食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu06320131535
タイトル 英国毒性委員会(COT)、ビスフェノールAに関するポジションペーパーを公表 (後半2/2)
資料日付 2024年7月19日
分類1 -
分類2 -
概要(記事) (前半の内容:https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu06320130535)

 BfRは、免疫学的研究は、影響の大きさと用量反応に関して一貫性がなく、研究の計画および報告において欠点があると考えた。Th17細胞の増加は中間的なエンドポイントに過ぎず、ヒトに関連する用量範囲における最終的(apical)な影響との因果関係が不明であることから、BfRは、ヒトにおける免疫学的影響が生じるとしても、EFSAのTDIのばく露範囲ではBPAに起因する可能性は低いと考えた。そのため、BfRは、雄性生殖系への影響(すなわち、精子の数および運動性の減少、精子の生存率、精子の形態、精巣の組織学的および重量の変化)を最も感度の高いエンドポイントと考え、ラットを用いた 2つの研究で観察された精子数の減少に基づいてTDIを導出した。これら2つの研究についてBMDモデリングによる用量反応解析を行った結果、1つの研究についてはBMDL10として26 μg/kg体重/日が得られたが、もう1つの研究のデータはBMDモデリングのためのBfRの基準を満たしていなかった。そのため、無毒性量(NOAEL)は50 μg/kg体重/日であることが確認された。
 EFSAは決定論的不確実性解析法を適用し、不確実性の単一点推定値(single point uncertainty estimates)を導出し、複数の仮定を組み合わせ、PoD (point of departure)に適用してTDIを導出した。BfRは確率論的不確実性解析法を適用し、確率論的分布の範囲を使用し、値が増減するような両方向の不確実性を考慮し、不確実性解析とTDIの導出を統合した。EFSAとは対照的に、BfRは不確実性解析におけるTDIの導出に単一のHED因子を適用せず、ヒトにおける個人差(interhuman variability)や研究が行われた期間などの一般的な不確実性とともに、HED因子の5パーセンタイル値、95パーセンタイル値および中央値を適用した。
 評価の保守性(conservatism)により、BfRは、結果として得られた0.2 μg/kg体重/日のTDIは、信頼性95%で、集団の99%を保護すると考えた。このTDIは、中間エンドポイントを含むその他の関連する影響/毒性学的エンドポイントに対しても保護的であると考えられた。BfRは、BPAがヒトに免疫学的な有害影響を及ぼすとしても、それがTDIの範囲内のばく露量である可能性は低いと考えている。
 COT の見解
 EFSAの最終見解とEMAおよびBfRの見解の相違は、COTの2023年5月の会合で議論された。COTは、EMAとBfRが提起した科学的問題が、公開協議と5月の会合でCOTが強調した懸念およびコメントと一致していることに留意した。
 COTは、EFSAの意見書にはHBGV導出のためのPoDを導き出すためにどのようにエビデンスが統合されたかについての透明性が欠如していると考えた。
 EFSAは、研究の取り込みとその後のデータ評価を特定の期間に制限するという所定のプロトコルを利用した。COTは、その規模の大きさから、BPAに関するデータベースをすべて評価することは不可能であり、他の研究にも同様に不確実性があることを認めたが、BPAについてはより広範なデータセットが利用可能であったため、関連するエンドポイントの選択に関する評価だけでなく、HED因子の導出においても考慮されるべきであったと考えた。COTはさらに、中間エンドポイントがHBGVの導出に十分な頑健性を持つかどうかについて疑問を呈し、特にTh17細胞の割合の増加が、新しいHBGVの導出に利用される科学的に適切で頑健な中間エンドポイントであるというEFSAの評価には同意しなかった。当該エンドポイントに関する不確実性を考慮すると、HBGVの根拠となる、より一層信頼性が高く適切なエンドポイントを導き出すために、より広範なデータセットに対して、より強固なWoEアプローチとエビデンスの統合を適用すべきであった。
 BfRによる雄性生殖系エンドポイント、すなわち、精子の数と運動性、の使用は、COTの以前の評価で用いられた重要なエンドポイントと一致していた。COTは、BfRがTDIの導出にかなりのレベルの保守性を加えたことに同意したが、全体的な評価では不必要な保守性は回避されていると判断した。
 EFSAは2015年に、tTDIとその時点で推定されたばく露量を比較し、食事性ばく露による健康への懸念はいずれの年齢層にもなく、BPAへの総ばく露による健康への懸念は低いと結論した。EFSAの最新の意見書では、EFSAはばく露評価の実施を明確に求められていなかったため、2015年に推定されたばく露量を使用しており、使用されたデータは消費者の現在(すなわち、2023年)のばく露量を正確に反映していない可能性があることを指摘している。BfRとCOTはいずれも、このアプローチに内在する不確実性に同意したが、BfRは評価においてばく露評価を実施しておらず、BfRとCOTはともに、消費者に対する潜在的リスクを完全に評価するためには最新の汚染レベル(occurrence level)が重要であることを強調した。
 結論と次のステップ
 COTは、前回のレビュー以降に得られたBPAに関する新たなエビデンスを検討し、この新たなエビデンスを考慮するためにTDIを修正する必要がある可能性はあるものの、WoEは、EFSAが導き出した結論、またはEFSAが導出したような低いTDIを支持しないことに同意した。COTは、EFSAの評価でTDIの基礎として選択された中間エンドポイントに懸念を持っていた。
 COTは、データベースの規模を考慮すると、WoEアプローチと透明性のあるデータ統合を伴うBPAのリスク評価の実施は、簡単な作業ではないことを認めている。COTは、消費者保護を適時に保証するために、2023年にBfRが実施した評価も検討し、BfRが選択したエンドポイントおよび適用したアプローチは、EFSAが使用したものよりも科学的に確実かつ適切であると結論した。したがって、COTは、BfRが導出したTDI 0.2 ug/kg体重/日を採用することに同意した。
 COTは、TDIの基礎としてより適切なエンドポイントを特定できなかった。COTは、EFSA意見書とBfRの評価書に関する議論、エビデンスベースの評価、BfRが導出したTDIを採用するための審議の詳細について、追って補足文書を発表する予定である。
 EFSAおよびBfRと同様に、COTは、入手可能な最新のばく露データが2015年のEFSA意見書より前のものであることを強調した。完全なリスク評価を実施するためには、COTは最新のばく露データを必要とし、これによってCOTは、英国国民における現実的なばく露と潜在的なリスクを完全に評価できるようになる。
地域 欧州
国・地方 英国
情報源(公的機関) 英国毒性委員会(COT)
情報源(報道) 英国毒性委員会(COT)
URL https://cot.food.gov.uk/Position%20paper%20on%20bisphenol%20A