食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06540880535
タイトル 英国毒性委員会(COT)、「食品中に含有されるT-2トキシン及びHT-2トキシンのリスクに関する第一次声明案」を公表 (前半1/2)
資料日付 2025年7月8日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  英国毒性委員会(COT)は7月8日、2025年7月15日会合用の協議事項及び文書として、「食品中に含有されるT-2トキシン及びHT-2トキシンのリスクに関する第一次声明案」を公表した(TOX/2025/26、PDF版82ページ)。概要は以下のとおり。
《背景》
 かび毒であるT-2トキシン及びHT-2トキシンは、2018年及び2021年に、「食品、消費者製品及び環境中の化学物質の毒性に関する委員会(英国毒性委員会(COT))」により評価されており、それぞれ、乳幼児の食事中の含有量及びかび毒への複合ばく露の潜在的な影響が検討された。
 2020年、欧州委員会(EC)は、食品中に含有されるT-2トキシン及びHT-2トキシンに関し、欧州委員会勧告2013/165/EUにて規定されていた現行の指標値(indicative level)よりも低い最大基準値(maximum levels(ML))の設定を提案した(訳注参照)。当該提案を受け、欧州連合(EU)では2024年7月1日から最大基準値が施行されている。当該最大基準値は、T-2トキシン及びHT-2トキシンの総計に対してのみ設定されている。T-2トキシン及びHT-2トキシンの修飾体(ネオソラニオール(NEO)や4,15-ジアセトキシシルペノール(DAS)等)については、発生データが限定的であり、適切な標準的分析手法が存在しないことから、最大基準値は設定されていない。
 EUの新たな最大基準値を踏まえ、COTは英国食品基準庁(FSA)から、食品中に含有されるT-2トキシン及びHT-2トキシンが英国消費者に及ぼすリスクを評価するよう要請された。本作業の一環として、COTは2023年2月に「欧州食品安全機関(EFSA)及びFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)が設定したT-2トキシン及びHT-2トキシンに対する既存の健康影響に基づく指標値(HBGVs)」を検討している(TOX/2023/04)。
 食品に由来するT-2トキシン及びHT-2トキシンのリスク評価においてCOTを支援するため、FSAとスコットランド食品基準庁(FSS)は、2023年7月から2023年10月にかけてエビデンス募集を実施している。当該データコールは、圃場から小売段階に渡る穀物サプライチェーンからのデータ収集に焦点が当てられていた。T-2トキシン及びHT-2トキシンは動物由来製品から検出されたこともあり、飼料汚染の結果であると推測されているが(EFSA, 2017)、当該データコールにおいては食肉及び乳製品の発生データは対象としなかったため、本声明案には含まれていない。T-2トキシン及びHT-2トキシンへのばく露に焦点を当てたディスカッション・ペーパーは、COTからのフィードバックを受けた後、2024年7月(TOX/2024/24)及び2025年3月(TOX/2025/14)にCOTに提出された。
 本第一次声明案(附属書A)では、食品中に含有されるT-2トキシン及びHT-2トキシンのリスクに関し、穀粒の摂取、及び、入手可能な場合には穀粒製品の摂取に由来するばく露に着目して議論される。ばく露情報に関する全ての表(TOX/2025/14にて言及されている)は、補足情報として附属書Bに収載される。
「TOX/2025/26 附属書A」
《健康影響に基づく指標値(HBGVs)》
 2022年、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は以下のHBGVsを設定している。
 ・ T2・HT2・DASに対するグループ急性参照用量(ARfD): 0.32 μg/kg体重
 ・ T2・HT2・DASの各々あるいは組み合わせに対するグループ耐容一日摂取量(TDI): 0.025 μg/kg体重
 2017年、EFSAは以下のHBGVsを設定している。
 ・ T2・HT2・ネオソラニオール(NEO)に対するグループARfD: 0.3 μg/kg体重
 ・ T2・HT2・NEOに対するグループTDI: 0.02 μg/kg体重
 2023年2月、COTは、EFSA及びJECFAが設定したT-2トキシン及びHT-2トキシンに関する上記のHBGVsをレビューし、今後のリスク評価についてEFSAのHBGVsを引き続き適用することに合意している。
《結論》
 COTはFSA及びFSSから、オート麦、小麦、大麦及びそれらから派生する製品の摂取に由来するT-2トキシン及びHT-2トキシンが英国国民に及ぼすリスクを評価するよう要請されている。
 食用に供されるオート麦の未加工穀粒には殻(hull)があり、当該部位が最も汚染され易い。しかしながら、この殻は加工時に除去されるため、いわゆる「脱殻(‘de-hulling)」工程により汚染量は大幅に低減される。ばく露計算に適用される「低減係数(reduction factor)」は、未加工穀物の穀粒が加工、すなわち脱殻されると、T-2トキシン及びHT-2トキシンの含有量が低下すると期待されることを考慮するものである。非加熱喫食用調理済み食品(Ready-to-Eat Food、RTE食品)を除くオート麦については、複合オート麦(低減係数(85%)を乗じた未加工オート麦、及び、加工オート麦)が最も現実的なばく露シナリオであることが証拠立てられている。
 FSA及びFSSのエビデンス募集を通じて受理されたデータによると、97.5パーセンタイルの摂取量におけるオート麦(複合)への慢性ばく露量は、乳幼児においては毒性学的懸念となる一方、小児及びベジタリアンにおけるばく露量は望ましくない程度ではあるが、健康への懸念に繋がる可能性は低い。平均慢性ばく露量及び全ての急性ばく露量は、毒性学的懸念とはならない。これは、乳児の食事におけるT-2トキシン及びHT-2トキシンのリスクに関するCOTの結論(2018年)と一致する。2015年にFSAが実施したオート麦を主原料とする製品を対象とするかび毒調査に基づくと、全ての急性ばく露量はEFSA設定のグループ急性参照用量(ARfD、0.3 μg/kg体重)を下回り、よって、毒性学的懸念とはならないが、慢性ばく露量はEFSA設定のグループ耐容一日摂取量(TDI、0.02 μg/kg体重)を超過する。したがって、健康への影響を完全に排除することはできない。本結論は、「複合オート麦及び全ての加工穀粒」(パラグラフ68 - 70)記載の情報と関連している。

(後半の内容:https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu06540881535)
地域 欧州
国・地方 英国
情報源(公的機関) 英国毒性委員会(COT)
情報源(報道) 英国毒性委員会(COT)
URL https://cot.food.gov.uk/Cover%20paper:%20First%20draft%20statement%20on%20the%20risk%20for%20T-2%20and%20HT-2%20mycotoxins%20in%20food