食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu05950790149
タイトル 論文紹介: 「産業用ヘンプを給餌した乳牛におけるカンナビノイド類の乳への移行は、急性参照用量超過するΔ9-THCばく露となる可能性がある」
資料日付 2022年11月14日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  nature food(11月14日電子版、volume 3
, 921?932 (2022)
, https://doi.org/10.1038/s43016-022-00623-7)に掲載された論文「産業用ヘンプを給餌した乳牛におけるカンナビノイド類の乳への移行は、急性参照用量超過するΔ9-THCばく露となる可能性がある(Transfer of cannabinoids into the milk of dairy cows fed with industrial hemp could lead to Δ9-THC exposure that exceeds acute reference dose)、著者Bettina Wagner(German Federal Institute for Risk Assessment(BfR)、ドイツ)ら」の概要は以下のとおり。
 ヘンプ(Cannabis sativa)の生産は、20世紀前半に世界的に禁止されたことから、安価で環境に優しく、汎用性の高い作物としてのポテンシャルにも関わらず、産業及び農業の傍流に追いやられてきた。近年の大麻規制の改正が契機となり、産業用ヘンプ・セクターは急速に拡大し、新たなヘンプ由来製品が多数市場にもたらされている。ヘンプは、動物及びヒトのエンドカンナビノイド系に作用するカンナビノイド類を含有するため、近年の普及は、消費者安全に関わる問題を提起している。カンナビノイドの一部は、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)を代表格として向精神作用を有するが、カンナビジオール(CBD)のように薬理作用のみの物質もある。欧州連合では、Δ9-THC含有量が最大0.2%までの産業用ヘンプの栽培が許可されている。2021年から欧州連合では、最大含有量を0.3%とする引き上げが開始されている。
 ヘンプ栽培の副産物や植物全体が飼料原材料として使用される場合、動物由来食品にカンナビノイド類が移行すると考えられる。現在までのところ数件の事例報告はあるものの、飼料から乳に移行するΔ9-THCに関する実験データは極めて乏しく、適用されている分析技術では、多くの場合、向精神活性性Δ9-THCとその非向精神活性前駆体であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール酸(Δ9-THCA)の識別は不可能である。ヘンプにおいて、Δ9-THCAは最大でΔ9-THCの9倍量含有される可能性を考慮すると、両物質の識別は、移行プロセスを理解し、リスク分析を実施するために極めて重要となる。
 本論文では、搾乳牛に産業用ヘンプ・サイレージを給餌した際の影響に焦点を当て、カンナビノイド類の牛乳への移行を定量し、動物衛生及び消費者の健康に対するリスクを判定した。乳、血漿、糞便を収集・分析し、生理学的パラメーターを測定し、動物の行動を観察した。液体クロマトグラフィー - タンデム質量分析(HPLC-MS/MS)ベースの分析手法を適用して、多様なマトリックスに含有されるΔ9-THCとΔ9-THCAを確実に識別し、カンナビノイド類、Δ8-テトラヒドロカンナビノール(Δ8-THC)、Δ9-テトラヒドロカンナビバリン(Δ9-THCV)、CBD、カンナビノール(CBN)、カンナビジバリン(CBDV)、Δ9-THC代謝物2種・11-ヒドロキシ-Δ9-THC(11-OH-THC)及び11-ノル-9-カルボキシ-Δ9-THC(THC-COOH)の定量に成功した。得られたデータ利用し、予測トキシコキネティック モデルを開発した。本モデルは、他のばく露シナリオのシミュレーションや、産業用ヘンプを乳牛用食餌サプリメントとして使用する際の多様なカンナビノイド類の牛乳への移行を評価する目的に活用可能である。
 本研究から、葉・花・種子に由来するカンナビノイドに富む産業用ヘンプ・サイレージの給餌により、乳牛の飼料摂取量及び乳量が減少することが示された。また、心拍数、呼吸数、動物の行動にも悪影響が認められた。ヘンプ植物全体に由来するカンナビノイド含有量の低い産業用ヘンプ・サイレージを給餌した場合、乳牛の健康やパーフォーマンスに影響は見られなかった。しかしながら、本実験では、トウモロコシ・サイレージの一部を産業用ヘンプ・サイレージに置換しているため、食餌中カンナビノイド以外の他の要因(栄養組成の変化、他の植物二次代謝化合物)を完全に排除することはできない。我々が開発したHPLC-MS/MSベースの分析法は、カンナビノイド濃度の高精度定量が可能であり、向精神作用を有するΔ9-THCと向精神作用を示さないΔ9-THCAを識別可能であった。トキシコキネティック・モデリングから、検討したカンナビノイド類の飼料から乳への移行率は1%未満であった。しかしながら、飼料が大量に摂取されるため、牛乳中のΔ9-THC濃度は相当に高く(Δ9-THCの飼料 - 牛乳移行率: 0.20% ± 0.03%)、本稿にて提示した移行特性に基づくばく露シナリオでは、一部の集団では、ばく露量がARfDを超過する可能性がある。他のカンナビノイド、中でも、産業用ヘンプに大量に含有されるCBD(そのため、給餌により牛乳にも含まれる)に関しては、現時点ではデータが不十分であり、潜在的な健康リスクを評価できない。
地域 欧州
国・地方 EU
情報源(公的機関) 欧州食品安全機関(EFSA)
情報源(報道) nature food(11月14日電子版、volume 3 , 921?932 (2022))
URL https://www.nature.com/articles/s43016-022-00623-7#ref-CR4
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