食品安全関係情報詳細

資料管理ID syu04630460482
タイトル 香港食物環境衛生署食物安全センター、「食品中のピロリジジンアルカロイド類(PAs)」に関するリスク評価研究報告書を公表
資料日付 2017年1月6日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
概要(記事)  香港食物環境衛生署食物安全センターは1月6日、「食品中のピロリジジンアルカロイド類(PAs)」に関するリスク評価研究報告書を公表した。
 本研究の目的は採取した食品中の1
,2-不飽和PAsの総和を求め、香港の成人における食事からのこれら物質のばく露量を推定すると同時に健康に及ぼすリスクを評価することである。
 PAsは植物が産生する二次代謝物で、関連する植物は世界各地に分布し、これまでに6
,000種類以上の植物で660種類を上回るPAs及びそのN-オキシド体が確認されている。PAsは分布が最も広範な自然毒で、ヒトが有毒植物を茶や伝統的な薬として使用したり、PAsを含む種子により汚染された穀物や穀物製品(小麦粉やパン)を喫食したりすると中毒になるとの報告がある。また、海外の研究では、蜂蜜・茶・乳類・卵類・動物の内臓の喫食もPAsの摂取につながることが示されている。しかし、これらの食品によりヒトが中毒を起こした事例は現時点では報告されていない。
 1
,2-不飽和PAsはその構造自体に毒性はなく、代謝により活性化され毒性を発現する。動物実験で投与された1
,2-不飽和PAsは(訳注:代謝を受けて)肝毒性、発がん性、遺伝毒性を持ち、肝臓は遺伝毒性影響が最も見られる器官であることが示されている。しかし、これまでのところPAsの摂取とヒトの発がんとの関連性を示す疫学調査データはない。
 結果及び結論は以下のとおり。
1. 結果
(1)本研究では234の食品検体(48種類の食品)について28種類の1
,2-不飽和PAsの含有量を測定した。234検体中、118検体(50%)から1種類以上の1
,2-不飽和PAsが検出された。118検体のうち大部分(91検体)は「乾燥香辛料」、「蜂蜜」、「茶葉(浸出液)」の食品群だった。この他に小麦・ライ麦粉、アヒルの卵、ヨーグルト、チーズ、茶飲料などからPAsが検出された。
(2)食品群別において、1
,2-不飽和PAsの総含有量が最も多かったのは「乾燥香辛料」で、次いで「蜂蜜」、「茶葉(浸出液)」の順に多かった。この3つの食品群の平均含有量の上限値(UB)(※1訳注)は「乾燥香辛料」が300μg/kg、「蜂蜜」が7.5μg/kg、「茶葉(浸出液)」が0.46μg/kgだった。
(3)香港の成人における食事からのPAsばく露量は、平均摂取群で0.00033~0.0015μg/kg体重/日(下限値(LB)(※2訳注)‐UB)、高摂取群で0.0015~0.0043μg/kg体重/日(LB‐UB)と推定された。食品中の総PAsのばく露マージン(MOEs)(BMDL10を182μg/kg体重/日として計算)は、平均摂取群で560
,000~120
,000(LB‐UB)、高摂取群で120
,000~42
,000(LB‐UB)だった。
(4)「茶葉(浸出液)」は市民における総PAsの主な摂取源で、総ばく露量の50.3%に達した(即ちばく露量のLBが0.00016μg/kg体重/日)。香港の成人において「茶葉(浸出液)」から受けるPAsの総ばく露量が比較的多いのは、恐らくこの食品群の摂取量が多いことに加え、その他の食品群から検出された当該物質の量が比較的少なかったためである。「穀類及び穀類製品」及び「蜂蜜」については、摂取量のLBはそれぞれ0.000079μg/kg体重/日及び0.000077μg/kg体重/日で、両者を足しても総ばく露量の約48%にすぎなかった。
(5)本研究では、「一般の茶」(即ちよく見られる完全発酵茶、半発酵茶、非発酵茶)に含まれるPAsは比較的少ないことが分かった。しかしながら、一部の「特殊な茶」(ルイボスティー、馬鞭草茶、ミントティー等)や乾燥香辛料(クミンシード、オレガノ、タラゴン等)には比較的高いレベルのPAsが含まれていた。現在のところ、香港人集団におけるこれら食品の消費モデル、汚染の原因、ロット毎にPAs含有量がどれくらい異なるのかといったデータがないため、我々はこれら製品を摂取した場合の長期リスクを単独で評価することはできない。しかし、海外の研究と比べると、本研究で「特殊な茶」に含まれていたPAsのレベルは海外より明らかに低いため(※3訳注)、香港における消費者の健康への影響は比較的低いと考えられる。
 一部の乾燥香辛料にPAsが含まれることに関しては、乾燥香辛料は通常、食品の調理過程で副材料として少量使用されることから「乾燥香辛料」中のPAsは主な摂取源にはならないと考えられる。とは言え、PAsは動物実験において遺伝毒性及び発がん作用が示されていることから、できるだけ食品中に含まれるこれら物質の量を減らすべきである。
2. 結論
 食品中のPAsの総量については、一般摂取群及び高摂取群の成人におけるばく露マージンは10
,000よりはるかに高いことから、公衆衛生上、一般市民が受ける健康影響は大きくないと言える。
 報告書の全文は以下のURLから入手可能(英語版PDFファイル44ページ)。
http://www.cfs.gov.hk/sc_chi/programme/programme_rafs/files/PA_Executive_Report_c.pdf
 報告書に関するプレスリリースは以下のURLから入手可能。
http://www.cfs.gov.hk/sc_chi/press/20170106_0738.html

【訳注】
※1. UB(upper bound):平均値を求める際に、検出限界・定量限界以下の値をそれぞれの検出限界・定量限界の値として計算した値
※2. LB(lower bound):平均値を求める際に、検出限界・定量限界以下の値を0として計算した値
※3. 香港及びEFSAの研究で示された総PAs含有量の平均値(LB‐UB)
1. 香港:ルイボスティーが1.60‐1.70μg/kg、ミントティーが0.33‐0.44μg/kg、カモミールティーが0.30‐0.43μg/kg、馬鞭草茶が0.74‐0.87μg/kg
なお、「一般の茶」については、完全発酵茶が0.088‐0.22μg/kg、半発酵茶が0.021‐0.15μg/kg、非発酵茶は全て検出限界以下
(試料はラベルの指示に従い茶葉を浸出させたもの、又はラベルの指示がない場合は茶葉(2g又は1ティーバッグ)を150mLの熱湯で5分間浸出させたもの)
2. EFSA:ルイボスティーが7.96‐8.29μg/L(2015年)、4.1‐6.3μg/ L (2016年)、ミントティーが6.59‐6.91μg/ L(2015年)、3.5‐6.2μg/L(2016年)、カモミールティーが3.63‐3.96μg/ L(2015年)、2.3‐4.8μg/L(2016年)
(試料は茶葉2gを150mLの熱湯で5分間浸出させたもの、又は乾燥物(乾燥物中のPAs濃度については実測値を係数75で除した値とした))
地域 アジア
国・地方 香港
情報源(公的機関) 香港食物環境衛生署食物安全センター
情報源(報道) 香港食物環境衛生署食物安全センター
URL http://www.cfs.gov.hk/sc_chi/programme/programme_rafs/files/PA_Executive_Summary_c.pdf
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