研究情報詳細

評価案件ID cho99920161501
評価案件 農薬の毒性評価における「毒性プロファイル」と「毒性発現量」の種差を考慮した毒性試験の新たな段階的評価手法の提言―イヌ慢性毒性試験とマウス発がん性試験の必要性について―(研究課題番号1501)
資料日付 2017年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  近年、農薬の毒性評価においては米国や欧州連合ではイヌ長期(1年間)毒性試験は必須とはされておらず、ICH(医薬品規制調和国際会議)に基づく医薬品申請においてマウス発がん性試験は必須とはされてない。本研究では、我が国の農薬のリスク評価において必須とされているこれら2種の試験の必要性について科学的な根拠をもとに判断を行うための考え方や必要な検討項目を提言することを目的として、食品安全委員会で評価が行われた農薬評価書をもとに毒性試験結果の解析を行った。
 イヌ長期毒性試験については、EUにおいては、イヌの感受性が高い場合には実施すべきであるとされており、米国EPA(環境保護庁)では排泄が遅く、蓄積性が高い場合に要求されるとしている。農薬評価書286剤の解析の結果、イヌ試験がADI(一日摂取許容量)の設定根拠とされた農薬は93剤(32.5%)あったが、そのうち74剤についてはイヌ長期試験を省略してもADIに大きな影響は無いと判断された。さらに他の4剤については、詳細な検査を追加することで、イヌ長期試験が不要になる可能性が考えられた。しかし、残る15剤については、イヌ長期試験が不要とは判断できなかった。結果として、イヌ長期試験については、一定の条件を満たせば省略可能であると考察された。ただし、既に試験が実施済みであれば評価に用いるべきである。一方、イヌとラットで認められる毒性所見が異なる場合や、イヌ感受性が高いと考えられる場合には、イヌ長期試験が必要と考えられた。さらに、イヌ亜急性試験において無毒性量が求められていない場合や蓄積性が懸念される場合等においては、イヌ長期試験の実施の要否について慎重に判断する必要があると結論された。
 一方、マウス発がん性試験については、いずれの海外評価機関においても試験成績の提出が要求されている。ラット、マウス双方で発がん性試験結果が得られている275剤のうち32剤がマウスでのみ発がん性を示したが、そのほとんどはヒトへの関連性が無いと判断された。また、マウス発がん性試験がADI設定根拠となった15剤の根拠所見はいずれも非腫瘍性変化であった。マウスの亜急性試験の提出は我が国では必須とはされていないが、マウス感受性の評価に有用である可能性がある。農薬のリスク評価におけるマウス発がん性試験の必要性については、農薬の規制に関する国際的動向も踏まえつつ、更なる検討が必要と結論された。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
添付資料ファイル