食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06290480325
タイトル 米国国立衛生研究所(NIH)、慢性消耗病(CWD)が動物からヒトに移る可能性は低いことを示す研究について公表
資料日付 2024年5月17日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  米国国立衛生研究所(NIH)は5月17日、慢性消耗病(CWD)が動物からヒトに移る可能性は低いことを示す研究について公表した。概要は以下のとおり。
 脳オルガノイドの研究により強固な種間バリア(substantial species barrier)のエビデンスが強化されている。
 ヒト脳オルガノイドモデルを用いたプリオン病に関する新しい研究により、シカ(deer)、アメリカアカシカ(elk)及びヘラジカ(moose)といったシカ科動物からヒトへのCWDの伝播を防ぐ強固な種間バリアが存在することが示唆されている。NIHの科学者らによって発表され、Emerging Infectious Diseases誌に掲載されたこの研究結果は、NIHの国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)における動物モデルを用いた数十年にわたる同様の研究と一致している。
 プリオン病は、一部の哺乳動物で見つかっている変性疾患である。これらの疾病は主に脳の機能低下を伴うが、目及びその他の臓器にも影響を与える可能性がある。タンパク質が異常な形に折りたたまれ、凝集し、同様のことが他のプリオンタンパク質にも起こり、最終的には中枢神経系を破壊するときに、疾病及び死亡が発生する。現在、プリオン病に対する予防法や治療法はない。
 CWDは、(人気のある狩猟動物である)シカ科動物に見られるプリオン病の一種である。CWDがヒトで確認されたことはないが、CWDに感染したシカの肉を喫食したヒトはプリオン病を発症する可能性があるのか?という、その伝播の可能性についての疑問は何十年も続いている。1980年代半ばから1990年代半ばにかけて、英国の畜牛で別のプリオン病、牛海綿状脳症(BSE)(狂牛病)が発生し、米国を含む他の国の畜牛でも症例が検出されたため、当該問題は重要である。その後10年間で、BSE感染牛の肉を喫食したと考えられる英国の178人が、新種のヒトプリオン病である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症し、死亡した。研究者らは後に、この疾病が感染性プリオンタンパク質で汚染された飼料を介して畜牛の間で広がったと断定した。飼料から畜牛、そしてヒトへの病気の伝播経路は英国の住民を恐れさせ、CWDなど他のプリオン病の動物からヒトへの伝播に対して世界を警戒させた。CWDはプリオン病群の中で最も伝播しやすく、シカ科動物間で非常に効率的に伝播することが示されている。
 歴史的に、科学者たちはマウス、ハムスター、リスザル、及びマカクザル(cynomolgus macaques)を用いてヒトのプリオン病を模倣し、10年以上にわたりCWDの兆候がないか動物を監視したこともあった。2019年、モンタナ州ハミルトンにあるロッキーマウンテン研究所のNIAID科学者らは、クロイツフェルト・ヤコブ病の潜在的な治療法の評価や特定のヒトプリオン病の研究のために、同疾病のヒト脳オルガノイドモデルを確立した。
 ヒト脳オルガノイドは、ケシの実からエンドウ豆までの大きさのヒト脳細胞の小さな球体である。科学者らはヒトの皮膚細胞から培養ディッシュ内でオルガノイドを培養する。脳オルガノイドの組織、構造、及び電気信号伝達は脳組織と似ている。これらは現在、ヒトの脳に最も近い利用可能な実験モデルである。オルガノイドは制御された環境で数か月間生存可能であるため、科学者らはこれらを長期にわたる神経系疾患の研究のために利用している。脳オルガノイドは、ジカウイルス感染症、アルツハイマー病、及びダウン症候群等の他の疾病を研究するためのモデルとして利用されている。
 この新しいCWDの研究(大部分は2022年と2023年に実施された)では、研究チームはヒト脳オルガノイドにヒトCJDプリオン(陽性対照)を感染させることで、研究モデルを検証した。次に、同じ実験条件を用いて、健常なヒト脳オルガノイドを、オジロジカ、ミュールジカ、アメリカアカシカ由来の高濃度のCWDプリオン及び正常な脳材料(陰性対照)に7日間直接ばく露させた。研究者らはその後、当該オルガノイドを最大6か月間観察したが、CWDに感染したオルガノイドはなかった。
 研究者らによると、これは、ヒトの中枢神経系組織がCWDプリオンに直接ばく露された後でも、感染伝播に対する強固な抵抗性あるいはバリアが存在することを示している。著者らは、少数の人々が把握されていない遺伝的感受性を有する可能性や、感染に対する障害が低い新しいプリオン株の出現の可能性が依然として残っている等の、研究の限界(limitation)を認めている。著者らは、これらの現在のデータから推論すると、CWDに感染したシカ類の肉を不注意に喫食したとしてもヒトがプリオン病に罹患する可能性は極めて低いと楽観している。
・Emerging Infectious Diseases(2024, 30(6):1193-1202、doi: 10.3201/eid3006.231568)に掲載された論文「慢性消耗病(CWD)プリオンのヒト脳オルガノイドへの伝播の欠如(Lack of Transmission of Chronic Wasting Disease Prions to Human Cerebral Organoids)」は、以下のURLから入手可能。
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/30/6/23-1568_article
地域 北米
国・地方 米国
情報源(公的機関) 米国衛生研究所(NIH)
情報源(報道) 米国衛生研究所(NIH)
URL https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-study-shows-chronic-wasting-disease-unlikely-move-animals-people
(※注)食品安全関係情報データベースに関する注意事項
本データベースには、食品安全委員会が収集した食品安全に関する国際機関、国内外の政府機関等の情報を掲載しています。
掲載情報は、国際機関、国内外の政府機関等のホームページ上に公表された情報から収集したものですが、関係する全ての機関の情報を確認しているものではありません。また、情報内容について食品安全委員会が確認若しくは推薦しているものではありません。
掲載情報のタイトル及び概要(記事)は、食品安全委員会が和訳・要約したものであり、その和訳・要約内容について情報公開機関に対する確認は行っておりませんので、その文責は食品安全委員会にあります。
情報公表機関からの公表文書については、個別項目の欄に記載されているURLからご確認下さい。ただし、記載されているURLは情報収集時のものであり、その後変更されている可能性がありますので、ご了承下さい。