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資料管理ID syu06380400301
タイトル 論文紹介:「現場からの手記:2023年11月に米国ノースカロライナ州で発生した加熱不十分な熊肉に関連するトリヒナ症集団発生疑い事例」
資料日付 2024年10月10日
分類1 -
分類2 -
概要(記事)  MMWR(2024, 73(40):906-907、doi: 10.15585/mmwr.mm7340a4)に掲載された報告「現場からの手記:2023年11月に米国ノースカロライナ州で発生した加熱不十分な熊肉に関連するトリヒナ症集団発生疑い事例(Notes from the Field: Suspected Outbreak of Trichinellosis Associated with Undercooked Bear Meat - North Carolina, November 2023)、著者CD Gowler (Epidemic Intelligence Service, CDC, 米国)ら」の概要は以下のとおり。
 トリヒナ属の線虫は複雑な生活環を持つ寄生虫で、ヒトが休眠状態の幼虫を含む加熱不十分な肉又は生肉を摂取した場合、トリヒナ症(旋毛虫症)を引き起こすことがある。同症の米国での発生はまれであるが、これは主に豚の飼育慣行の変化による結果であり、最近報告された症例のほとんどは野生の狩猟動物肉の摂取に関連している。徴候や症状としては、症例の54%に筋肉痛及び発熱、42%に顔面腫脹がみられる。トリヒナ症は重症化する可能性があるため、適時な同定が重要であり、症例の0.2%は致死となる。
 2023年11月29日、ノースカロライナ州公衆衛生局は、同州西部でトリヒナ症が疑われる症例1例の通報を受けた。当該初発症例はインフルエンザ様症状と顔面腫脹を呈していた。さらなる調査により、当該患者は、11月上旬に行われた、加熱不十分な熊肉が提供された集会との関連が示された。
・調査と結果(抜粋)
 2023年11月の集会に参加した34人を調査したところ、22人(65%)が集会の際に加熱不十分な熊肉を摂取したと報告し、このうち10人(45%)が「2014年州及び地方疫学者専門家委員会(CSTE)トリヒナ症疑い症例分類(2014 Council of State and Territorial Epidemiologists’ Trichinellosis probable case classification)」と一致する臨床兆候・症状を経験した。5人の患者がトリヒナ属の免疫グロブリンG抗体検査を受けたが、結果はすべて陰性であった。しかし、確定診断には回復期検体の追加検査が必要であり、上述検査を受けた患者のうち回復期血清検査を受けた者はいなかった。検査室での検査に利用できる熊肉はなかった。出席者のデータと患者の医療記録が収集され、公衆衛生活動の手引きとするために分析が行われた。
 疑い症例10例のうち、9例に顔面腫脹、6例に筋肉痛、4例に発熱が認められた。患者の年齢中央値は17歳(範囲:10~40歳)であった。6例のトリヒナ症の疑い症例は、18歳以下であった。潜伏期間(関連する食事から発症までの期間)の中央値は21日(範囲:7~26日)であった。
・暫定的結論と行動
 ノースカロライナ州の公衆衛生当局は、臨床的及び疫学的基準に基づきトリヒナ症疑い事例を特定した。トリヒナ感染症は依然として稀であるが、ノースカロライナ州では毎年数千頭の熊が狩猟されている。野生狩猟動物種に対する新たなトリヒナ属抗体保有率調査が必要かもしれない。2022年にはカナダで狩猟された熊の加熱不十分な熊肉に関連するトリヒナ症集団発生が生じ、6人のトリヒナ症患者が発生した。これらの患者のうち2人は野菜しか喫食しておらず、交差汚染により感染した。クロクマ類はトリヒナ属寄生虫の一般的な宿主であるため、狩猟動物肉を適切に調理・準備する方法について伝えることが重要である。狩猟動物肉を安全な内部温度(?165?(?74℃))まで加熱調理すればトリヒナ属寄生虫は死滅し、感染を防ぐことができるが、冷凍では不十分な場合がある。
 重症の場合、トリヒナ症は持続的な筋肉痛や死に至ることもある。本集団感染では、有症者の大部分に駆虫薬(アルベンダゾール)が処方されたが、使用が遅れた例もあった。何人かの患者は、治療費が法外に高かったと報告している。さらに、患者が治療を受けたかどうかにかかわらず、回復期の血清検査により感染を確認することは、回復期検体が採取できるようになる前に急性症状が治まっていることも多いため、困難である。回復した患者にとっては、検査のために(病院等に)再訪する動機がほとんどないかもしれない。トリヒナ症の診断と治療に関連する課題は、地域の保健局及び野生動物管理者にとって、安全な野生狩猟動物肉の調理について伝える必要性を思い出させるものとなる。
地域 その他
国・地方 その他
情報源(公的機関) その他
情報源(報道) MMWR(2024, 73(40):906-907)
URL https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/wr/mm7340a4.htm