食品安全関係情報詳細
資料管理ID | syu06550860149 |
タイトル | 欧州食品安全機関(EFSA)、規則(EU) 2015/2283に準拠する新食品としてのイヌリン-プロピオン酸エステルの安全性に関する科学的意見書を公表 |
資料日付 | 2025年7月24日 |
分類1 | - |
分類2 | - |
概要(記事) | 欧州食品安全機関(EFSA)は7月24日、規則(EU) 2015/2283に準拠する新食品としてのイヌリン-プロピオン酸エステルの安全性に関する科学的意見書を公表した(6月25日採択、PDF版21ページ、 https://doi.org/10.2903/j.efsa.2025.9534)。概要は以下のとおり。 《背景》 欧州委員会からの要請を受け、EFSAの栄養・新食品・食物アレルゲンに関するパネル(NDAパネル)は、規則(EU) 2015/2283に準拠する新食品としてのイヌリン-プロピオン酸エステルの安全性に関し、科学的意見を表明するよう求められた。 2014年、EFSAの食品添加物及び食品に添加される栄養源に関するパネル(ANSパネル)は、食品添加物としてのプロピオン酸(E 280)、プロピオン酸ナトリウム(E 281)、プロピオン酸カルシウム(E 282)、プロピオン酸カリウム(E 283)の再評価に関する科学的意見書を公表している。イヌを用いた90日間試験を根拠とし、ANSパネルは、1%投与群において食道上皮過形成が観察されたことから、食餌中の0.3%プロピオン酸を無毒性量(NOAEL)と特定した(当該群は後に回復している)。当該濃度は、パンおよびロールパンのカテゴリーにおける、食品中のプロピオン酸-プロピオン酸塩に対する最も高い最大許容量(maximum permitted level(MPL)、3000 mg/kg)に相当する。 ANSパネルはまた、イヌを用いた90日間試験(食餌中のプロピオン酸1%)において接触部位への影響を引き起こす濃度が食品中のプロピオン酸-プロピオン酸塩の最大許容量の3倍であった点にも留意している。 ANSパネルは、唯一報告されているプロピオン酸ばく露による有害影響は接触部位にて観察され、その特性である刺激性に起因するものであることから、適正一日摂取量(adequate daily intake(ADI))を導出すべきでないと結論した。 プロピオン酸アニオンは顕著に吸収されるが、利用可能な毒性学的データベースには複数の限界が認められるものの、毒性試験において全身への影響は報告されていない。 ANSパネルの総合的な結論は、摂取される食品に関しては、現在認可されている食品添加物としての用途及び用量に規定されるプロピオン酸-プロピオン酸塩の最大用量に起因する安全性上の懸念は認められないというものであった。 《評価及び議論》 本申請の対象である当該新食品は、果糖を主成分とする天然ポリマーである多糖類イヌリン(65% - 95% w/w)を短鎖脂肪酸(SCFA)であるプロピオン酸(5% - 35% w/w)を用いてエステル化した化合物である。当該新食品は、アルカリ性かつ温度制御された条件下において、イヌリンとプロピオン酸無水物の化学反応により合成される。当該新食品の製造工程にて使用されるイヌリンは、従来の製造技術に従いチコリの根から抽出される、重合度23以上の長鎖イヌリンである。申請者によると、当該新食品の標的エステル化度は0.8、すなわち全ヒドロキシル基の26.6%がエステル化される。最終製品は、微細、非晶質結晶性の白色からオフホワイト色の粉末である。イヌリンとプロピオン酸の両構成要素は、食品に天然に存在しており、現在、欧州連合及び世界の食料供給において、多様な目的(食品添加物、食品サプリメント等)に向けて利用されている。 イヌリン-プロピオン酸エステルは、特定の食品カテゴリー(パンやロールパン、シリアルバー、フルーツスムージータイプの飲料)への使用が提案されており、5 g/1食の用量にてイヌリン-プロピオン酸エステルの摂取が意図されている。対象者は一般集団であり、乳児及び乳児用食品への使用は意図されていない。 提供された当該新食品の代謝的運命に関する研究に基づき、NDAパネルは、当該新食品はそのままでは吸収されないが、主として大腸において主要2成分、すなわち、イヌリン(非吸収性食物繊維)及びプロピオン酸(易吸収性短鎖脂肪酸)に代謝されると判断している。プロピオン酸の極一部は、結腸に入る前に当該新食品から放出され、小腸にて吸収されると考えられる。NDAパネルは、当該新食品由来のイヌリン及びプロピオン酸は、それぞれ、難消化性食物繊維及び短鎖脂肪酸としての通常の代謝的運命を辿ると判断する。 当該新食品の成分組成及び提案された使用条件を考慮すると、当該新食品の摂取は栄養学上の不利益をもたらすことはない。 イヌリンのような難消化性食物繊維の過剰摂取は、胃腸症状を除き、健康への有害影響とは関連していない。プロピオン酸の毒性については、食品添加物としてのプロピオン酸及びその塩の使用に関する安全性評価において、プロピオン酸は体内の第一接触部位にて局所的な影響を及ぼすと結論されている。イヌを用いた90日間試験にて観察された食道上皮過形成に基づき、NOAELは食餌中濃度0.3%、最小毒性量(LOAEL)は1%と導出されている。よって、NDAパネルは、提供された安定性試験により確認されている、当該新食品から放出される遊離プロピオン酸は食事中のプロピオン酸濃度を0.3%を超過して上昇させないという、提案された使用条件における当該新食品の安定性を極めて重要な知見と見なす。 以上より、安全性上の懸念を提起しない当該新食品の物理化学的特性・製造工程・代謝的運命を考慮し、かつ、プロピオン酸及びその塩がEFSAのANSパネルにより2014年に評価されている点を踏まえ、さらに、イヌリンに関する大量の安全性データが入手可能である点に鑑み、NDAパネルは当該新食品に関する遺伝毒性試験及び亜慢性毒性試験は必要ないと判断した。 提案された用途及び用量に基づくと、当該新食品の最高(95パーセンタイル)推定慢性摂取量は、ベジタリアンのサブグループにて認められた最大8.5 g/日である。 提供されたヒト試験(主として有効性エンドポイントの調査を目的として設計されている)に限界は認められるものの、NDAパネルは、最大用量20 g/日・最長12ヶ月間の投与において、当該新食品は概ね良好な忍容性を示したと考えられる点に留意する。観察された主たる有害影響は、軽度かつ一過性の胃腸症状であり、これは難消化性食物繊維類に共通の症状であり、イヌリンにて観察される症状と同程度である。 《結論》 1. 新食品としての安全性 NDAパネルは、当該新食品イヌリン-プロピオン酸エステルは、提案された使用条件下において、一般集団に対して安全であると結論する。 2. 規則(EU) 2015/2283第26条に準拠する独自データ保護 NDAパネルは、申請者が独自であると主張するバッチ間分析(イヌリン及びプロピオン酸の定量、組織内部の分析手法等)がなければ、提案された使用条件下における当該新食品の安全性に関する結論に達することはできなかったと考える。 |
地域 | 欧州 |
国・地方 | EU |
情報源(公的機関) | 欧州食品安全機関(EFSA) |
情報源(報道) | 欧州食品安全機関(EFSA) |
URL | https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/9534 |