研究情報詳細

評価案件ID cho99920242303
評価案件 養殖水産動物における薬剤耐性指標細菌の設定及びモニタリングの試行(課題番号:JPCAFSC20232303)
資料日付 2025年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  養殖水産動物に対して抗菌薬(マクロライド系抗生物質(ML)、テトラサイクリン系抗生物質(TET)、スルフォンアミド系合成抗菌薬(SUL))が使用されるため、養殖水産動物への抗菌薬の使用により選択される薬剤耐性菌の健康影響評価が必要とされている。しかし、抗菌薬の使用と養殖水産動物由来細菌(特に健康魚由来細菌)の薬剤感受性に関する情報は圧倒的に不足している。また、指標となる細菌の設定は国際的にもなされていない。
 今回、市販養殖魚及び天然魚におけるグラム陽性菌(Lactococcus garvieae)及びグラム陰性菌(Vibrio属菌及びAeromonas属菌)の分離率、薬剤感受性及び薬剤耐性遺伝子の保有状況を明らかにし、食品健康影響評価に活用可能なばく露評価に関する情報を収集することを1つ目の目的とした。2つ目の目的として、養殖水産動物における抗菌薬の使用実態並びに海外先進地域及び日本との関連が強いアジア地域での抗菌薬使用と耐性菌モニタリングについての情報を収集し、情報を整理した。
 以上のデータをもとに、発生評価における課題の検討を含め定量的リスク評価を試みた。結果、薬剤耐性モニタリングを実施するため市販魚からのL. garvieae分離方法、Vibrio属菌分離方法を確立した。分離されたL. garvieae及びVibrio属菌を用いた薬剤感受性試験によって、マクロライド系、テトラサイクリン系抗菌薬、スルフォンアミド系合成抗菌薬に対する耐性状況を明らかにできたことから、分離と感受性試験を継続して実施することで、食品健康影響評価のばく露評価に用いることができる薬剤耐性モニタリングが可能であること、グラム陽性菌の指標菌としてL. garvieae、グラム陰性菌の指標菌としてVibrio属菌が適切であることが示唆された。
 また、特にL. garvieaeについては、薬剤感受性に関する表現型と耐性遺伝子の保有状況に明確な関連が認められたことから、将来的には、ゲノムモニタリングのデータを活用することも可能となるかもしれない。また、養殖水産動物における抗菌薬の使用実態とモニタリング実態を調査するとともに、公表データを用いて魚病の年間発生率と抗菌薬使用率を推定し、定量的な薬剤耐性発生評価の試行を実施する事ができた。
 しかし、不足するデータが多いため、今回の試行に用いた解析手法を基に、今後複数年度について評価を試行する、感度分析を実施するなど、評価を深めることが望まれる。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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