食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06310390325
タイトル 米国国立衛生研究所(NIH)、生乳(raw milk)中の感染性を有するH5N1亜型インフルエンザウイルスは熱処理により急速に減少することを示した研究について公表
資料日付 2024年6月14日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
概要(記事)  米国国立衛生研究所(NIH)は6月14日、生乳(raw milk)中の感染性を有するH5N1亜型インフルエンザウイルスは熱処理により急速に減少することを示した研究について公表した。概要は以下のとおり。
 NIHの一部である国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の科学者が実施した実験室での研究では、生乳中の感染性を有するH5N1亜型インフルエンザウイルスの量は熱処理により急速に減少した。しかし、乳製品業界で用いられている標準的な加熱殺菌処理(pasteurization)法の1つである72℃(161.6℉)で15秒間処理した場合、ウイルスレベルの高い生乳検体には、検出可能な少量の感染性ウイルスが残った。ただし、当該研究の著者らは、この結果は実験室での実験条件を反映したものであり、生乳の大規模な産業用加熱殺菌処理プロセスと同じではないことを強調している。当該研究結果は、the New England Journal of Medicine誌に掲載された。
 2024年3月下旬、米国当局はテキサス州における乳牛の間での高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)H5N1ウイルスの集団感染を報告した。現在までに12州にわたる95の畜牛群が影響を受けており、結膜炎を患った農場作業者3名のヒト感染が検出されている。これまでのところ、このウイルスがヒトからヒトへ拡散する能力を獲得したことを示す遺伝学的エビデンスは示されていないが、公衆衛生当局は包括的なパンデミック対策の一環として乳牛の状況を注意深く監視している。
 乳製品業界で用いられている加熱殺菌処理法に対する鳥インフルエンザウイルスの感受性に関するデータが限定的であることから、NIAIDのRocky Mountain研究所の科学者らは、商業的な乳製品の加熱殺菌処理で最も一般的な温度である63℃(145.4℉)及び72℃において、様々な時間で処理を行った場合の生乳中のH5N1ウイルスの安定性の定量化を試みた。当該科学者らは、モンタナ州で死体で見つかったピューマ(マウンテンライオン)の肺からHPAI H5N1を分離した。次に、これらのウイルス分離株を加熱殺菌処理していない生乳検体と混合し、その牛乳を63℃及び72℃で異なる時間、加熱処理した。その後、検体は細胞培養され、活性のあるウイルスが残っているかどうか、残っている場合はどれだけ残っているかを調べるために試験された。
 研究者らは、63℃では2.5分以内に感染性のH5N1ウイルスのレベルが著しく低下する(10の10乗分の1)ことを確認し、標準的なバルク加熱殺菌処理を30分行えば感染性ウイルスは除去されるであろうと述べている。72℃では、5秒以内に感染性ウイルスが低下する(10の4乗分の1)ことが観察されたが、3検体のうち1検体では、最大20秒間の加熱処理後にも極微量の感染性ウイルスが検出された。「この結果は、最初のウイルスレベルが十分に高かった場合、72℃で15秒の処理後でも比較的少量だが検出可能な量のH5N1ウイルスが乳中で感染性を維持する可能性があることを示している」と著者らは述べている。
 科学者らは、それらの測定結果は実験的条件を反映するものであり、商用加熱殺菌装置(commercial pasteurization equipment)において感染乳を直接測定して再現する必要があり、米国の乳供給の安全性について結論を導き出すために使用すべきではないと強調している。更に、この研究の限界の一つは、H5N1ウイルスを混入した生乳検体を使用したことだったが、H5N1亜型インフルエンザに感染した牛の生乳は組成が異なっていたり、加熱の効果に影響を及ぼす可能性のある細胞内(cell-associated)ウイルスが含まれていたりする可能性がある。著者らは、HPAI H5N1ウイルスによる胃腸感染症は数種の哺乳類において発生しているが、生乳に含まれる活性のあるH5N1を摂取することでヒトが発病するかどうかは依然不明であると結論している。
 現在までに、米国食品医薬品庁(FDA)は、エビデンス全体から見て、市販の乳の供給は安全であることが引き続き示されていると結論している。実験室のベンチトップの研究は重要で有用な情報を提供するが、現実世界の商業的な加工及び加熱殺菌処理への推論に疑問を投げかける限界がある。FDAは、38州の132の加工施設で生産された製品を代表する、17州の小売店で収集された297点の小売乳製品の初期調査を実施した。全ての検体で、活性のあるウイルスは陰性であることが確認された。これらの結果は、現実世界の状況を厳密に再現する追加研究を実施する機会を強調している。FDAは、米国農務省(USDA)と提携して、ホモジナイザーと連続フロー加熱殺菌処理装置の使用を含む加熱殺菌処理の検証研究を実施している。追加の結果は、得られ次第公開される。
 The New England Journal of Medicine(2024年6月14日電子版、DOI:10.1056/NEJMc2405488)に掲載された研究報告(correspondence)「生乳(raw milk)中の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスの63℃及び72℃での不活化(Inactivation of avian influenza A(H5N1) virus in raw milk at 63℃ and 72℃)」は、以下のURLから入手可能。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2405488
地域 北米
国・地方 米国
情報源(公的機関) 米国衛生研究所(NIH)
情報源(報道) 米国衛生研究所(NIH)
URL https://www.nih.gov/news-events/news-releases/infectious-h5n1-influenza-virus-raw-milk-rapidly-declines-heat-treatment
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