評価書詳細

項目 内容 添付資料ファイル
評価案件ID kya20051231139 -
評価品目名 日本における牛海綿状脳症(BSE)対策について -中間とりまとめ- -
評価品目分類 プリオン -
用途 -
評価要請機関 食品安全委員会 -
評価要請文書受理日 - -
評価要請の根拠規定 -
評価目的 牛から人へのBSEプリオンの感染リスクの低減効果を検討する目的で、我が国におけるBSE対策(管理措置)を検証し、今後の対策に活かすための食品健康影響評価 -
評価目的の具体的内容 -
評価結果通知日 2004年9月9日 -
評価結果の要約 ①今後、我が国において、さらにBSE感染牛が確認される可能性があると推定されるが、これらのBSE感染牛が食物連鎖に入り込んだ結果として、人への感染を起こすリスクは、現在のSRM除去及びBSE検査によって、効率的に排除されているものと推測される。
②検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、現在の全月齢の牛を対象としたSRM除去措置を変更しなければ、それによりvCJDのリスクが増加することはないと考えられる。しかしながら、検出限界程度の異常プリオンたん白質を延髄閂部に蓄積するBSE感染牛が、潜伏期間のどの時期から発見することが可能となり、それが何ヶ月齢の牛に相当するのか、現在のところ断片的な事実しか得られていない。ただし、我が国における約350万頭に及ぶ検査において発見されたBSE感染牛9頭のうち、21、23ヶ月齢の2頭のBSE感染牛が確認された事実を勘案すると、21ヶ月齢以上の牛については、現在の検査法によりBSEプリオンの存在が確認される可能性がある。
一方、21、23ヶ月齢で発見された2頭のBSE感染牛における延髄閂部に含まれる異常プリオンたん白質の量が、WB法で調べた結果では他の感染牛と比較して500分の1から1
,000分の1と微量であったこと、また、我が国における約350万頭に及ぶ検査により20ヶ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。
③検査法については、今後とも改良が行われるべきものと考えられ、検出限界の改善や、牛の生体から採取した組織、血液等を用いた生前検査法の開発等も含め、研究が進められるべきであり、その中で20ヶ月齢以下の牛に由来するリスクの定量的な評価について、今後さらに検討を進める必要がある。
④現在の知見では、SRMにBSE発症牛の体内の異常プリオンたん白質の99%以上が集中しているとされていることから、SRMの除去は人のBSE感染リスクを低減するために非常に有効な手段である。また、交差汚染防止については、感染した牛の脳0.001~1gという極微量で牛の感染源になりうるとの報告もあることから、と畜場等における適切なと畜・解体の実施を通じて交差汚染を防止することは人のBSE感染のリスクを低減する上で重要である。このため、引き続き適正なSRM除去、交差汚染防止の指導を行なうとともに、その実施状況を定期的に検証するなど、適正な実施が保証される仕組みを構築するべきである。
⑤BSE発生対策として現在行われている飼料規制により、BSE発生のリスクは極めて小さいものと考えられるが、若齢のBSE牛が確認されていることも踏まえ、飼料規制の実効性が保証されるよう行政当局によるチェックを引き続き行うことが重要である。また、トレーサビリティの担保及び検証を行うとともに、リスク牛検査について引き続き実施する必要がある。

BSE問題は、食品の安全・安心に関する問題の中で、最も国民の関心が高く、社会的影響の大きい問題のひとつである。一方、BSEは科学的に解明されていない部分も多い疾病であることも事実である。このような多面性、不確実性の多いBSE問題に対しては、リスク管理機関は、国民の健康保護が最も重要との認識のもと、国民とのリスクコミュニケーションを十分に行った上で、BSE対策の決定を行うことが望まれる。
また、厚生労働省及び農林水産省においては、BSEに関して科学的に解明されていない部分について解明するため、今後より一層の調査研究を推進するべきであり、そうして得られた新たなデータや知見をもとに適宜、定量的なリスク評価を実施していく必要があろう。
(平成16年9月9日府食第928号)
評価結果の要約補足 - -