(first trimester)の母親の血漿中PFAS濃度と染色体異常の診断の関連を検討した。さらに、多汚染物質モデル(multipollutant model)を用いてPFASの混合物との関連を検討した。
 結果:最終的な標本は、単胎妊娠の出生24,724例で、そのうち染色体異常が確認されたのは44例であった(有病率:17.8/10,000出生)。個別に検討したところ、パーフルオロノナン酸(PFNA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)へのばく露は、染色体異常と正の関連を示し、これらの濃度が2倍になると年齢調整オッズ比はそれぞれ1.81(95%信頼区間:1.26-2.61)及び2.08(95%信頼区間:1.41-3.07)と推定された。これらの関連はボンフェローニ補正(Bonferroni correction(※訳注2))後も有意であったが、ある感度分析では調整有意閾値に達しなかった。さらに、PFAS混合物の場合、すべてのPFASの濃度が2倍になると年齢調整オッズ比は2.25(95%信頼区間:1.34-3.80)と推定され、PFOSが支配的な因子であり、次いでPFNA、パーフルオロウンデカン酸(PFUnA)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)の順で寄与していた。
 考察:本研究の結果は、母親のPFAS(特に、PFOS)へのばく露と子孫の染色体異常の関連性を示唆した。しかし、妊娠初期の女性を対象としたことから生じる選択バイアス(※訳注3)が、当該関連性を説明する可能性があるため、本研究の結果は慎重に解釈すべきである。
(※訳注1) PFASへのばく露が、マウス卵母細胞に悪影響を及ぼし、異数性(染色体の異常な数の増加)を引き起こすことが、次に示す論文などで示されている。
K.-N. Wei et al. (2021), Perfluorooctane sulfonate affects mouse oocyte maturation in vitro by promoting oxidative stress and apoptosis induced by mitochondrial dysfunction, Ecotoxicol. Environ. Saf., 225, 112807. https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2021.112807
S.-Z. Deng et al. (2021), Perfluorodecanoic acid induces meiotic defects and deterioration of mice oocytes in vitro, Toxicology, 460, 152884. https://doi.org/10.1016/j.tox.2021.152884
(※訳注2) ボンフェローニ補正は、統計学において多重比較問題を解決するための方法の一つである。多重比較問題とは、複数の仮説検定を同時に行う際に、偶然による誤検出の確率が増加するという問題である。ボンフェローニ補正は、全体の有意水準(通常は0.05)を検定の数で除することで、各個別の検定に対する有意水準を設定する。例えば、5つの仮説検定を行う場合、各検定の有意水準は0.05/5 = 0.01となる。
(※訳注3) 本研究で用いられた出生コホート研究(通称 エコチル調査)では、妊娠12週以降の妊婦が調査の対象とされていたため、それより前に流産となったケースは、調査に含まれていない。医療機関で確認された妊娠の約12~15%が流産に終わることが報告されているが(参考文献1)、エコチル調査における流産の割合は1%未満であった。胎児の染色体異常は流産の原因の一つであることを考慮すると(参考資料2)、母親のPFASばく露により染色体異常が発生していたとしても、妊娠早期に流産となった場合は、エコチル調査の対象からは除外されていることになる。調査対象者の選択におけるこのようなバイアスは、本研究で得られた結果の不確実性につながる可能性(つまり、実際にはPFASと染色体異常とは関連していない場合でも、関連があるような研究結果となる可能性)がある(参考資料3)。
(参考資料1) A. Garcia-Enguidanos et al. (2002), Risk factors in miscarriage: a review, Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol., 102, 111?119. https://doi.org/10.1016/s0301-2115(01)00613-3
(参考資料2) 日本産婦人科医会ホームページ
https://www.jaog.or.jp/note/1%ef%bc%8e%e7%b7%8f%e8%ab%96/
(参考資料3) 長谷川航平、「母親の PFAS ばく露と子どもの染色体異常:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に関するQ&A. 第1.0版(2024年9月18日)
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/pmph/pfas_ca_faq.pdf
地域 その他
国・地方 その他
情報源(公的機関) Environmental Health Perspectives
情報源(報道) Environmental Health Perspectives
URL https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/EHP13617
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