食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06240460160
タイトル 英国食品基準庁(FSA)、北アイルランドにあるのネイ湖で捕獲された魚の可食肉に含まれるミクロシスチンに関する迅速なリスク評価の結果を公表
資料日付 2024年3月7日
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概要(記事)  英国食品基準庁(FSA)は3月7日、北アイルランドのネイ湖で捕獲された魚の可食肉(edible flesh)に含まれるミクロシスチンに関する迅速なリスク評価の結果を公表した。概要は以下のとおり。
 2023年夏から秋にかけ、北アイルランドのネイ湖(Lough Neagh)はシアノバクテリアの異常発生による影響を受けた。異常発生箇所から採取した水の検査により、シアノバクテリア毒素の一種であるミクロシスチンが高濃度で検出されたことが報告された。
 ウナギ(Lough of eels、訳注:ローク・ネイ・イール(Lough Neagh Eel)はEUのPGI(地理的表示保護)に認定・登録されているヨーロッパウナギ)、ローチ(訳注:コイ科)、パーチ(訳注:スズキ目)、ポーラン(訳注:サケ科)、ブリーム(訳注:コイ科)の検体が採取され、ミクロシスチン、ノジュラリン、アナトキシン、シリンドロスパーモプシン、サキシトキシンなど、様々なシアノバクテリア毒素が検査された。各検体は10尾で構成され、ブリームでは1検体の採取となった以外は、各魚種から5検体が採取された。魚は解剖され、可食肉、腸、肝臓、卵、生殖腺、エラがそれぞれ分析された。ミクロシスチンは、採取された魚の多様な部位(腸、肝臓、卵、エラ)においては様々な濃度で検出されたが、可食肉においてはいずれの魚の検体からも検出されなかった。全検体を平均すると、最も高濃度のミクロシスチンが検出されたのは腸の検体、次いで肝臓の検体であり、エラの検体や少数の生殖腺及び卵検体における濃度は低かった。その他の毒素は、どの魚の検体からも検出されなかった。
 ミクロシスチンの最初の分析は、遊離毒素の分析のみであった。しかし、タンパク質と共有結合しているミクロシスチンも生物学的に利用可能(bioavailable)であるというエビデンスがあるため、9つの魚肉検体を含む22の魚組織の検体も別の試験所に送られ、遊離したミクロシスチン及びタンパク質と結合したミクロシスチンの総濃度を測定する方法で分析された。遊離毒素の濃度が最も高かった内臓組織の検体がさらなる分析対象として選択され、魚肉検体としては、ウナギ、ローチ、ポーラン、パーチの各2-3検体が選択された。内臓検体から検出された総ミクロシスチン濃度は、測定された遊離ミクロシスチンの濃度よりもおよそ1桁高かった。しかし、ミクロシスチンは可食魚肉検体からは依然として検出されなかった。
 どの魚肉検体においても、ミクロシスチンがいかなる濃度でも存在しなかった可能性がある。しかし、消化管あるいは肝臓などの内臓の他の部位と比べ低濃度ではあるが、可食魚肉にミクロシスチンが存在することは、科学文献で報告されている(Testaiら、2016年)。ネイ湖から採取された魚の魚肉以外の部位においてミクロシスチンが検出されたことから、ミクロシスチンは魚肉にも存在したが、その濃度は分析法の検出限界未満の濃度であった可能性がある。総ミクロシスチン(遊離+タンパク質結合)の分析法の検出限界は10 μg/kg湿重量であった。
 上限食事性ばく露評価が実施された。下限ばく露評価では、ミクロシスチンが可食肉に存在しない、すなわち0 μg/kgの濃度と仮定し、上限アプローチでは、ミクロシスチンが検出限界の10 μg/kgで存在すると仮定した。実際の濃度は、これらの濃度範囲にある可能性がある。ばく露評価では、魚の高摂取者(97.5パーセンタイル)を考慮している。ウナギについては、国民食事栄養調査(NDNS)の摂取データが使用された。ローチ、パーチ、ポーラン、ブリームについては、NDNSから摂取データが入手できず、代わりにトラウト(訳注:サケ科)の摂取データが使用された。
 ミクロシスチンの毒性の標的となる主な臓器は肝臓であるが、他の臓器も影響を受ける可能性がある。毒性学的に最も研究されているミクロシスチンはミクロシスチン-LRであり、最も一般的なミクロシスチンの一つである。世界保健機関(WHO)のレビューでは、ミクロシスチン-LRの暫定耐容一日摂取量(TDI)を0.04 μg/kg体重と定めた。WHOは、総ミクロシスチンへのばく露をこの暫定TDIと比較するよう勧告しているが、ミクロシスチン各種の毒性は大きく異なる可能性が高いため、これには不確実性がある。
 総ミクロシスチンへの推定食事性ばく露量はすべて暫定TDI未満であり、これらの種の可食肉の摂取による健康への懸念はないことが示された。
 魚は、食品事業者だけでなく、遊漁を行う人々によっても、摂取目的で捕獲・調理される可能性があり、内臓除去が不完全であったり、その過程で可食肉が汚染されたりする可能性が懸念されるため、この点もリスク評価において検討され、内蔵中の総ミクロシスチン濃度が最も高かった魚の検体(腸内のミクロシスチン濃度が特に高かったローチの検体)を評価対象とした。魚の腸の肉に対する相対的比率の10%が、意図せず肉と一緒に摂取されると仮定された。このシナリオでは、食事性ばく露はほとんどの年齢層において暫定TDI未満であるか、わずかにTDIを超えるが、毒性学的に重大なものではない。さらに、このばく露シナリオでは、肉中の濃度に対して上限アプローチが用いられ、さらに内臓検体中でも最も高い濃度が用いられているため、実際に暫定TDIを超えることがあるか否かは明らかではない。全体として、魚の内臓除去が不完全であることによって、消費者が長期的に暫定TDIを大幅に超過する可能性は低いと考えられる。
 全体として、試験された魚種の可食肉の喫食によるミクロシスチンへのばく露は、魚の内臓除去が不十分な場合を含め、消費者に有害な影響を引き起こすとは予想されない。したがって、一般集団における有害反応の発生頻度は無視できる程度であり、考慮に値しないほど稀であると考える。
 ネイ湖の魚由来のミクロシスチンへの潜在的ばく露濃度に基づき、魚の摂取者に肝臓障害が発生したとしても、それは長期ばく露によるものであり、軽度であると考えられる。概して、ネイ湖の魚の可食肉の摂取によるミクロシスチンへのばく露の結果として起こりうる疾病の重症度は、中程度(すなわち、中程度の疾病、身体機能に異常をきたすが通常は生命を脅かすものではなく、持続期間も中程度)であると考える。
 不確実性のレベルは中程度(すなわち、利用可能なデータはいくつかあるが完全なものではない)であるが、主要な不確実性の多くはリスク評価内で対処されているため、リスク評価の結論には影響しないと考える。しかし、魚におけるミクロシスチン濃度が経時的に変化するか否かを評価するには、今後の監視が有用と考えられる。
地域 欧州
国・地方 英国
情報源(公的機関) 英国食品基準庁(FSA)
情報源(報道) 英国食品基準庁(FSA)
URL https://www.food.gov.uk/research/executive-summary-microcystins-in-fish
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