研究情報詳細

評価案件ID cho99920141304
評価案件 遺伝毒性発がん物質のリスク評価手法に関する研究(研究課題番号1304)
資料日付 2015年3月31日
分類1 --未選択--
分類2 --未選択--
事業概要  本研究では、食品安全委員会における食品中に含まれる遺伝毒性発がん物質の定量的リスク評価手法の検討のため 「1.in vivo 遺伝毒性試験の遺伝毒性発がん物質の定量的評価手法への適用性の検討」及び「2.国内外で採用されている遺伝毒性発がん物質の評価手法や評価事例の情報収集と専門家検討会の開催」により得られた成果をもとに我が国の食品安全委員会の役割に適合した評価指針案の提案を行った。
 in vivo 遺伝毒性試験(TG 試験)の定量的評価手法への適用性の検討においては、4種の遺伝毒性発がん物質についてTG 試験を実施した結果、発がん性とTG 変異原性は量的相関性が高く、TG 試験のBMDL10 から発がん性のBMDL10 を推測できる可能性が示された。結果から定量的評価に利用可能な発がん性試験データが無い場合でも、TG 試験データから発がん性の定量的リスク評価ができる可能性を示している。発がん性の発現が遺伝毒性に質的・量的に依存していることが明らかな場合には有効な方法と考えられるが、実用化のためにはさらなるデータの蓄積が必要と考えられた。
 一方、遺伝毒性発がん物質の評価手法や評価事例の情報収集と専門家検討会における議論をもとに、食品安全委員会における遺伝毒性発がん物質のリスク評価の原則となる評価指針案を作成した。本研究班で提案する評価指針案は、遺伝毒性試験結果から、発がん性における閾値の判断を行うための遺伝毒性評価部分と、その評価結果に応じた以降のリスク評価の方針を示すものである。遺伝毒性試験については、不可逆的な遺伝子損傷を検出する系のみを変異原性を示す試験結果として取り扱うこととし、変異原性陽性の結果が示された場合には、原則として閾値が設定できないものとして扱うこととした。また、定量的リスク評価値については、評価目的に応じて発がんスロープファクター、特定の発がんリスクレベルにおける摂取量及びMOE 評価を選択することとし、評価算出の基準となる出発点(POD)については、ベンチマークドーズ法(BMD 法)が適用可能なデータが入手できる場合は、BMD 法により算出することとした。
 本研究で提案する指針案は現時点における最新の科学的知見をもとに専門家の合意により作成されたものであり、国際的にも受け入れられる手法と考えられる。しかし、遺伝毒性や発がん性のメカニズムや閾値の問題については未解明の部分も多く、現在でも新たな研究や試験法開発が進められている。今後、新たな知見が得られた場合には、改めて議論を行う必要があると考えられた。

(注)この報告書は、食品安全委員会の委託研究事業の成果について取りまとめたものです。
   本報告書で述べられている見解及び結論は研究者個人のものであり、食品安全委員会としての見解を示すものではありません。
事業名 食品健康影響評価技術研究
実施機関 食品安全委員会
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