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資料管理ID syu06510030535
タイトル 英国毒性委員会(COT)、水銀が母体の健康に及ぼす影響に関する声明書(第一草案)を公表
資料日付 2025年5月13日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  英国毒性委員会(COT)は5月13日、水銀が母体の健康に及ぼす影響に関する声明書(第一草案)を公表した。概要は以下のとおり。
 はじめに
 栄養に関する科学諮問委員会(SACN)が開始した母体の食事に関する現在の作業プログラムの一環として、COTは、ヨウ素、ビタミンD、栄養補助食品、そして鉛、水銀、カドミウム、ヒ素を含む重金属に関する文書を優先し、それぞれを個別の文書として検討することに合意した。
 2025年3月、水銀が母体の健康に及ぼす影響に関するディスカッションペーパー(TOX/2025/03)が委員会に提出された。この文書は、母体の健康に対する無機水銀とメチル水銀(MeHg)の毒性に関する利用可能なデータのレビューであり、母体への影響及び胎児または胚の発育への影響に焦点を当てられている。今回の声明書草案では、水銀の毒性に関する概要が提示されているが、ディスカッションペーパーの文献検索によって特定された研究のほとんどは当該文書には含まれていない。これは、最近発表されたデータは無機水銀とMeHgの毒性に関する既存の知見を裏付けるものでしかなく、現在の健康影響に基づく指標値(HBGV)を改訂する根拠とはならないと委員会が結論したためである。
 ディスカッションペーパーのレビュー以降、委員会の要請により、本声明書草案には栄養補助食品からの水銀ばく露に関するセクションが追加され、吸収・分布・代謝・排泄(ADME)に関するセクションは簡素化され、一貫性があるかどうかの確認が行われた。妊娠中に避けるべき食品に関する英国政府の助言は、結論において強調されており、無機水銀とMeHgをばく露データの中で区別できなかったという事実についても結論で言及されている。
 声明書草案(附属書A (後述))には、水銀のADMEと毒性の概要、MeHgと無機水銀のHBGVの導出、食品、飲料水、土壌、大気を含むすべての主要な発生源からのばく露評価、リスクの特性評価、及び結論が含まれている。
 委員会への質問
 委員会は、以下の質問を検討するよう求められている。
 a) 委員は、本声明書草案のレイアウトと構成に満足しているか?
 b) 委員は、リスクの特性評価と結論に同意するか?
 c) 委員会は、本声明書草案の内容に関してさらに何かコメントはあるか?
 附属書A(結論のみ)
 水銀は、自然由来及び人為的な発生源の両方から環境中に放出される金属である。水銀はMeHgとして魚類に生物蓄積し、特にメカジキやマグロのような寿命の長い捕食性の魚種に多く蓄積される。魚類由来の食品を大量に摂取する集団は、水銀へのばく露に対してより脆弱である。魚介類以外の食品にも水銀が含まれている可能性はあるが、そのほとんどは無機水銀の形態である。
 ヒトが経口摂取した場合、MeHgは無機水銀よりも広範囲かつ迅速に吸収される。MeHgは毛包に入り、胎盤、血液脳関門、血液脳脊髄液関門を通過することができるため、それぞれ毛髪、胎児、脳に蓄積する。一方、食品中の無機水銀は親油性が低いため、これらの体液関門を容易に通過せず、MeHgに比べて毒性がかなり低くなる。
 MeHgへのばく露に関連する主な有害影響は、中枢神経系及び末梢神経系に対する毒性である。MeHgは体内のさまざまな関門を通過できるため、胚の神経発達期や幼児期のばく露は特に懸念されている。したがって、妊娠中及び授乳中の女性は感受性の高い集団である。
 水銀に関して最も最近導出されたHBGVは、以前に国際連合食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)が導出した値が依然として適切かどうかを判断するために、2012年に欧州食品安全機関(EFSA)によって算出された。EFSAは、MeHgについての耐容週間摂取量(TWI)を1.3 μg/kg体重/週と算出し(JECFAのTWIは1.6 μg/kg体重/週)、無機水銀についてのTWIを4 μg/kg体重/週と算出した(JECFAのTWIと同じ)。
 ばく露データにおいて、無機水銀とMeHgを区別することはできなかった。しかし、これはリスク評価には重要ではないと見なされた。これまでの評価では、食事由来の水銀ばく露の大部分はMeHgによるものであり、さらにMeHgは無機水銀よりも毒性が強いと考えられているという事実が強調されてきたためである。食品、水、土壌、大気からの水銀への個別のばく露量及び総ばく露量は多いと評価されたにもかかわらず、すべての推定ばく露量はMeHgと無機水銀のいずれについてもEFSAが設定したTWIを下回っていた。したがって、英国の一般集団においては、妊娠可能年齢の女性及びその胎児に対するリスクは低いと考えられる。
 妊娠中に避けるべき食品に関する現在の政府の助言は維持されるべきである。母親は、脂肪分の多い魚類を週に2食分以上、マグロのステーキ(調理済みで約140 g、生で約170 g)を2枚以上食べないようにすべきである。妊娠中及び妊娠を希望する女性は、サメ、メカジキ、カジキ、生の貝類、非加熱の低温燻製(cold-smoked)または塩漬け(cured)の魚類を避けるべきである。妊娠中及び妊娠を希望する女性が政府の助言に従っている場合、食事を通したMeHgへのばく露の主な原因は魚介類であるため、ばく露評価は非常に保守的(conservative)なものとなる。
 当該資料(42ページ、英語)は、次のURLから入手可能
 https://cot.food.gov.uk/sites/default/files/2025-05/TOX-2025-22%20COT%20Statement%20on%20mercury%20in%20maternal%20health%20-%20first%20draft%20Acc%20V%20SO.pdf
(注) 当該資料は、2025年5月20日開催予定の会議(COT Meeting)用の資料であり、COTの意見を反映するものではないことから論文などへの引用は禁止する。
地域 欧州
国・地方 英国
情報源(公的機関) 英国毒性委員会(COT)
情報源(報道) 英国毒性委員会(COT)
URL https://cot.food.gov.uk/%20First%20Draft%20Statement%20on%20the%20Effects%20of%20Mercury%20on%20Maternal%20Health