食品安全関係情報詳細
資料管理ID | syu06540720475 |
タイトル | フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、フランス本土におけるダニ媒介脳炎の出現に関連するリスクの分析と題する意見書・報告書を公表 |
資料日付 | 2025年7月8日 |
分類1 | - |
分類2 | - |
概要(記事) | フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は7月8日、フランス本土におけるダニ媒介脳炎(tick-borne encephalitis: TBE)の出現に関連するリスクの分析と題する意見書・報告書を公表した。概要は以下のとおり。 ダニ媒介脳炎は、特定のマダニが媒介するウイルスによって引き起こされる疾病であり、フランスでは懸念が高まっている。2020年以降、生乳から作られた製品の喫食に関連した症例が報告されているが、これは、これまでフランス本土で観察されたことのない伝播様式である。この状況は、本ウイルスの存在の地理的拡大と、あらゆる伝播経路を通じた、欧州での症例数の増加を伴っている。現在までフランスでは、この感染症は依然として少ないが、健康への影響は深刻で、長期にわたる後遺症を引き起こす可能性がある。このためANSESは、本ウイルスと伝播のリスクに関する知見の現状を分析し、実施されうるリスク管理策を検討するために、この問題に取り組むこととなった。 ・時に深刻な影響をもたらす稀な疾病 フランスでは、毎年約30件のTBE症例が記録されている。当該疾病は比較的稀ではあるが、その公衆衛生上の影響は重大である可能性がある。「感染者の10~30%が、たいていインフルエンザ様の症状を発症する。徴候を示す人々のうち、20~40%が髄膜炎型の神経学的徴候を呈し、これらは長期にわたる後遺症や自律性の喪失を引き起こす可能性がある」と本評価の共同コーディネーターであるElsa Quillery氏は説明する。(後略) ・懸念される地理的拡大 複数の情報から、フランスにおけるTBEウイルス(tick-borne encephalitis virus: TBEV)の伝播リスクの高まりが懸念されている。2020年に、生乳から作られたチーズの喫食に関連した感染の最初の集団発生が、TBEVの伝播が知られていなかった一つの県で特定された。これは、フランスでこれまで報告されたことのない伝播経路であり、TBEVは主に感染したIxodes属のマダニの刺咬によって伝播する。また、TBEVの伝播範囲が拡大しており、過去の関連地域であるアルザス地方以外でも症例が報告されている。最後に、フランスを含む複数の欧州諸国で症例数が増加している。(中略) 乳を生産する動物がTBEVを保有するマダニに咬まれると、その乳が汚染されることがある。生乳及び山羊の生乳を主原料とする乳製品は、他の動物由来の乳製品よりも感染リスクが高いようである。欧州で食品媒介感染による症例の大半は、生乳及び山羊の生乳を主原料とする乳製品が原因である。オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏は、TBEVの伝播が確認され、また屋外に頻繁に出入りする山羊の飼養数が多いため、このリスクに最も関係がある。 ・予防策の改善に向けたTBEのサーベイランスの強化 TBEに対抗するための第一に挙げるべき対策は、感染が確認された地域や農場をより良く把握するために、TBEVのサーベイランスを向上させ、これらの地域で適切な予防策を展開することである。現在、当該サーベイランスは主にTBEのヒト症例の同定に基づいている。しかしながら、これらは、ある地域のTBEVの存在指標としては遅発的である。ANSESは、山羊、牛、ノロ(小型の鹿)などの家畜及び野生の指標動物種をTBEサーベイランス戦略に組み入れること、及び乳製品とマダニ自体を監視することを勧告する。 またANSESは、関係者、特に畜産業者と協議し、関連地域で伝播の回避を目的とする対策を実施するよう勧告する。乳の汚染を回避するには、例えば、森林地帯や生け垣など、マダニの生息に最も恰好な地域との接触を防ぐ柵の設置や、輪換放牧によって、反芻動物、特に乳を生産する山羊のマダニばく露を抑えることが考えられる。これらの対策は、食品媒介感染によるヒト症例の発生や、集めた乳からの感染性ウイルスの検出などの緊急事態においては、乳の加熱殺菌処理(pasteurisation)で補うことができる。(後略) ・まだ解明されていない複数の原因 TBEVの地理的拡大を引き起こす決定因子はまだ十分にわかっておらず、おそらく複数ある。TBEVを媒介するIxodes属のマダニは、地中海沿岸を除くフランス本土全域にすでに生息している。土地の細分化による家畜・ヒトのマダニとの接触の増加や、一般集団が森林に通う頻度の増加等、複数の仮説が提起されている一方で、気候変動が主導的な役割を果たしているようには思われない。 「TBEVの伝播と拡散のメカニズムについては、多くの疑問が残っている。リスクのある地域や状況をより良く特定するためには、フランスで伝播している株、伝播のリスク要因や、乳成分及び乳の加工方法が乳製品中の感染性ウイルスの生残性に及ぼす影響など、様々な側面について研究を行う必要がある。また、TBEVの検出ツールを改良し、ヒト、動物、乳製品からTBEVをより一層検出できるようにする必要がある」と同氏は結論する。 当該意見書・報告書(354ページ、フランス語)は以下のURLから閲覧可能。 https://www.anses.fr/fr/system/files/SABA2022-AUTO-0088-RA.pdf |
地域 | 欧州 |
国・地方 | フランス |
情報源(公的機関) | フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES) |
情報源(報道) | フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES) |
URL | https://www.anses.fr/fr/content/encephalite-tiques-renforcer-la-surveillance-pour-ameliorer-la-prevention-de-la-maladie |