食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06200080149
タイトル 欧州食品安全機関(EFSA)、食品中の無機ヒ素のリスク評価の更新に関する科学的意見書の平易な言葉による要約を公表
資料日付 2024年1月18日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  欧州食品安全機関(EFSA)は1月18日、食品中の無機ヒ素のリスク評価の更新に関する科学的意見書の平易な言葉による要約を公表した。
●リスク評価更新の背景
・リスク管理者は、健康への有害影響を引き起こすことなく存在することが許容される最大レベルを設定するために、ヒ素等の食品汚染物質の安全性に関する助言を必要としている。
・食事や飲用水を介した無機ヒ素の慢性摂取は、皮膚、膀胱、肺のがん等の健康への有害影響を引き起こすことが知られている。
・2009年、EFSAの「フードチェーンにおける汚染物質に関する科学パネル(CONTAMパネル)」は、食品中のヒ素の存在に関する科学的意見書を採択し、これらの影響に関する明確で低レベルの健康リスクをもたらす無機ヒ素の最小量は、0.3 μg~8μg/kg体重/日であると結論した。
・2021年、EFSAは、食品中の無機ヒ素のばく露評価を公表した。
(https://doi.org/10.2903/j.efsa.2021.6380)。
●EFSAは何をするよう求められたのか?
・欧州委員会は、無機ヒ素の毒性に関する最新のばく露評価と新たに入手可能となった科学的情報を考慮し、食品中の無機ヒ素の存在に関連するヒトの健康へのリスクについて最新の評価を行うよう要請した。
・さらにEFSAは、低分子および複雑な有機ヒ素化合物に関するリスク評価、及び無機ヒ素と有機ヒ素に対する複合ばく露に関するリスク評価の提供を求められた。これらの評価は、2025年初めまでに完了する予定である。
●EFSAはどのようにこの作業を行ったのか?
・EFSAは、2009年以降に公表された無機ヒ素のハザード評価に関連するヒト及び動物に関する毒性学の論文を特定するために包括的な文献レビューを実施した。
・実験動物とヒトの間の生物学的差異に基づき、CONTAMパネルは、無機ヒ素のハザード評価に(ヒトの)疫学データのみを利用することを決定した。
・CONTAMパネルは、安全又は許容可能なばく露レベルを設定するために必要な用量反応モデリングにおいて、疫学研究の結果を使用することを可能にする手法を開発した。
・EFSAは、2023年7月24日~9月10日まで意見募集を実施し、意見をまとめる際に利害関係者のコメントを考慮した。
●制約/不確実性は何か?
・いくつかの研究において、飲用水と食品の両方からのばく露を反映する、尿中で測定された無機ヒ素のレベルに基づいてばく露が推定された。しかしながら、他の研究では飲用水中の無機ヒ素濃度を報告した。これらのような場合、報告された濃度は、ばく露されたヒトの平均体重、1日の推定水摂取量、及び食品からの追加ばく露量を用いて推定ばく露量に変換された。そのため、これが不確実性の主な原因となっている。
・また、個人間の遺伝的差異による無機ヒ素毒性に対する感受性における変動性に関しても不確実性がある。ハザードの特性評価は大規模な疫学研究の結果に基づいているため、遺伝的要因によって無機ヒ素ばく露に伴う健康への有害影響を受けやすい個人が、これらの研究において十分に反映されていない可能性がある。
●評価結果とそれらが意味することは何か。
・CONTAMパネルは、低~中程度の無機ヒ素へのばく露は、皮膚、膀胱、肺のがん、自然流産、死産、乳児死亡、先天性心疾患、神経発達への影響、虚血性心疾患、呼吸器疾患、慢性腎臓病、アテローム性動脈硬化、出生時体重の減少、皮膚病変を引き起こす可能性があると結論した。
・EFSAのリスク評価では、皮膚がんに関する症例対照研究に基づき0.06 μg/kg体重のリファレンスポイント(reference point(RP))を設定した。これは、無機ヒ素へのばく露後に皮膚がんの誘発が増加する可能性のある最低用量を保守的に見積もっている。
①このRPは、ヒトにおけるその他の健康への有害影響に対しても保護的である。
②これは、2009年のCONTAMパネルの科学的意見書で設定されたRPの範囲(0.3~8μg/kg体重/日)よりも低い。
・無機ヒ素は遺伝毒性を有する発がん物質であるため、リスク評価において、2021年のばく露評価で得られたばく露レベルを用いてばく露マージン法を適用した。
①成人では、ばく露のマージンは、平均的な消費者で2.0~0.4、高レベルの消費者で0.9~0.2の範囲である。
②リスク評価の不確実性を考慮しても、CONTAMパネルは、これらのばく露マージンは健康への懸念を提起すると結論した。専門家らは、無機ヒ素の高濃度消費者(95パーセンタイル)が皮膚がんを発症するリスクが増加する確率は69 %であると推定している。
・全体として、食品中の無機ヒ素への消費者のばく露は健康上の懸念を提起する。この知見は、2009年のEFSAによる前回の評価結果を裏付ける。
●主な勧告事項は何か。
・更新されたリスクアセスメントでは、いくつかのデータギャップを特定し、以下の点についてさらなる調査と研究を勧告する:
①ヒ素がDNA損傷を引き起こすことは知られているが、その根底にある分子メカニズムを調査する必要がある。
②ヒ素に関連した健康状態に対する感受性における個人差の役割について、さらなる理解が必要である。
③ヒ素がどのようにエピジェネティックな(epigenetic)(※訳注)変化をもたらすのか、及びばく露集団における関連疾患リスクについて調査する必要がある。
④無機ヒ素によって誘発されるエピジェネティックな変化と遺伝的変化の相互作用をさらに研究する必要がある。
⑤ヒ素への出生前及び周産期ばく露の健康への影響と、幼少期に発生する、ヒ素が誘発する変化が成人期の疾病リスクにどのように影響するかについてさらに調査する必要がある。
・これらに加え、リスク評価におけるヒトデータの使用に関するガイダンスをさらに作成する必要がある。これは特に、疫学データのベンチマークドーズモデリングを実施する場合や、疫学データに基づく遺伝毒性発がん物質の定量的リスク評価が必要な場合にあてはまる。
(※訳注)エピジェネティックス(epigenetics)は、細胞分裂を経て継承される、DNA塩基配列に依存しない遺伝子機能の変化などを研究する学問領域のことである。
地域 欧州
国・地方 EU
情報源(公的機関) 欧州食品安全機関(EFSA)
情報源(報道) 欧州食品安全機関(EFSA)
URL https://www.efsa.europa.eu/en/plain-language-summary/update-risk-assessment-inorganic-arsenic-food
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