研究情報詳細

評価案件ID cho99920151406
評価案件 低水分含量食品中における食中毒細菌(サルモネラ,腸管出血性大腸菌)の菌数変動および生存確率予測モデルの開発(研究課題番号1406)
資料日付 2016年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  本研究では低水分活性食品(いわゆる乾き物)におけるサルモネラ属菌および腸管出血性大腸菌の生存/死滅に及ぼす水分活性(Water activity, aw)の影響を詳細に検討した。Salmonella enterica 4 血清型(S. Stanley, S. Typhimurium, S. Chester および S. Oranienburg)と腸管出血性大腸菌3 血清型(Escherichia coli O26, E. coli O111 およびE. coli O157:H7)を対象として、水分活性(aw 0.22~0.93)が当該細菌の生存に及ぼす影響を、食品成分の影響を排除したプラスティック表面上および食品表面上の両面から検討した。細菌集団の食品表面上とプラスティック表面上における生残の結果から、サルモネラおよび腸管出血性大腸菌の死滅に及ぼすawの影響は0.22 < aw < 0.68 においては認められないことが明らかになった。この結果は、従来考えられてきたawと細菌の死滅速度との間に何らかの関係性がある、といった見解に反する新たな知見である。また、aw = 0.93 において顕著な死滅速度の増大を見出したことは、これまでの知見からは想定できない新規な結果である。awが比較的高い(aw = 0.8 程度)食品上で細菌の死滅が速い傾向は、他の研究結果においても報告がある。プラスティック表面上における生残結果とも合致することから、細菌は増殖限界程度の高いaw環境下(aw = 0.9 程度)において、死滅が速くなることを明らかにした。
 サルモネラおよび腸管出血性大腸菌の死滅挙動に対するawの影響は限定的であり、awを死滅挙動の予測のための環境因子とするのは不適当と考えられた。一方で、保存温度の影響が明確に認められたことから、死滅挙動の数理モデル化において保存温度を関数としてモデル化することで、保存温度の情報から死滅挙動の予測推定を検討した。しかし、プラスティック表面上における生残とそれぞれの食品表面上での生残を比較すると大きな差異が認められた。食品上に付着した細菌はawの影響以外の食品成分の影響が大きいことが示唆された。今後は、低aw食品として包括的に検討するのではなく、個別の食品(あるいは食品グループ)毎に食品成分の影響を加味した検討が課題である。
 他方、個々の細菌細胞レベル(single cell)での生存/死滅の確率予測を検討した結果、実験で供した7 血清型すべてにおいて、指数関数により、乾燥時間をパラメータとする生残確率の変化を記述するモデルを構築できた。本モデルより任意の乾燥時間において細菌の生残確率の分布を表記することが可能となった。また、全ての条件で細菌集団の生残確率推移を累積ガンマ分布でフィッティングが可能であり、細菌集団が死滅に至る時間のばらつきをガンマ分布で記述できた。温度が低いほど細菌集団の生残時間が長く、細菌集団が死滅に至る時間のばらつきが大きかった。本研究で示した細菌集団が死滅に至る時間のばらつきは、ランダムな細菌挙動を加味した予測を可能とし、少数の細菌で感染する食中毒のリスク評価に活用できる。
 以上の結果から、低水分活性食品におけるサルモネラおよび腸管出血性大腸菌の食中毒リスクを推定するために必要な、細菌数の変化ならびに、少菌数における細菌の死滅確率のばらつきをも的確に推定することを可能とした。これらの知見は今後の低水分活性食品におけるサルモネラおよび腸管出血性大腸菌のリスク評価のばく露評価において極めて重要な役割を果すことが期待される。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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