食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06500591294
タイトル 世界保健機関(WHO)、人獣共通感染症のインフルエンザに関する概要及びリスク評価報告書(2025/3/20~4/22)を公表(鳥インフルエンザA(H5)ウイルス) (後半2/2)
資料日付 2025年4月22日
分類1 -
分類2 -
概要(記事) (前半の内容:https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu06500590294)

3. A(H5N1)、メキシコ
 2025年4月2日、メキシコはドゥランゴ州の小児の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染による検査確定ヒト症例をWHOに報告した。当該患者には基礎疾患はなく、渡航歴もなかった。3月7日に発症し、3月13日に呼吸不全のため入院、4月8日に呼吸器合併症により死亡した。
 3月18日に採取された鼻咽頭スワブ検体は、リアルタイムRT-PCRによりA型インフルエンザ陽性と判定されたが、亜型判定はできなかった。この結果は、モンテレイのメキシコ社会保険庁(IMSS)北西部生物医学研究センター(CIBIN: Centro de Investigacion Biomedica del Noroeste)で確認され、同時にパラインフルエンザウイルス3型も検出された。3月31日に当該検体は中央疫学研究所(LCE: Laboratorio Central de Epidemiologia)に送られ、そこでインフルエンザA(H5)と分子学的に同定された。4月1日に当該検体は疫学診断・基準研究所(InDRE: Instituto de Diagnostico y Referencia Epidemiologicos)に送られ、RT-PCRによってインフルエンザA(H5N1)陽性が確認された。この検体はさらなる特性評価により、鳥インフルエンザA(H5N1)クレード2.3.4.4b遺伝子型D1.1ウイルスであることが確認された。遺伝子型D1.1は、現在アメリカ大陸で最も頻繁に検出される遺伝子型であり、野鳥や家きんに感染し、過去のA(H5N1)ウイルスのヒト感染例を含め、哺乳類においても検出されている。
 当該症例の感染源は現在も調査中である。症例の接触者の多くから採取された上気道検体は、インフルエンザA(H5N1)陰性であった。現在までのところ、この症例に関連する追加のインフルエンザA(H5N1)のヒト感染例は確認されていない。
 メキシコ食品衛生安全品質管理局(SENASICA)の情報によると、2022年1月から2024年8月までの間に、メキシコの様々な地域にわたり、A(H5N1)ウイルスによる家きんの集団感染が75件報告されている。2025年にも、ドゥランゴ州の動物園の飼育鳥類と野鳥から高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)A(H5N1)が検出されている。
 本症例はメキシコで2番目に報告された鳥インフルエンザA(H5)のヒト感染例であり、同国では初めてのインフルエンザA(H5N1)ウイルス感染による確定症例である。メキシコでは2024年に1人の人物においてインフルエンザA(H5N2)が検出されている。
4. A(H5N1)、ベトナム
 2025年4月22日、ベトナムは、タイニン省の小児の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染による検査確定ヒト症例をWHOに報告した。当該患者は2025年4月11日に発熱、頭痛、嘔吐を呈し、同日病院を受診した。4月13日、患者はホーチミン市(HCMC)の3次小児病院に入院し、脳炎と診断された。2025年4月21日時点で、患者は臨床的に改善が見られている。
 4月13日及び16日に脳脊髄液(CSF)検体が採取された。4月16日、検査によりA(H5N1)ウイルス検出の可能性が示され、抗ウイルス剤による治療が開始された。4月17日、鼻咽頭(NP)スワブ検体が採取され、4月13日に採取されたCSF検体とともに、RT-PCR検査のため、ホーチミン市の熱帯病病院(Hospital of Tropical Diseases)のオックスフォード大学臨床研究ユニット(OUCRU: Oxford University Clinical Research Unit)に送られた。同日、病院は、RT-PCR検査のため、NPスワブ検体と4月16日に採取したCSF検体をホーチミン市のパスツール研究所(PI)に送付した。CSF検体はインフルエンザA(H5N1)陽性と判定されたが、NP検体は両研究所でインフルエンザA(H5N1)陰性と判定された。OUCRUが実施したゲノム配列解析により、当該ウイルスはH5亜型HAクレード2.3.2.1eに属することが示された。パスツール研究所のゲノム配列解析の結果は、報告時点では出ていない。
 発症前の2週間に、患者は居住する村で約50羽の鶏の埋葬に立ち会った。報告時点では、患者の居住地域において、他の家きんの死亡事例の発生は報告されていない。患者の居住地付近の家庭の鶏から採取された検体はA(H5N1)ウイルス陰性であった。疫学的症例調査では、患者の濃厚接触者からは追加の症例は発見されなかった。
 国際獣疫事務局(WOAH)への報告によると、アメリカ大陸、アジア及び欧州の野鳥及び飼育鳥類において、様々なインフルエンザA(H5)亜型のウイルスが継続的に検出されている。また、海生哺乳類や陸生哺乳類を含め、ヒト以外の哺乳類の感染も報告されている。HPAI A(H5)ウイルスに罹患した鳥類及び哺乳類種のリストは国際連合食糧農業機関(FAO)が保持している。
・リスク評価
(1)鳥インフルエンザA(H5)ウイルス感染による更なるヒト症例の現在の世界的な公衆衛生上のリスクは?
 現在までのヒト症例のほとんどは、例えば感染した家きん又は生きた家きん市場等の汚染された環境、また時には感染した哺乳類や汚染された環境との接触を通じてA(H5)ウイルスにばく露された人々の感染である。当該ウイルスは、ヒトが接触する動物や関連環境中で検出され続けており、このようなばく露に関連する更なるヒト症例の発生が予想されるが、それは稀である。更なる症例が検出されたとしても、公衆衛生上の影響はごく小さい。新たなヒト症例による現在の全体的な世界的公衆衛生リスクは低い(low)。
(2)現在蔓延している鳥インフルエンザA(H5)ウイルスがヒトからヒトへ持続的に伝播する可能性は?
 最近報告された鳥インフルエンザA(H5)のヒト感染に関連した持続的なヒトからヒトへの伝播は確認されていない。2007年以降、A(H5N1)ウイルスのヒトからヒトへの伝播は報告されていないが、調査においてはギャップが存在する可能性がある。2007年以前では、医療従事者が関係したものも含む、ヒトにおける小規模なA(H5)ウイルス感染クラスターが報告され、これらにおいては限定的なヒトからヒトへの伝播は否定できなかったが、持続的なヒトからヒトへの伝播は報告されていない。
 入手可能なエビデンスでは、蔓延しているインフルエンザA(H5)ウイルスはヒト間での効率的な伝播能力を獲得していないことが示唆されているため、今のところ、現時点での持続的なヒトからヒトへの伝播の可能性は低いと見られる。
地域 その他
国・地方 その他
情報源(公的機関) 世界保健機関(WHO)
情報源(報道) 世界保健機関(WHO)
URL https://www.who.int/publications/m/item/influenza-at-the-human-animal-interface-summary-and-assessment--22-april-2025